- 原句は[原爆忌溢れる水の平和かな]でした。
- 原句は[地図拡げ思いを馳せし夏の山]でした。
- 原句は[梅干しのひとつひとつに母のこゑ]でした。
- 原句は[星涼し地球の呼吸胸いつぱい]でした。
- 原句は[月涼し旅路を語る友のゐて]でした。
- 原句は[点となり線ともなりて渡り鳥]でした。
- 原句は[花韮や真白に染めてバージンロード]でした。
[ 向日葵を見つめる先や母の居て ]
[ 月涼しあふれる水の平和かな ]
[大森理恵先生の御選評]
もう、この作品は一か月近く前のレッスンで、私が始めて作者に『名詞』+『涼し』=夏の季語 ですよって、ご指導させて頂きました作品!
あれから随分と作者は成長され愛弟子さんの中でも『涼し』の使い方に於いては一番の達人になられた。この頃は、まだまだ【一句一章】や【二句一章】の意味もままならぬ頃であったと思う。
私が無理矢理に【原爆忌】の季語を無茶ぶりしたがやはり三人の方々には忌日の季語はまだまだ早いと反省しきりの事を良く覚えている。が、この頃から一ヶ月の作者のご上達ぶりには目を見張るモノがある。
『好きこそ物の上手なれ』という言葉があるように彼女の一生懸命さや向学心には頭が下がる。一年前の八月の始めてのレッスンの頃は私が舌を噛みそうな位にお上品なマダムであった榮子さんを最近ではレッスンの途中で私流の会話に染めた事が良いのか、悪いのか悩むが、、、
ともかく作者が、この一年で普通の方々の10年に値いする努力の上での実力をつけられた事には大変嬉しく、指導者冥利に尽きる!
然し、沢山、沢山、秀逸句や特選句があるのに何故、この句を今朝、投稿されたのであろう?あゝ『月』が秋の季語だからか?ここにも作者の【一から学ぶ】と言う謙虚さを見たようだ。【俳句】=【生き方】である。作者のチャームなご性格が俳句にピッタリと相性が合っているのであろう。
中七から下五の『溢れる水の平和かな』この措辞も素敵だが、【月】と【水】により、世界感の大きく拡がった作品である。
[ 世界地図拡げて見遣る夏の山 ]
[大森理恵先生の御選評]
いよいよ九月!暦の上では【仲秋】ですね。けれど『地球温暖化』の為にまだまだ京都は37度と暑い朝です。
この作品を初見の折に先ず私は、いつも、この大自然を壊して鳥や植物を無くしているのは人間に他ならないという残念な気持ちになりました。作者も地図を拡げて大自然の山々に思いを馳せているという気持ち!その原句を大切にして、よりダイナミックに地球温暖化を世界規模に致しました。それと『見遣る』というのは見守ると言う意味です。
日本という国は今、大昔から継承されている文化を失いつつあります。文化だけでなく、日本人しか出来なかった技術迄、外国に売ってしまいました。残された自然、残された山々、どれだけの美しい緑が残されたのでしようか?
けれど政府は現在、世の中がジャニーズ問題で混乱の最中、ドサクサ紛れに原発による海洋へ垂れ流し・・・・何故、チェルノブイリみたく埋めたて地を作ってという発想にはならなかったのでしょうか?困っているのは漁師を生業とされている方々!や被災地の方々。弱い者イジメも良い加減にしてほしいと思います。
そういった全ての将来の日本を憂いながら社会問題を含めた原句を添削しました。添削しましたがこれは大特選句です。
[ 月涼し買い物帰りの並木道 ]
[ 梅干しのひとつひとつに母の指 ]
[大森理恵先生の御選評]
実は、原句は確かに良い。が、作者の昔の特選句に『母のこえ』の語彙を使われて素晴らしい作品が一句か二句あった。それを超える作品であれば、原句のままにして添削はしていないが・・・
今回の季語の『梅干す』はやはり、愛する御母堂様が一つずつ、一つずつの梅に丹念に愛を込めて、干されたご様子を想い、『指』と添削させて頂いた。これを【一句一章】と言い、季語に対して深く詠むことを言う。
句歴一年生の作者は愛弟子さんの中でも優等生なので、あまり没句がない。特に、この作品は中七の『ひとつひとつ』のリフレインの語彙がリズムもよくて流れが良い。地味では、あるが愛に溢れた特選句である。
