- 原句は[石清水光るひとつぶ星のごと]でした。
- 原句は[やまももに行く手ふさがれ回り道]でした。
- 原句は[雷鳥の雛呼ぶこゑや霧深く]でした。
- 原句は[青鷺の鋭きこゑや田風吹く]でした。
- 原句は[夏の雲風なき海の船出かな]でした。
- 原句は[夏暁けや世界を作る見えぬ人]でした。
- 原句は[明けやすし短き夢も色なきも]でした。
- 原句は[ひまわりや右へならへの日本人]でした。
[ 夏の季語行つたり来たり夢の中 ]
[大森理恵先生の御選評]
今月は句会がございますので色々な季語が頭の中で交差して、おやすみになっていても熟睡できないのでは?(笑)
この夏の季語は特に生活の季語が多くて実に大変であることを上手く一句に納めされている。リズムも、とても良い。
昨日の時候の【半夏生】と共に植物の【半夏生】があり、作者が四六時中季語と対峙しながら日々を過ごされてるご様子が具象で著されてお見事に理解できる一句である。
この作者は最近、とみに自在である。なので、私もレッスン時がとても楽しい!!!まだ一年未満、八月で一年であるがやはり【継続は力なり】を作品で見せて下さることが何より嬉しい。【行つたり来たり】のリズムも良くて季語も効いていて何より【夢の中】まで季語が浮かんでくる様子が微笑ましい特選句である。このような若く新鮮な作品を今後もどんどん作って頂きたい名句である。
[ 泰山木天に向かひて今ひらく ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は大特選句である‼️季語の【泰山木】の原産地は北米で日本へは明治初年に渡来した。この作品には何よりも臨場感に溢れている。
【天に向かひて今ひらく】の措辞には唖然!!!! 特に【今】の語彙が素晴らしい!!! 瞬間をキャッチしたフレーズは到底、俳句を学ばれて一年に満たない方の作品とは思えない。これは何処の句会に出されても特選句は間違いない!これを特選句に採れない、選者は余程のアホーーーである。
この花は匂いもある。我が師であった角川源義の作品に【ロダンの首泰山木は花得たり】という二句一章の有名な作品があるが、ロダンの首と泰山木の花を=にしておられるが少し季語と措辞を飛ばせ過ぎなので有名ではあるが私は源義師の中でも一番とは、思えないと角川家で言った(笑)
今は角川照子さんが亡くなられて故辺見じゅんさんのご意向で杉並区の荻窪のお屋敷は公に使える詩歌の会場となっているが・・・今でもお庭には、この泰山木が高々と咲いている。私は泰山木の中では榮子さんの【天に向かひて今ひらく】泰山木の作品が大好きである。
[ 兄妹押しくらまんじゅう夏つばめ ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は季語の【夏つばめ】を一句一章の【比喩】←(ここが大切)で詠んでいる。何より中七の【おしくらまんじゅう】の例えが面白い。
俳句では①リズム②映像の復元③自己投影④挨拶⑤滑稽(ユーモア)そして【言葉は平明に想いは深く】が最も大切。今までの作者にはなかった⑤番である。俳句は上手い下手よりもこういった個性が大切である。これまでにない滑稽の入った特選句である。
榮子さんへこれまでの選評と違って少し難しい言葉を書いてますがとても大切なキーポイントです。詩歌は基礎を踏まえた上での私が↑に書き込みしました六つのことが、とても大切です。どうか身体に沁み込ませてこれからも、より一層ご健吟くださいませね。
[ 夕清水光るひとつぶ星のごと ]
[大森理恵先生の御選評]
この感性は素晴らしい!!! 特に詩的叙情の【夕清水】=【光るひとつぶ】=【星のごと】と全ての語彙がとても美しい。
