- 原句は[明けやすし始発電車のベルの音]でした。
- 原句は[蝉時雨まだまだ啼けよ虚空まで]でした。
- 原句は[炎暑かな夢のまた夢アラスカ旅行]でした。
- 原句は[喜びも哀しみもあり酷暑かな]でした。
- 原句は[師の安否届きしメール夏深し]でした。
- 原句は[土のにほひ草のにほひや原爆忌]でした。
- 原句は[折鶴に祈り託して原爆忌]でした。
- 原句は[原爆忌空に雲あり樹々に影]でした。
- 原句は[一滴の水の重さよ原爆忌]でした。
- 原句は[星涼し絵本のとびらそつと開け]でした。
- 原句は[朱夏に咲く高校球児こゑ高し]でした。
- 原句は[北岳も穂高もありて雲の峰]でした。
- 原句は[朝涼し沼のほとりの渡し船]でした。
[ 夕焼の空の向かふに夢の国 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は一切添削なし!季語は【夕焼け】その向こうに広がるのは【夢の国】と何とも言えない『希望』がある。今年の暑さが異常なだけに、このように夕立が、ざーと降ったあとにサッと涼しくなって【夢の国】まで行けたらいいなぁ〜〜と想像を掻き立てられる素敵な一句である!中七の『空の向かふ』がまるで異次元の世界を思わずようにとてと効いている!『夢』と『希望』に溢れたファンタスティックな特選句である。
[ 初恋の想ひ出描く花火かな ]
[大森理恵先生の御選評]
この作者にしては珍しい情熱的な恋の作品である。ここでの季語は【花火】【花火】をご覧になり【初恋】を、想い出すなんて凄くロマンティック!羨ましい限りである。
この作品が『実』であろうともが『虚』であろうが、そんな小さな事はどうでも良い。良い作品は何処から見ても素敵なのだ。【初恋】のh音と【花火】のh音により音律の恩寵も優れている。【リズム】【映像の復元】【自己投影】と三代要素の揃った素敵な一句に仕上がった。句歴一年足らずとは思えない【花火】という難しい季語に挑戦された特選句である。
[ ひまわりや始発電車のベルの音 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句は中七〜下五迄の語彙がせっかく良いのに明け易し+始発電車のベルの音で説明句になってしまう!なので中七〜下五にの音を活かす為に、一番、映像の復元のハッキリする夏の代表的な季語の【ひまわり】にした。添削は1秒もかかっていないからこの作品をレッスンにて添削したこともすっかり、忘却の彼方。やはり原句が良いと添削も直ぐに出来る。
措辞の『始発電車のベルの音』が実に素晴らしい措辞である‼️作者の実力に合わせての添削なので凄く、凄く良い作品になった。五感が全てにおいて溢れている!!! 音、映像、匂い、風etc. 佳子さんが鑑賞文で書いてくださっているが季語を変えたことで【勢い】と【彩り】が見事に素地とマッチングした!これは勿論、添削したが特選句である。
[ 猛暑かな真つ黒黒の小鳥くん ]
[大森理恵先生の御選評]
挙句は初見で特選句に頂いた。
この作品の何処が良いかと言えば、中七〜下五迄の『真つ黒黒の小鳥くん』と言う可愛い作者のオリジナルの呼び掛けである。
こういった作風を好まない頭の固い選者も多くいるが私は普段からお弟子さん達に冒険や型に入って型から出ることを指導している!そして、この作品には俳句のリズムに於いての音律のk音が5つも入っている。これは入れようとして入るモノではなくてリズム♪の良い作品には自然に入るものだ。
読者の皆さまはご存知の通り、作者は鳥見の重鎮さんである。なので鳥さんへの愛は半端ない。この作品は、この酷暑続きの地球を憂いて小鳥さんたちも行く場所もなく、陽に灼けて、真っ黒になったね!という作者の嘆きの心のうちが全て込められている。
リズム、映像の復元、自己投影の三代要素の含まれた特選句である。