[ 茄子漬けのむらさき色や食㕵ん ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は上五の季語から中七にかけて、『具象的』な事柄が詰まっている。そして切れ字の【や】が抜群の効果‼️下五の『食旺ん』もユニーク優等生の作者であるが、こう言った作品も素晴らしい。
[ 星涼し胸いつぱいの呼吸かな ]
[大森理恵先生の御選評]
原句でも作者の言いたいことは全て伝わる。が、我々は土星でも火星でもない地球なので、此処は引き算にして下五を切れ字の詠嘆の『かな』止めをした。作者は【名詞+涼し】の季語は完全にマスターされたようだ。そしてお気に入りの季語となった。
季語を愛することは俳人にとって何より一番なのだ。星涼し⇔胸いっぱいの深呼吸 此処には自分と季語との『距離感』が出る。
名句は必ず、この距離感が遠ければ遠い程よい。一句に拡がりが出てくるからである。然しこれは【二句一章】に限る。【一句一章】の場合には季語を深く深く詠み込むことが大切であるから・・・『自己投影』と『映像の復元』に優れた特選句である。
[ 月涼し旅路を語る日記かな ]
[大森理恵先生の御選評]
作者の大好きな季語の【月涼し】の作品。原句の下五の『友のゐて』を『日記かな』と添削したのは基本、俳句は【一人称】と決まっている。
これを俳句では【自己投影】という。【月涼し旅路を語る日記かな】 この作品をご覧になり富田様は「芭蕉を思いました」と書いておられるのは『旅路を語る日記かな』から芭蕉の紀行文【笈の小文】を連想されたからであろう。実は私も下五を『日記かな』と添削したのは芭蕉の『笈の小文』をインスパイアである。
これは季語と中七の『旅路を語る』の措辞が良かったので特選句。
[ 雲の峰いくつ登りてまた登る ]
[大森理恵先生の御選評]
このような作品を【一句一章】と言って季語を深く掘り下げた一句です。これは素晴らしい作品です‼️
季語の『雲の峰』を噛み砕いて御本人の想いの【自己投影】をお見事に吹き込まれました。実に鮮やか本当に『雲の峰』はいくつ登っても頂点に辿りつかない位にムクムクとしていますよね?その様子を具体的に捉えられた素晴らしい御作品。
この作品は絵本にそのまんま出ても良いくらい! まだ句歴、一年生なのに素晴らしい実力の作者にはいつも感心させられます。お見事。
[ 朝涼し木々のこゑして散歩道 ]
[ 川涼し水に声あり香りあり ]
[ 丁寧に文したためる夜長かな ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は昨日のレッスンで特選句に頂いた。彼女は人には言えないくらいの身体の痛みを持
たれている。にも関わらず、気合いで10句出された。超特選句もある!その中の一句である。お見事にご自分の長所を詠んでおられる。
何事にも丁寧でお優しくて、キメ細やかな榮子さん! それが一句に滲みでている作品である‼️然も季語の【夜長かな】の季語が動かない。彼女の御主人のレッスン前のアドバイスを聞き私は泣きそうになった。榮子さんからこと細かく聞くたびに深く愛されて、おられることにより、榮子さんはこのような素敵な作品を続々と詠まれるのを改めて実感した。
作者は俳句を学ばれて一年と一ヶ月!!!なのにも関わらず、このように格調の高い【自己投影】の良く効いた特選句を作られるようになられたことに驚いた‼️ 満点の一句である
[ 色鳥の見え隠れする木立かな ]
[大森理恵先生の御選評]
秋の鳥の中では一番目立つ【色鳥】!!! 作者は、この季語をうまく使われて一句に仕立てあげられました。
特に中七の【見え隠れする】←この箇所がお見事に言い得て妙ですね。この語彙は俳人なら良く使いますが成功すると良い句になりますが失敗すると完全なダメ句になります。下五の止めの【木立ちかな】も絶妙な止め方です。
作者は俳句を本格的に学ばれて一年と二ヶ月目ですがまるでプロの俳人の如く、言葉に対しての自覚と責任があり素晴らしいですね。この作品はレッスンの初見で特選句に頂きました一句です。
[ 色鳥も色なき鳥も雨に濡れ ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品のポイントは季語の【色鳥】にある。愛鳥家の重鎮である作者は季語である可愛いくて美しい秋の主役の【色鳥】だけではなく、主役でない脇役の【色なき鳥】にもスポットを当てて、そこで、俳句で一番大切なリズムを上手く使っておられる。