私も作者と同じくこの作品は、大好きである。 然し、原句の【石清水】では叙情も何もなくなる。(笑)俳句は【一字違いで大違い】と言う!!! 【石】→【夕】への添削を再度、考えて頂きたい!たった一文字である。俳句は17文字しかない中で全てを引き算して表現しないといけない。短詩系の文藝では一番、難しいと昔から言われている。季語を活かせないといけないからだ。
普通は月に一度の句会に20名程が10句出されてそれぞれ200句の中から互選して最後に私の選句を2時間以内にしないといけないから、あまり細かい添削などはしてられない。が今回はコロナ禍と言うこともあり、2019年より個人レッスンという形を得た。この事もあり 作者との御縁ができて何より私も、その事が嬉しい。作者はいつも言うが3名のお弟子さんの中では、一番の優等生だ。なのでレッスン時にも没句が少ない。原句を少し直せば凄く良くなる作品ばかりである。この一句も私の選評を待って下さっていて良かった。私も大好きな詩的感性の大好きな一句であるから。
[ けふ咲きしくちなし今日の白さかな ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は①けふ(今日)のリフレインがとても効いていてリズムが良い。良い作品は必ずリズムが素晴らしい‼
ここ、最近の作者の作品の中でも、私は、この作品が一番好きかも??? このリフレインがなければ俳句が唯の説明句になる。【くちなしの白さかな】とラストの止めに【かな】の切れ字の詠嘆を持ってこられるとは・・・まだ一年未満なのに凄い作家である。
ともかくリフレインの効いた、この作品には「まいりました!」としか言えない!!!! 何より俳句では大切な【リズム】然も【リフレイン】←️これは同じ単語を繰り返すこと。このリフレインの効いた【くちなし】は素敵な香りが風に乗って千葉から京都まで匂ってくるような臨場感溢れた特選句。
[ 草いきれ行く手ふさがれ回り道 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の原句の季語の【やまもも】では素晴らしい措辞の【行く手ふさがれ回り道】が活かされない。なので生い茂った夏草の叢クサムラが炎天下に灼かれて、むせるような匂いと湿気を持つ【草いきれ】と添削した!
私の頭の中では昔に流行ったケミストリーの曲『ポイントオブノーリターン』(引き返せないとか戻れないとかと言う意味である)の歌詞が流れていたのだ。『♬夏草が流れてく〜〜♬』のイントロから始まる素敵な歌である。この歌詞とこの俳句が重なった。なので本当は【夏草】でも良かったのだがもっと行く手をふさがれてしまう【草いきれ】に直した。
作者は、いつも言うが優等生なので殆ど没句がない!但し、もっと欲を言えば、いつも措辞が良いから季語のお勉強はして頂きたい。今回は文章が長くなると又、Facebookに弾かれそうなのでこの辺で辞めておく(笑)この作品は季語を変えての特選句。
[ 青鷺の風の軽さや干拓地 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の【雪加】では先ずスケールの小さな句になる。下五の名詞の【干拓地】が活かされない。【リズム】感も素晴らしくなった!作者は愛鳥家の重鎮さんなので私が言わずとも「この作品は宿題にします」と言ったのみで全てを理解された。そして今回、出された作品が【青鷺の風の軽さや干拓地】
俳句はシンプルなのが一番。何故ならば俳句は引き算の文藝であるから・・・今回の【青鷺】によりとても風格が出て【映像の復元】もスッキリとした!