[ 雲ひとつ浮かびて今日の暑さかな ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品である!私が、過日のレッスンで大特選にとったのは‼️‼️こう言った作品を【感覚句】【感性句】と言う。
措辞の上五から中七の『雲ひとつ浮かびて今日の』そして季語である。下五の止め『暑さかな』までが先ずリズムが素晴らしい。特選句は必ず、リズムが良いのだ!但し、この作品を大特選にとれる選者はそうは居ない。このように何も言わずして答えが掛け算になっている。
【言葉は平明に想いは深く】まさに、この私の言葉がピタリと当たっている‼このような名句は、実にシンプルであまり難しい語彙がないので選者が余程の句歴のキャリアがあるか、感覚的に秀でた才能が無ければ、とれない。作者御本人も句友も読者も、何故、この作品が最高に素晴らしいかが理解するのは大変、難しいと思う。それほど、選句は俳句の勉強において貴重なのだ。
作者のキャプションを読んでも、これが何故、大特選なのか理解されていないように思う。措辞の『雲ひとつ浮かびて』と言うシンプルな措辞が何も言わずしてこれからの猛暑を物語っているのだ‼ まるで、午後からの暑さを予告しているように・・・
作者には始めての感性句であり、発想の素晴らしい名句‼ 勿論、大特選句である。
[ 熊蝉やまだまだ啼けよ虚空まで ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の【蝉時雨】は啼き続けている現在進行形。中七が【まだまだ啼けよ】という呼び掛けがあるので原句では蝉の啼き声のシツコサが出過ぎるので添削した。此処は一旦、切れ字の【や】を入れて二句一章にして、季語を【熊蝉】に変えた。
この作品の素晴らしいとこは中七の呼び掛けの『まだまだ啼けよ』の呼び掛けと下五の止めの『虚空まで』に在る‼ ここの流れが実に素晴らしい。リズムと言い、どこまでも続く蝉の声を【虚空】という深い語彙を使われたのも大成功である‼
作者は、今月で丁度、本格的に俳句を学ばれて一年目に突入されるがかなり深いところ迄、侵入されて学ばれている。作品を見れば、その作者の真意がわかる!!! 御本人が分からずとも俳句を見ると全て、理解出来るのが自分でも不思議。
この作家は着実に歩みを上昇されてゆくであろう。そして、ご自分では自選出来なかった作品も、何年か後には、ため息を着きながら自画自賛されるご様子が私にはわかる! それ程、俳句への想いが深い!!! この作品も添削しての特選句。
[ 夏の雲平和を描く世界地図 ]
[大森理恵先生の御選評]
日本の夏の雲は原爆の日、終戦日(敗戦日)と平和との深い御縁がある。二度と遭ってはならない! 国と国との戦い! 悲惨な戦争!
夏の雲の中には峰雲、入道雲と、色々な雲があり幼い頃はソフトクリームみたいと思いながら眺めていた。この作品は何も言ってないが【夏の雲】という季語に全てを託している。そして措辞の【平和を描く世界地図】がお見事に効いている。
日本の八月は平和とは結びつく大切な一か月である。我々は、いついつまでもこの【夏の雲】を安寧に眺められるように原爆を落とされた唯一の国であることを風化させないように語り継がねばならない義務がある。その点に於いても優れた一句である。勿論、映像の復元のお見事な特選句。
[ 炎暑かな夢のまた夢アラスカへ ]
[大森理恵先生の御選評]
この作者を見た時、思わず爆笑してしまった。こう、暑いとやはり想いはアラスカへ飛んでしまう!原句の旅行まで言わなくても下五は【アラスカへ】と止めただけで良い。
この作品を見て、たった、ひと時でも涼しい気持ちになり爽やかになった。誰もが今年の暑さには参ってしまい、屋内での熱中症も多く出ている。その堪らない炎暑の中を一句にされた作者には大拍手である。こう暑いと行けるものならペンギンになってアラスカに行きたい。