リズムの中でも最も難しい『リフレイン』を上五から中七迄、使われている。リフレインとは『色鳥』に対しての『色なき鳥』のこと! この高等技術には本当に驚いた!!! 実際には、まだ俳句は一年生の作者とは! この流れるようなリズムが実は俳句では一番難しいのに基礎のしつかりとした格調の高い作品の上にリズムまであれば鬼に金棒である。又、下五の『雨に濡れ』が何とも言えず愛に溢れて【映像の復元】を見事に著している。
私はこの作品を拝見しひととき大自然に想いが飛ばした。俳句の持つ大きなエネルギーを頂くことが出来た(人間界の欲に塗れたドロドロした戦禍や忖度ばかりの日本の政治にヘキヘキしていたが一瞬で消え去ったのだ)。心が浄化されて大自然と対峙する美しい俳句の基礎の心を取り戻してくれた感謝!感謝!の特選句である。
[ 目をつむり遠き日思ふ夜長かな ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品も偶然にも【夜長】を詠われている。作者の丁寧さが滲み出ている素晴らしい一句である。
上五の【目をつむり】がしみじみとしていて季語の【夜長】を充分に活かしている‼ 将来が楽しみな作家である。そして中七の【遠き日思ふ】が我々の世代になると走馬灯のように色々な過去のことが蘇る。今では古き良き昭和時代のことをレッスン時に作者と話すのがとても楽しいひとときである。
作者は今、お身体の痛みが、かなりお辛そう。けれど歯を食いしばって頑張り屋さんの作者は特別室のパソコンのお部屋に向かわれて俳句を作っておられる。どんなに身体が痛くても俳句が心の支えになっているからであろう。私にも、このことは長年、大怪我やそれにもまして心が深く傷つくような体験しているから良く理解出来る。『神さまは乗り越えられない人には試練を与えられない!!!』
作者の真実の魂は更にピカピカに磨きが、かかってゆく。一年前はダイアモンドの原石であった人。それが見事に一年過ぎて開花してゆく‼ 作者の心の叫びが日に日に力強く作品となって磨かれてゆくのだ。やはり、この一句も嘘のない真実の作品であるからこそ読者に訴える力が大きい。【夜長】を詠んだ、お見事な特選句である。
[ 猫じやらしゆらゆらゆらゆら音符のやうに ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は初見で拝見した時から思わず、「あっ!!!」と叫んでしまった‼️ それほど、可愛いくてcharm &cuteな作品である。
殆どの字体を平仮名にされて中七の措辞『ゆらゆらゆらゆら』と四度のリフレインを使われている。これは、かなり高等なテクニックである。作者はこれを考えて作句はされていない。が、季語の『ねこじやらし』をご覧になり、ふっと湧いてきたのであろう。
下五の『音符のやうに』この着地が実にお見事‼ 体調の優れない中で「俳句と対峙して先生の選評を拝読している時だけは痛みや辛さを忘れます!」と仰る作者のお言葉は感動して、こちらこそ実に有り難い。指導の時間もとても楽しく、俳句以外の女子トークでも年齢を忘れて高校生になったように二人でゲラゲラ笑いながら過ごさせて頂く。俳句の力の持つエネルギーの凄さを彼女は既に身に沁みて理解されている。だからこそ全てをオールインして作品と対峙されているのが私には良く理解出来る。
【言葉は平明に想いは深く】と常に指導しているが作句となると難しいが、この作品は天下一品の名句である。
[ 天高し一歩一歩また一歩 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品もこの前のレッスンの折に思わず特選句にとった。季語の【天高し】と中七から下五までの自己投影の措辞が非常に素晴らしい‼
『一歩一歩また一歩』 この♬リズム♬はなかなか凡人では出てこない。作者の普段からの生きることへのたゆまぬ努力が目に見える‼ 作者は【鳥】に関しても凄くエネルギーで愛されて来られた。今はそれが【俳句】なのだ!