指導者は、その方の個性に合わせて良い箇所を伸ばしてマイナスの箇所は消してゆく。作者は、IQが高くて優等生なので指導させて頂いていてもLevel upされてゆくのが目に見えて、とても嬉しい。(これは愛弟子さん三人共に言えることであるが・・・)私は季語ではない鳥のことは、あまり良く分からないが
【雪加】=声
【鷺】=立居振舞や飛翔
が浮かんでくる。今後とも、鳥に関して、学ばなければいけない事が沢山ある。「榮子さん、これからもよろしくお願い申し上げます。」勿論、宿題にして良かった特選句である。
[ 睡蓮の目覚めし朝や風の詩 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品はパーフェクトな叙情詩である。とても美しい。リズムも素晴らしくて五・七・五が流れるようだ。イントロに始まりラストの着地の【風の詩】までが何とも言えない。
作者は、まだ一年にも満たないのに・・・この優等生は私の期待を多いに超えてくださってる!この作品から急に睡蓮が見たくなった。俳句のツボを何となく掴まれたようで今後が楽しみな作家である。とても美しい特選句
[ 雷鳥の雛呼ぶこゑや崖深く ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品を宿題にして良かった。作者のお得意な【雷鳥】←この季語に関しは二人でトコトン考慮したり話し合った。
殆どの【雷鳥】の例句に【霧】の一文字が含まれるのだ。それほど高い山や霧深い尾根に棲む鳥。けれど【霧】とのマッチングは私にはどうしても納得いかなかった。というのは【霧】は秋の大きな強い季語であるから、なので宿題にした。
良かった!!! 作者は私の思ってた通りの【崖】という語彙を使ってきてくださった。俳句は【一字違いで大違い】を示す作品だ。二人で季語に関して話し合うのはとても有意義である。歳時記の例句も学び合える!この作品は推敲されて宿題にしての風格のある特選句。
[ 青鷺の鋭きこゑや風吹きて ]
[大森理恵先生の御選評]
作者の大自然に対して、特に野鳥【鷺】に対しての深い愛と想いは、この一年で沢山学ばせて頂いた!凛とした佇ち姿の【鷺】【青鷺】は素晴らしい。
今回、添削したのは季語の【青鷺】が一段と際立つように田んぼの風ではなくて、もっと大いなる【風】を対象にした。それとリズムである!切れ字の【や】を使った場合には下五を【て】の助詞で止める方が良くなる。
こういった深い学びはまだ、一年も満たない作者には速いかもしれない!けれど、この作者はかなりIQが高くてレッスン時がとても楽しみである。ピンポン玉のようにどのような言葉にも打てば返ってくる。私は人生の先輩そして愛鳥家の重鎮として作者から学ぶことは沢山ある!!!
上五の【青鷺の鋭きこゑや】が凛として素晴らしい。それに合う下五はやはり【風吹きて】なのだ!私と大昔からお友達である俳人の気仙沼の先生が仰ってた。この作者の伸びしろがとても速いとのこと!(勿論、他のお二人もであるが)私も人間であるから体調が優れなくて凹んでる時もあるが昨夜のレッスンの2時間での作者との会話で、随分、元気になった!やはりIQの高い方との会話は何よりのお薬なのだ(笑)
いつも言うがこの作者には没句が殆どない!少し添削すると品格の在る【立て句】になる。御本人やお仲間の句友さん達にはまだまだ、【立て句】がどのような作品かはわからないと思うが…。この作品は添削して文句なしの特選句。
[ 文字摺りと呼ばれし花のみぎひだり ]
[大森理恵先生の御選評]
この作者は、いつも言ってるが優等生なのでレッスンでも没句が殆どない!挙句の【文字擂草】の季語を上手く分解されて【一句一章】にされた!
又、措辞が良いのとリズムが良い‼ 【みぎひだり】の言い方が可愛いい。このように【言葉は平明に想いは深く】の難しい表現が最近の作者には多いので実に嬉しい。この作品は六歳の子供でも季語を覚える!こう言った作品を文部!!! 俳句は、こうでなきゃと言う私の指導をキッチリと踏まえた上での作句である。
[ 山百合の花芯にそっと口づけす ]
[大森理恵先生の御選評]
作品を添削したのは俳句は具象的でないといけないから・・・具象とは物事をハッキリと具体的に現すこと!名詞を使うことである。原句では抽象的なので具象的な【花芯】とした。
俳句は【実にゐて虚に遊ぶ】なので実際に花芯に口づけはしないで想像を膨らませて頂きたい。今、丁度、室園和代さんが書き込みされたように良い香りに誘われると顔を近づけたくなる!それを作者は一句にされた。
彼女の作品は少し治すと、特選句になるのが多い。まさに優等生の証拠なのだ。作者は、来月で俳句を本格的に学ばれて 丁度一年になる。愛鳥家の重鎮さんではあるが最近では身の周りの身近な季語との対峙が多い‼️これも俳句では貴重なポイントである。添削しての特選句。
[ ひまわりや凜と佇む師の姿 ]
[大森理恵先生の御選評]