そしてこの作品は添削後のリズムも凄く良い!いつも言ってるが没句がないのだ。少し直すと良くなるのが作者の特筆すべき点。彼女は優等生でありIQが高いからと、嬉しい限りである。この作品もみんなの願いを込めた紛れもない特選句。
[ 喜びも哀しみもあり髪洗ふ ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の『酷暑かな』では、上五〜中七の措辞『喜びも哀しみもあり』では、ピンと来ない。こう言う時には夏の生活の季語を使うのが必須。自己投影を出すなら【髪洗ふ】なのでこれを使った。この季語を使うことで措辞も活きてくるしリズムも整う。
【喜びも哀しみもあり髪洗ふ】人生は色々なことがある。その中には嬉しいことも沢山あるが人には言えない哀しみも沢山ある。それでも明日は来るのだ。【髪洗ふ】の季語で今迄のことは全てを流し、リセットして明日に向かう『希望』のある一句になる。
いつも言うがこの作者は、添削しやすい。季語を変えるか、助詞を少し変えただけで、凄く良くなる。それは原句が良いからである。この作品も季語を夏の生活の季語に変えただけで、素晴らしい一句になった。
[ 師の安否届きしメール朝の虹 ]
[大森理恵先生の御選評]
この一句は挨拶句である。原句の季語『夏深し』では結果が良いのか、悪いのかがわからない。なので『朝の虹』と添削した。この季語により結果オーライになる。俳句は季語が命である。季語と措辞が同じくらいの比重でないと良い作品とは言えない。
作者は日常の色々な出来事を全て、俳句に詠まれる。これは、俳人にとってとても大切な事!!! 既に一年を超えた作者なので基礎の文語や助詞は殆ど直すとこがないくらいに出来ている。あとは色々な季語を覚えて使い込むことが大切である。ウカウカと熱も出していられない(笑)頑張らなくては!と喝を入れて貰った一句である。
[ 蝉時雨長崎の鐘閑かなり ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は8月9日の『長崎忌』を詠まれた作品である。クリスチャンの多い、長崎、そこに原爆を落とされた。例えなにがあろうとも莫大な殺人器の原爆は許すことはならない!!!
多くの長崎の教会の鐘が閑かに音もしない。唯一、蝉時雨の啼き声のみが聞こえる。これは余計に悲惨な状況を【蝉時雨】の季語で尚更、上手く捉えている一句である。中七に難しい固有名詞の『長崎』を持ってこられたのも大きな成長が見られる。
この作者が、たった一年のみの俳人とは決して思えない上質な作品である。【映像の復元】そして【リズム】がお見事だ。何も言わずして胸に迫ってくるモノがある。特に中七から下五にかけての『長崎の鐘閑かなり』措辞は、かなりの上質な語彙である。文句なしの原爆忌の特選句。
[ 土のにほひ草のにほひや炎帝よ ]
[大森理恵先生の御選評]
作者は凄く真面目な、優等生のお弟子さんである。私が先週に三人の愛弟子さんに宿題として【原爆忌】を兼題にした。すると彼女は10句共、【原爆忌】で作られてきた(笑)
措辞が全て良いので季語を添削した!挙句は季語が【原爆忌】では一句として少し離れ過ぎてしまう。なので、【炎帝】という季語を使った。今回は措辞の『土のにほひ』『草のにほひ』のリフレインが素晴らしい!リフレインが効いているとリズム♪が、とても良くなる。
先日の佳子さんの【朱夏】と同じく【夏盛ん】の季語のことを【炎帝】と言う。なので榮子さんにはこの【炎帝】を使い呼び掛けの【よ】で止めた。映像の復元、リズムが良くてリフレインの素晴らしく良く効いた特選句に早変わりした作品である。
[ 折鶴に祈り託して終戦日 ]
[大森理恵先生の御選評]
関西は台風の目の中にいますが今日8月15日は【終戦忌】=(敗戦忌)である。台風の為に、そのことが、なかなかニュースにはならない!