私には作者の気持ちが痛い程、理解できる。一瞬、一瞬、身体が痛くても辛くても前を見ることが自分自身の人生を豊かにしていることが…。私は人として人生の先輩として作者を非常にリスペクトしている。言うのは簡単ではあるが、いざ、自分の事となると非常に難しい!!! が、すべての胸の想いを一句に込められた‼‼ 素晴らしい名句である。
[ 点となり線ともなりぬ渡り鳥 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は原句の一字の助詞【て】→【ぬ】に変えただけです。作者は愛鳥家の重鎮さんですから秋の季語の【鳥渡る】は、お得意です。確かに、この上五から中七にかけての措辞は素晴らしいですね。こういった季語を詳しく、深く詠んでいる作品を【一句一章】と言います。
また俳句を学び始められて一年と一ヶ月…。なのに昨夜の句会での私の特選句三句の中に二句は彼女の作品でした。徹底した洞察力と深い探究心、そして日々の努力の賜物で、とても嬉しかったです。
この一句も秋の季語の鳥の渡りが『点』となり『線』となるのを見上げて作者特有の深い視点により作句されました。日々、真面目に丁寧に俳句という日本が世界に誇る唯一の季語のある短詩系文藝に対峙されている作者には脱帽です‼️助詞を詠嘆、終止の【ぬ】に添削しての素晴らしい特選句です。
[ 長き夜の季語を学びし数多かな ]
[ 目覚めかな鰯雲あり幸あれ ]
[ 何ひとつ浮かばぬ季語や天高し ]
[ 秋高し歳時記眺む窓辺かな ]
[ 夜長かな夫と語りし半世紀 ]
[大森理恵先生の御選評]
第3句会は9月18日月曜日8時スタートでした。私に送られてきた寸前の30句は勿論、無記名!!! 皆さんの互選の前に早急に選句をする。作者がわかれば、そこで選がぐらつくかも?と言うオソレが
あるから。
今回の特選句3句は直ぐに決まった。(その中でも↑が一位の【天位】になった作品です。)
このような作品を【立て句】と言い、季語の【夜長】が抜群に効いている。然も措辞の中七から下五迄の『夫と語りし半世紀』はしみじみとした叙情があり、季語の『夜長』を引き立てている。拡調高いドッシリとした作品である。
私は句会の選句の時には真っさらな思考で選をする。出ないと確かな選句ができないから・・多い時には俳句の全国大会で三千人が二句ずつ、出されて六千句から特選句3句を瞬発入れずに選ぶ。これこそ、選者の醍醐味‼
ここでは措辞の『夫と語りし半世紀』が抜群の力を持つ。このような作品は今までの大昔からのどの大歳時記にも例句がない‼️この作品は一番に特選句に選んだ名句である。
[ 秋立ちぬ小さき声して小さき鳥 ]
[大森理恵先生の御選評]
(この作品は基本的にリスの秀逸作品と共に大好きです。)が、特選句は3句と決まってるので涙をのんで秀逸作品にした。
『小さき声』『小さき鳥』のリフレインの♬リズムが何とも言えず素晴らしい。然も季語の【秋立ちぬ】と上手く呼応している。
私は皆さんに一番大切なことと指導しているのは【言葉は平明に想いは深く】である。幼稚園児にも読めて口ずさんでくれるような作品こそが優秀である。並の俳人は何故か難しい言葉を使いたがるがそれはアホだと思う!!! 日本古来の優しい言葉でみんなが理解できるリズムの良い作品こそが優秀なのだ。個人的に大好きな作品。
[ 鰯雲北の大地へ思ひ馳せ ]
[大森理恵先生の御選評]
この季語の【鰯雲】は読んで字の如く鰯の群れのような秋の有名な流れるような雲である。それに対して措辞の【北の大地へ思ひ馳せ】が素晴らしい。流れるような爽やかな秋の季語【鰯雲】から猛暑続きの日々に飽き飽きされて出てきた措辞であろう。
何しろ『北の大地へ思ひ馳せ』は降りてきたようなフレーズ!!! なんとも言えず美しい‼ こう言った季語を深く掘り下げた作品を【一句一章】と言う。彼女は、最近、メキメキと力を発揮されている。日々の弛まぬ努力の賜物である。リズムも良い。
私の【ひとりの灯】掲載の作品中に【トランクに別の国ある鰯雲】がある。この作品は【二句一章】の典型!!! 今後は【一句一章】と【二句一章】の違いについて学んで頂きたい。天文の空を見上げてのダイナミックな素晴らしい特選句である。
[ 渡り鳥ただひたすらに閑かかな ]
[我ひとり色なき風に身をまかせ ]
[大森理恵先生の御選評]
このように季語を深く追求した作品を【一句一章】と言います。作者とは昨日のレッスンにて【一句一章】と【二句一章】について、私の作品を元にして長い間語りました。
作者の素晴らしい処は良い作品、自分が感動した作品を暗記される事です。これは俳句を学ぶ点において一番大切な事なのです。
この作品の季語の『色なき風』は中七に使ってありますがこの中七に季語を使うのは、かなり難しいです。この一句は少し短歌調ですがギリギリのところで頂いた一句です。
あまり具象的ではない季語『色なき風』を上五の『我ひとり』と下五の『身をまかせ』で抑えているところが何やらベテランの作品のようです。リズムも良いし書くと流れも良いので特選句に頂きました。
[ 庭たたき尾を振りあげてタクトかな ]
[鬼やんま行きつ戻りつここ住処 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は一切、添削しておりません。実にお見事に『鬼やんま』の生態を描写しておられるからです。然もリズムがとても良いです。このような季語【鬼やんま】を詳しく詠んだ作品を【一句一章】と言います。
措辞の中七から下五にかけての『行きつ戻りつここ住処』の納め方が素晴らしいです。とても俳句一年生とは思えない詠み方に感心致しました。
ラストの『住処』→『棲家』に変えても良いかもですね‼ 然し、『行きつ戻りつ』の中七から『ここ住処』までは何度、読んでも実にお見事です。この作品はレッスン時には言ってないかも知れませんが特選句に頂きます。
[あきつ跳ぶ遠き峰々雲の中 ]
[ 稲刈りの藁いつぱいに汗いつぱい ]
[ 渡り鳥横一列の平和かな ]
[大森理恵先生の御選評]
幼い頃から【渡り鳥】を見上げきた。何故だか、先頭が一羽で二列目には二羽、三列目には三羽と続いて何列もの鳥が続いて渡ってゆく。この作品は、その当たり前の意表を突いてこられた。
大好きな飛行機の航空隊も同じように先頭機が一機。二列目が二機。三列目に三機。大空を見上げて、それが小さな頃から不思議であった。風の抵抗を避ける為に、そのように鳥が飛ぶ。飛行機は鳥から学んでいたのであった!!!