どうも、こういった作品の選評は書きにくい。句友の真理子さんが昨年の秋に作られた、【ON OFFのはつきりした師や天高し】のようにOFFの私はまるでダメ子。(句会、句座、講演指導となるとONのswitchがはいるが・・・)
私のことは、さておき、この作品は俯瞰的に見ると真夏の暑い盛りでも元気に太陽に向かい青空を仰いで佇つ向日葵の姿を見事に描かれている。この作品の一番のポイントは一語の【凛】としたにある。これが真逆の【茫】としたでは意味が全く逆になる。【凛】としたは力強いとか潔い、そして清々しいとかの意味になるから。。。が!である。作者の目には私が、そのように映っているのかもしれないが、、、
実は京都の暑さで萎んでヨレヨレになっている。まるで夏の季語の【病葉】である。【向日葵】は茎の成長を促すオーキシンが太陽光の集まらない茎の反対側で多くを集めようとして太陽に向かって咲くと聞いたことがある。いずれにせよ向日葵が太陽に向かって咲いているのは自分の成長過程によって必要であるから!これは私も若ければ、納得できるがこの暑さの中で真夏の太陽を浴びると熱中症間違いなし(笑)
これは、作者の私への応援句でもある。気合い充分、空廻りしないように頑張らねばと【志】を新たにした一句である!榮子さん元気で力強い作品をありがとうございます。
[ 暑き夜の風なき海の船出かな ]
[大森理恵先生の御選評]
原句も悪くないが天文の【雲】と【風】が喧嘩しちゃいます。なので原句を活かして添削しました。【夜】を入れることにより時間がハッキリしてより鮮明に【映像の復元】ができます。作者は来月で丁度、一年!こんな素晴らしい作品ができるとは夢にも思いませんでした。添削しての特選句。
[ 真青なる空広々と羽抜鳥 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は7月17日月曜日(祇園祭りの本番の日)第二回の句会で全員が特選句に入れて満票をとった!
【羽抜鳥】を兼題に出したところ皆さん、とても難しかったらしい。この一句には【リズム感】立体感があり【映像の復元】が見事だそして【自己投影】も・・・
作者にはお聞きしてないが今、あまり体調が良くない作者は昔のように、あちこち【鳥見】にお出かけになれない。その気持ちと羽のない空を飛べない【羽抜鳥】を重ねておられるような作風である。私も元気なら飛行機に乗り世界中を廻りたいが今はそれも無理。だから【羽抜鳥】を詠まれた作者の気持ちが痛い程、理解できる。
来月で一年目の俳人としては初心者の方であるのに、第二回目の句会ではお見事に全員からこの作品を絶賛された。榮子さん本当におめでとうございます。全てに於いてパーフェクトな特選句ですね。
[ 酢飯切る母の手さばき夢の中 ]
[大森理恵先生の御選評]
此処では【酢飯】が季語になる。実は【酢飯】は季語にはないが【鮨】が夏の季語であるから・・・
この作品を初見の折に心の中で泣いてしまった。生き別れの母のちらし鮨は抜群の味であった。なので酢飯を切っている母の様子が今でも思い浮かぶ。その様子を作者は下五の【夢の中】と美しく止めておられる。
この作品は①リズム②映像の復元、③自己投影と三つ揃った素晴らしい名句である。私も、このような母の姿が浮かんでは消えしているが俳句には出来なかった。それを、まだ来月でやっと一年という作者は、実に立派な一句に仕立てあげられたのだ。お見事‼です️と言うしか言葉が出ない。
この前の第二回の句会でも難しい兼題の【羽抜鳥】を満票で【天】の作品に仕立てあげられた。難しい季語も作者の手さばきの中では実に簡単に見事な名句になる。この一句も昭和の母であればこそである。今の若いお母さんは寿司桶で酢飯を切ったりされるのであろうか?懐かしいノスタルジックな大好きな特選句である。
[ 巣立ち鳥負けるな世間の荒波に ]
[ 夏の雲さまざまな形あそぶ鳥 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は発想が良いので語彙の順番を変えて形を整えた。夏の雲は色んな形をしている。作者は、その雲を眺めながら、遊ぶ鳥を想像しているのだ。
このような作品は一年前には出てこなかった。作者の普段の努力の賜物である。周りのことに焦点を向けて注意して見ていると色々なことに気がつく。まるで少女の頃になったような感受性の鋭い心になる。それが俳句である。
鋭い感性と秀でた発想!幼い頃には皆が持ってた素直な心が大人になると失われてゆく。作句しているとその幼い感受性の素直な心を取り戻す為にも俳句を学ばれることは素晴らしい。作者には、もっともっと、色々な季語を覚えて頂いて俳句の持つ奥深さを心から楽しんで頂きたい。この作品は語彙の順番を変えて名句となった。
[ 夏暁けや世界を作る影の人 ]
[大森理恵先生の御選評]
作者の言いたいのは表に出なくても影にいながら世界的に裏から活躍してされている人のほうが多いということが述べたい!