措辞の『折鶴に祈り託して』は素晴らしい。今、ロシアとウクライナが戦禍の真っ最中にある。この作品は、その戦争に対しても同じように詠まれてるような気もする。【原爆忌】でも悪くはないのですがもっとピッタリの季語の【終戦忌】を使った。
【原爆忌】や【終戦忌】【敗戦忌】は私の得意とする季語である。この季語に関しては最も勉強して幼い頃からFB Iへの夢を持った。(面接で見事に落ちたが…)幼い頃から、ずっと、この季語に付いては身に沁みて何度も何度も考えさせられてきた。
日々の平凡な日常生活がどれほど、幸せであるか!!!!! 天災の台風は仕方ないとしても人災の【原爆】や【戦争】は二度と遭ってはならない。この作品は上五から中七の語彙のかけて作者の平和の祈りに感銘させられた!添削しての特選句である。
[ ハンモック空に雲あり樹々に影 ]
[大森理恵先生の御選評]
(先日も話しましたが作者は超真面目な優等生ですから過日の私の宿題(兼題)の【原爆忌】を全て、レッスンの10句に季語を【原爆忌】にて作られた来られた!(爆笑)ところが措辞が全て良い‼️季語を【原爆忌】から変えるだけで特選句に値いする作品ばかりであった。
今回は中七〜下五迄の大自然の様子を活かして季語を【ハンモック】に変えた!これにより【ハンモック】って一旦、切れて、いつも言う大切な【間マ】ができる! 又、【ハンモック】から見た周りの風景が鮮やかに描かれる。
作者がキャプションで書いておられるように句の雰囲気までも多いに違ってくる。それだけ、俳句によって季語の占める割合は強くと言うことを学んでくださいましたら大変嬉しい。この作品は季語を変えての特選句。
[ 一滴の水の重さよ犬掻きす ]
[大森理恵先生の御選評]
昨夜のレッスンでは作者と『原爆忌』『終戦日』『敗戦忌』に付いて、徹底的に話し合った。この三つの季語は、似て非なるとこがあり、とても難しい。作者はIQが高いので私の言う事を直ぐに理解してくださった。
この三つの季語は並の俳人では措辞との関連性がわからない。イヤ、現存する俳人の中でも理解出来ている方はおられないかもしれない。私は幼い頃から、この三つの季語に付いては徹底的に学んできた。というのも戦後、まもなく生まれているので戦争は遠い話しではなかった。
この『一滴の水の重さよ』の措辞は正直言って、『原爆忌』『終戦日』『敗戦忌』どれにも付く。それほど、この中七〜下五までの措辞は具象的でかなり深くて重い!が、この場合、これらの三つの季語が酷く重いので措辞は軽くしないとバランス的に合わないのだ。
此処は、まだ作者も一年生だし普通の俳人でも理解出来ない難解な事柄である。私が愛弟子の三人に無茶振りをしてしまった。後悔しきり。【忌日】の俳句は私でさえ10年経っても作句は禁止されていた。今回はやはり【二句一章】にしないで【一句一章】の季語の【犬掻き】を使った。
これにより季語を深く学んで頂きたいから!この【二句一章】と【一句一章】の違いを理解されたら私の言ってることもわかる筈なのだが、いかんせん、この言葉さえも現存の俳人には難解である。ともかく、作者は自分が納得するまで、追求されてくださるしまた、納得出来なければコメントの端々から私は、その作者の心が汲み取れる。
今回は【犬掻き】という【一句一章】の季語を使って、【二句一章】の難解さを理解してもらうように添削したが果たして、この内容はまだまだ一年生の三人の愛弟子さんには難しい内容であったと反省しきり。けれどいつも言うようにこの作者は没句が殆どない。この作品も添削して特選句になった。
[ 晩夏かな樹々のささやき風の詩 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は季語と言い中七〜下五の措辞と言い全てパーフェクト。まだまだ、今年は異常気象で爽やかな風が吹いてはこないので【実にゐて虚に遊ぶ】の素晴らしい作品である。リズムと色紙に書いた時の流れが美しい!!! 作者は丁度、本格的に学ばれてから一年が済んだとこだがとても覚えが早い。
ともかく季語の『晩夏かな』も効いていて措辞もそれに合った美しい語彙である。早く『晩夏』ではなくて『初秋』の季語を詠みたいものだ。あっと言う間に季節は過ぎてゆく。猛暑、極暑で終わる『秋』になるのは真っ平である。いつになれば爽やかな天を仰ぐことができて涼しい風が吹くのであろうか??? この作品は一年で随分、成長された結果の季語の効いた特選句。
[ あの雲に希望を見つめ晩夏光 ]
[大森理恵先生の御選評]
作者は俳句を、学ばれて丁度一年!俳句の【核】や【基礎】をしっかりと掴まれた。
この作品の良い箇所は上五の『あの雲』そして中七からの『希望を見つめ』あとは下五の季語の『晩夏光』が効いている。最近では住みにくい気候や住みにくい日本の経済!それに対して『雲に希望を見つける』というのはなかなか、出て来ない思考である。
この作品は添削せずにレッスンでは特選句にした。何より前向きな一句が素晴らしい。
[ 星涼し絵本の扉そつと開け ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品も美しい季語とポエムな措辞とが抜群の組み合わせでチャームな一句である!