先頭の一羽の鳥はいつも沢山の風の抵抗を受けるから、かなり疲れる。なので途中で二列目の鳥と上手く入れ変わる。私は鳥のことが凄く頭良いと感心しながらずっと大空を見上げていた。
挙句は、そのことを詠まれている。横一列の渡り鳥はあまり見ないが、これこそ【シャローム】!!! さすが、愛鳥家の重鎮さんらしい作品‼️お見事である!!! 全ての物事が【横一列の平和かな】というように差別なく穏やかに日々、過ごし生きたいと切実に願っている。この作品も個人的に大好きな名句である。
[花韮の真白にバージンロードかな ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の原句が良いから添削しました。花韮の白さをバージンロードに例えた作品は、今までになかったから、とても感動しました。
但し、原句の【染めて】は、花韮の白さの説明をしています。俳句は決して季語や語彙の説明してはなりません。言い切ることが大切です。
発想の良い原句を活かして下五を詠嘆の切れ字の【かな】で止めました。そして俳句で一番大切なリズムを整えました。
作者の俳句への熱い想いは日常から伝わってきます。素敵な花韮の作品は添削して特選句に頂きます。
[蟷螂や斧ふりあげてご挨拶 ]
[大森理恵先生の御選評]
作者の多方面に渡る発想の飛ばし方には目を見張ります。まさか季語の【蟷螂】の脚が【斧ふりあげて】【ご挨拶】とは、まるで、幼い子供のような、ビュアーな発想です。然も、【蟷螂】の生態をじっくりと観察されています。
この作品は、何処から見ても俳句一年生とは思えません。彼女の俳句に対する真摯な対峙の仕方には私も時々感心致します。これまで多くの生徒さんと接して来ましたが此処まで俳句にハマられるとは始めは予想もできませんでした。
人は幾つになっても『学ぶこと』は必要です。それを目の当たりに見せてくれている作者の素晴らしい発見の一句です。【鳥】だけではなくて【昆虫】や【植物】全ての生きとし生きるモノ全般に対しての深い愛情を感じました。
この句はユーモアもありリズムもよくて【言葉は平明に想いは深く】の特選句です。
[ 歳時記と万葉集と月明かり ]
[大森理恵先生の御選評]
昨日、京都は7年に一度の素晴らしい中秋の名月、満月でした。次に『中秋の名月』と『満月』が一緒になるのは7年後の2030年らしいです。
この作品は前回の木曜日の特選句に頂きました。
名詞ばかりの一句ですが、この作品を出された前のレッスン時に榮子さんに話した事があります。「俳句はなるべく名詞で勝負してください!! 形容詞、動詞は一句の中にひとつまで!! 名詞を入れることにより具象が強くなります!!
例えばですが角川春樹さんの作品に【存在と時間とジンと晩夏光】という一句があります。これは『ハイデカー』の【存在と時間】からの引用です。私はこの作品を初見で選句した時に大特選にしました」という、御指導です。
榮子さんは、その事をふまえて今回、【歳時記】と【万葉集】と【月明かり】という名詞ばかりで一句を成されました。この作品は見事に具象がハッキリしていて大成功です。 特に【歳時記】+【万葉集】の組み合わせ+季語の【月明かり】はマッチングが満点。初見の折に驚き大特選に頂いた一句です。
★俳句に於ける名詞はとても大切な要素になります。こうして使い方のバランスにより成功します★