この季語の【夏暁けや】が付かず離れてずの季語で、とても効いている。作者も私も最近の政治にとても不満がある。なので表には出なくても影から世界情勢を見守り、支えてくれる人がおられることが夢である。
昔の【白州次郎】のような方が日本にいれば国民の生活も全て、変わっていたであろう!【夏暁け】の季語によりこれからの日本の夜明けが見えるような希望が見てゑ来る。これは作者の心からの願望の作品であろう。
[冷さうめん野の花添えて父の膳 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品も作者の優しさが満載の一句である。季語の【さうめん】に対してお父様のお膳には野菊を添えるとの句意・・・ではあるが! この前も書き込みしたがこの作者は身近な周りの小さな出来事に、とても感謝されていて、そのワンシーンを俳句にされている。
日常の一コマ一コマを取り上げて俳句にすることは実は簡単なようで実は非常に難しい。ともすると日記になるから。その日記とのギリギリの境界戦での作句!これを俳句用語で【自己投影】と言う。
【俳句】=【生き方】である。表現者にとって【生き方】こそが全てであり、この事を大切にしないと作句に出てくる。来月で満一年目の作者は、既に、そのことを習得されたようだ。
上記の作品も大好きなお父様の【冷やさうめん】のお膳には野の花を添えているというさりげない、ことであるがこれを作品にするには、なかなか難しい。作者らしい、とても優しくて細やかな特選句である。
[ 明けやすし短き夢も色の中 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の下五『色なきも』では切れが悪いので『色の中』と添削した。『明け易し』=『短夜』で夏の季語である。『明け易し』と『短き夢』とは語彙が合っている。なのでラストの下五を【色の中】とした。添削したことで切れも良くなり意味もハッキリした一句になった。
添削できるのは原句が良いからである。この作者には余り没句がない。殆どの作品は直せば良くなるから・・・この作品も添削しての特選句である。
[ 星のごと小さき花のひいふうみ ]
[大森理恵先生の御選評]
ここでの季語は【花】である。【花】=【桜】=【春】の季語であるが、それを忘れてしまうような可愛いい作品。
上五の【星のごと】から中七の【小さき花の】そして下五の止めの【ひーふーみー】までのリズムが、非常に素晴らしい。また、小さき花を星のように感じた作者の感性も素敵。日々、周りの事柄を感謝の気持ちを持ちながらじっくりと見ている作者の【志】には見倣うべきことが沢山ある。
此処での【花】を【桜】とは、とらないで私は単に、【夏のお野菜の花】と捉えている。そのような地味な花を見ていても鋭い感性があれば俳句にはなる。
作者は、ゆっくりと【生き方】=【俳句】という私の【セオリー】を理解されつつある。そのことが非常に嬉しい。地味ではあるが小さな発見を見逃してない特選句である。
[ 晩夏かな沼のほとりの船着き場 ]
[大森理恵先生の御選評]
さすがは【鳥見】の重鎮さん!一句の中に【鳥】の語彙がなくてもそして画像を見なくても中七〜下五の措辞で【鳥】の様子が想像できる。
リズム、映像の復元がお見事!!!また、下五の【船着き場】という語彙が言い得て妙である。季語の【晩夏かな】が梅雨も明けて、いよいよ本格的な蝉の啼き声と共に、暑さが増してきた様子が見事に描写できてる!季語の良く効いた特選句である。
[ 初恋の味いつぱいにかき氷 ]
[大森理恵先生の御選評]
お世話になりました森村誠一先生が肺炎の為に今日、お亡くなりになられました。告別式は御家族のみですが色々と在り…スミマセン