【涼し】晩夏の季語であるが昨日も選評に書いたように【名詞】+【涼し】で素敵な叙情のある季語になる。原句は措辞が全て平仮名であったので漢字に直した。
漢字と平仮名の組み合わせや流れは色紙に書いた時を浮かべてみると良い。俳句は色紙に書いてこそ完成される。それほど、字の流れも繊細な日本の文藝である。今日も猛暑の一日のようだがこの一句で何だか爽やかな風を感じた。
[ 月涼し小さき我の影法師 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品も先日のレッスンで特選句にいただきました。先ず【リズム】が良い。そして【映像の復元】【自己投影】と俳句の三代要素がキッチリと出来ている。この一年で、此処まで完成された作品は、なかなか出来ない。
まず季語の【月涼し】であるが【涼し】夏の季語。作者には指導させて頂いたが【月涼し】【星涼し】【風涼し】【山涼し】【川涼し】と名詞に【涼し】を付けると全て夏の季語になるのだ。まだただ残業厳しい折、【涼し】と言う体感はないかもしれないが…暦の上では、すっかり【秋】今、この季語を使わないと今年は【夏】の素敵な季語が使えないまま終わりそう!
措辞の【小さき我の影法師】も言い得て妙。季語とのバランスがバッチリである。私はこれまで三万人以上の生徒さんを指導して来たがこの一年で、此処まで進歩されたお弟子さんも、愛弟子三人と共に速度が速い!
彼女はいつも言うように優れたIQの持ち主でうちのお弟子さんの中でも優等生なのだ。️皆さんが、そうであるが三人の心が綺麗なのが私の誇りでもあるし、、そうでないと作品に魅力がなくなる。藝術作品はその方の全てが出るからである‼ 然も喜怒哀楽が、とてもハッキリされている。いわゆる、好き嫌いが漠然としてなくてご自分の中で許せない事は許せない!男性ならば裁判官のような高等な職業に向いている方なのだ。然しIQが高いのでレッスンでは指導しやすくて頭も心も柔らかい。
この作品はファンタジックで夢のある現実を超えた非現実の素敵な一句である。
[ 朝涼し厨はじめの煮物かな ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は先日のレッスンで特選句に頂いた一句! 季語の【朝涼し】が抜群に効いている。中七からの措辞、【厨はじめの煮物かな】この表現方法も作者らしく上手い。簡単に『煮物』というけどこの語彙は主婦でしかなかなか出て来ない。この作品は【リズム】【映像の復元】【自己投影】と三拍子揃った一句である。
作者は俳人の中でも一番難しい季語の【原爆忌】に関して、かなりお勉強されたので今後は、他の季語の主意は簡単に捕まえてくださるであろう。やはり優等生は違う。思った通りの進み方である。贔屓はしていないつもりだが作者が少しでも早く季語の核心を掴んでくださることが嬉しい。
これが【夕涼し】では措辞との組み合わせが✖であった!!! 因みに【涼し】が季語である。【月涼し】【星涼し】【風涼し】【山涼し】【朝涼し】【夕涼し】とかにしてに使う。綺麗な夏の季語。遜色のない素敵な特選句。
[ 朱夏に咲く高校球児こゑ高し ]
[大森理恵先生の御選評]
いよいよ今日は、仙台育英 VS 慶應の決勝戦‼ 高校野球の球児は真剣で彼等の悔しさの涙には貰い泣きしてしまう! プレイも一球毎に魂が込められていて見ていても爽やかである。
原句の『朱夏に咲く』では使い方が、かなり短歌的であるから『夏旺ん』と俳句らしく男性的に切った!