この作品は凄く可愛いい。【かき氷】の季語でこのような例句はあまり見ない。カルピスが初恋の味というCMがあったが…。我々、昭和の世代は【かき氷】の旗を建てた、かき氷屋さんが、あちこちに在り又、シロップが舌を染めて、その舌のことなどを、お友達と笑い合っていて、とても懐かしい。
上五から中七の措辞の【初恋の味いつばいに】迄がとても良い!昭和感満載で、このような作風は大好きである。
俳句の三代要素の①リズム②映像の復元③自己投影と全てに於いて揃っている。作者は、いつも立て句がお得意であるがこう言った添え句も素晴らしい感性である。この作品はレッスンの折に文句なしに特選句にした名句である。
[ 草いきれ右へならへの日本人 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の季語の【ひまわり】では太陽に向かい、ひたすら元気で健気な前向きなイメージがあり過ぎて措辞の作者の冷めた深い想いとは合わない。
作者は今の日本の政治を皮肉って作句された。なので、こういった場合の季語は極暑の中、生い茂った草ムラが炎天下に灼かれてむせるような匂いと湿気とを発する【草いきれ】という、あまり一般には好まれないような季語を使わないと【二句一章】が活かされてこない。
最近の政治家は特に秀でた方がおられなくて与党、野党問わず、選挙のたびに誰に投票して良いか、迷ってしまう。何かと言えば増税で庶民は毎日の平凡で安寧な暮らしにもヒヤヒヤである。かと言って、この今の政治を刷新する素晴らしい革命家も期待できない。そのことを作者は皮肉って一句に仕立てあげられているのだ。今後、日本は世界的に取り残されて後期高齢者ばかりになり、経済的にも何もかも格差社会が上昇するばかり。これからの日本の将来を真剣に憂いた作者らしい一句である。
[ 夏うぐいす恋人求め谷渡り ]
[ 青芒いつか来た道まわり道 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は何も添削しておりません。すすき→芒に直したのみです。この一句の中で【道】の語彙のリフレインが実に、お見事である。これによりリズムが出て覚えられる一句に仕上がった。まるで先人の俳人の先生方の名句に紛れ込ませても見劣りはしない!!!
この一年に満たない中でどれほど、この作者はLevel UPをされてきたのであろうか?そして、どこまで進んで行かれるのであろうか?これからの私の人生に於いて【夢】と【希望】を与えて下さるお弟子さん達は何よりの【宝】であり【誇り】に思う。季語の【青芒】が何とも言えず効いていて実にお見事な特選句である。
[ 白南風や過ぎし日遠く見ゆるなり ]
[大森理恵先生の御選評]
今回、添削した【白南風】シロハエは梅雨の後に吹く南風のことを言う。梅雨の前は【黒南風】クロハエ。
原句の青田風では中七〜下五にかけての措辞が、洗練されて来なくて実景としてピンと来ないから素敵な措辞に合わせて【白南風や過ぎし日遠く見ゆるなり】これで全体がスッキリとした名句になった。又、切れ字の【や】を使うことで、俳句に於いての一番大切な【間】マが入る!!!作者は既に俳句を学ばれて一年になるし他の句友の方々とLevelも同じなので、少し難しい【間】マを覚えて頂きたかった。この【間】マについては直ぐではなくてもユルユルと身に付いてゆかれれば良いと願っている。私は、その人、その人の個性や人格、IQなどに合わせた指導をしている。人は皆、それぞれが違うからだ。作者はIQの高い方なので理解が速いからワンステップのところをツーステプ速く指導させて頂いている。
この添削句によって【景】が凄く大きくなり【映像の復元】そして濁音も少なくなりリズムの良い一句になった。今はまだ、【白南風】の季語の全てが良く理解出来なくてもレッスンを重ねる毎に、わかってくださいますことを心より願う!!