夏旺ん=朱夏、炎帝の意味ではあるが、これはTPOに合わせて使わないと間違えてしまう。まあ、この使い方も慣れでもあるが、、、 特に今回の措辞『高校野球のこゑ高し』と男性的な中七〜下五では、やはり『夏旺ん』である。とはいえ、いつも言うが添削して良くなる作品は原句が良いからである。
昨日も熱で一睡も眠れなかったが意外と元気である。気力のみは人の10倍だ!今日のエンジェルスの試合と高校野球の決勝を観届けないと、落ち着かない。実は私は幼い頃からインドアのことが苦手で多分、今、京都は外の気温が38度なので出るとフラフラするから、かなり我慢している。その我慢からストレスの為に眠れないのかも??? 添削して特選句になった一句。
[ 北岳も穂高も在りて晩夏光 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句は勿論、素人さんなら悪くない秀逸作品である。が、作者は一年生なのにも関わらず、とてもお勉強家である。なので私は基本である当たり前の山々の連峰には季語の『雲の嶺』は当たり前であるし措辞との説明句になる。
これを俳句では付き過ぎという。但し、何度も言うがこう言う作品は新聞やNHK俳句であれば特選句にとってもらえる。然し作者は全てに於いて高みを目指す作家!なので私は今回は敢えて季語を【晩夏光】と夏の終わりの光を持ってきてイメージの拡がりを見せた。これにより句柄が拡がる。まだまだ作者には難しいかなぁと思いつつ、ここは勝負を賭けた。
今はまだ理解出来なくても数年後に、この作品を見直して添削前と添削後の作品の違いを、わかってもらえれば良い。本物が大好きな彼女なので基礎はシッカリと学ばれた方が良いと判断した。
(それぞれのお弟子さんへの指導は同じにしていないので難しいところではあるが…)昨日も具象が何より大切だと誰かの選評に書いたように俳句は五・七・五しかないので、そこへイメージの同じモノを持ってくるのは勿体ない。今回は【晩夏光】と言う 哀愁のある季語を使い作品に深みを出した。添削できるのはやはり原句が良いからである。
[ 朱夏の扉を開けてまばゆき日の出かな ]
[大森理恵先生の御選評]
【夏盛ん】のことを【朱夏】とか【炎帝】と言う!図々しい今年の夏のことを精一杯作者の目線で詠んでおられるが、やはり彼女の上品さが滲み出ている。
上五の『朱夏の扉を開けて』から中七の『まばゆき日の出かな』まで今年の極暑を物語っている。中でも此処での【朱夏】は抜群の威力を占めている‼️リズムも良い。
作者は、ここ数日でグーンとLevel upされた。レッスンの初見で特選句にした一句である。
[ 月涼し遠回りする散歩道 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は前回のレッスンの折に、10句の中でも一番にとった特選句である。
季語の『月涼し』が抜群に効いている。この作品を見て、『リズム』『映像の復元』『自己投影』の三代要素が全て含まれていて、とても嬉しかった‼
措辞の『遠回りする散歩道』は『夏の月』がとっても綺麗だから・・・大昔の昭和の歌謡曲に菅原都々子さんの『♫月がとっても青いから遠廻りして帰ろ♫』を思い出した。作者とレッスン時に「昭和初期の歌謡曲♪懐かしいですね」などと楽しく話し合った。
何はともあれこれを『夏の月』と言わないで『涼し』を使っての大成功!!! 『夏の月』であればまだまだ暦の上では秋であっても、こちらは蒸し暑くて夜の散歩も出来ない。俳句は【実にゐて虚に遊ぶ】文藝なので体験してなくても頭で考えての机上の空論でも許される。
自分の位置と月までの遠距離感の出ている優れた特選句。
[ 星涼しアンデルセンに思い馳せ ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品を初見の折には又してもガーンと打ちのめされた!私が一か手取り足取り指導してきた一年目の愛弟子さんなのだが、既に、名詞+【涼し】の使い方を完璧に把握されている。特に季語の【星涼し】+【アンデルセンに思い馳せ】の措辞は他に類がない!この前の作品の【月涼し遠回りして散歩道】の特選句を凌いでいるからだ‼
これは大特選の作品である。
[ 朝涼や沼のほとりの渡し船 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の【朝涼し沼のほとりの渡し舟】も決して悪くはない!が、此処は二句一章として【や】を入れて一度切った方がリズムと流れが良くなるので添削した。
【朝涼や沼のほとりの渡し舟】とするとより一層、朝の沼の景色が、くっきりと鮮明に表現できる。この切れ字の【や】の使い方は難しいが全ては慣れである。学んでいくうちに日々の中でリズムは身体に染み付いてゆく。
一年前に比べると随分、リズム、映像の復元、自己投影と理解されて来られて将来、有望な俳句作家さんである。彼女が仰ってるように今は全てを「俳句にオールインしています。」のとおりレッスン時には駄句が殆どない。
今回、コロナ禍により個人レッスンという形の指導に踏み切ったがこれは先ず、成功と言える。一から全て懇切丁寧に指導出来るから・・・それも相手があってのこと。愛弟子さん達とは『あ・うん』の呼吸でお互いに上の次元へのステップが速い。季語の効いた添削しての特選句。