- 原句は【蕎麦の花思ひ思ひの白さかな】でした。
- 原句は【届かざるところに二つ烏瓜】でした。
- 原句は【鴫集ふ刺し子模様が勢揃ひ】でした。
- 原句は【声高く背高鷸の舞ひ降りぬ】でした。
[ 花蕎麦の思ひ想ひの白さかな ]
[大森理恵先生の御選評]
俳句用語で【一字違いが大違い】という言葉がある。この原句では下五が詠嘆の【かな】であるから、季語の上五と中七からのリズムを流れるように
しなくてはいけない。これは俳句の基礎の中でも一番、難しいリズムなのである。
原句では、【蕎麦の花】で一旦、切れる。この切れはラストの 詠嘆の切れ字の【かな】を使ってしまうと切れ字が二つになるおそれがある。なので上五から中七に続くリズムのよい【花蕎麦の】とした!!! これは俳句のプロでもなかなか難しい。
リズム感は自分自身で何度も口で唱えて覚えてゆくしかないからである。口で唱えて少しでも引っかかったり言いにくかったらその句はダメ。これは慣れしかない。
私は原句に沿った添削を大切にして心がけているから、個人レッスンでのこのようにな丁寧な指導ができるが、普通の大勢の句会では一句、一句を懇切丁寧に指導する時間はない。なのでこれは少しずつ、個人個人で何度も口で唱えながら学んで頂きたい。
リズムのことで長くなったが、この作品の長所は中七から下五の【思ひ思ひの白さかな】にある。白さにも其々の個性があるということを作者は言いたいのだ。この措辞は素晴らしい。原句が良くないと添削しても特選句にはならない。これは添削して特選句に頂いた。
[ 空仰ぐ視線に二つ烏瓜 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の原句は少し抽象的でしたので、具象が足りないと思い、作者の思いに沿って上五から中七の語彙を作者の思いのままに変えました。
作者は超がつくほど正直な嘘の付けないご立派な方ですから普通は、これだけ添削された作品は表に出すには勇気が入りますが、作者は句友の皆さまや読者の皆さまの為に、どうやら表に出されてしまいました。
すっかり原句と変わったようですが作者の言いたい事はどうやら解決したご様子ですね。(基本、このように中七から下五まで添削しなければいけない作品は【没句】と致しますが日頃の作者の弛まぬ努力や俳句に対する真摯な対峙の仕方を見て臨機応変に指導させて頂いております。)
作者の目線の上には季語の【烏瓜】があります。それがどうしても届かない!!! けれど、その想いをそのまんまでは俳句に最も必要な具象がないのです。【空仰ぐ視線に二つ】この措辞は作者の心底の想いを私が具体的に言葉にしました。
[俳句][具象][名詞]この基礎はお忘れなく。添削してとてもわかりやすい作品になった学びの一句です。これで【映像の復元】がバッチリですね。
[ 花葛や小径を照らすシャンデリア ]
[ 鴫集ふ刺子模様の勢揃い ]
[大森理恵先生の御選評]
秋の季語の【鴫】。【鴫】は作者の大好きな鳥さんですから私も大好きになりました!!!
鴫の群れをご覧になり【刺子模様】と下五の【勢揃ひ】が抜群の描写ですね。この比喩が今回の御作品のお手柄です。
【映像の復元】バッチリ原句の【が】→【の】に変えました。俳句用語の【一字違いが大違い】です!!! 助詞を添削して特選句に頂きます。
[ 鰯雲どこまで行くの虚空まで ]
[大森理恵先生の御選評]
昨日は榮子さんのレッスンの日であった。実は、大大大特選句があったのだが、この句ではない。
この作品は季語の【鰯雲】に対して口語で問いかけてそして、止めに答えの【虚空まで】とある。この下五の着地の【虚空まで】がとても深い。虚空とは『何もない大空』『果てしない大空』『どこまでも続く大空』という意味にもとれるが…。先ず、この一句事態が禅問答のような作品である。その類想のない発想に驚いた。
うちのお弟子さん達は往々にして俳句、俳句した『花鳥諷詠』的な作品はあまり好まれないし作られない。お弟子さん達の全ての作品が年齢不詳なのである。
この【鰯雲】の作品も、ずっと鰯雲を眺めておられた作者が思わず自問自答されたような一句である。私達の肉体が滅びても魂は、あの世まで残るのかもしれない。
作者は最近、この句に限らず作者の全てを俳句にオールインされている。その対峙の仕方が実にお見事である。まだ一年とニカヶ月の俳人とは思えない。
この作品はリズムも良い。そして何より哲学的な難しいことがらを口語にされて優しく答えまで出されて俳句にされたことが実にお見事な特選句。
[ 月明かり琴の音ひびく想夫恋 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品です!!!
私がこの前のレッスンの折に大大大特選句に頂きましたのは。
①下五の【想夫恋】この語彙は作者の造語である‼ 彼女が初期(まだ一年二ヶ月なので初期であるが)の頃にオススメしたのが、お亡くなりになられた大昔から家族ぐるみで親しく仲良くさせて頂いてた日本の川柳作家の第一人者【時実新子】さんの【有夫恋】という爆発的に売れた御本でした。作者はそのタイトルから刺激を受けて今回、【想夫恋】という言葉を作られたのか?これには非常な驚きがあった。
②季語の【月あかり】が抜群に効いている。この季語は私も大好きで事あるごとに作者に話していた。
③中七の【琴の音ひびく】この措辞が雅びでとても美しく、季語の【月あかり】と下五の【想夫恋】を引き立てている。
以上の大きな三つの理由があり瞬間で大大大特選句に頂きました。️
この作品は【映像の復元】と共に【自己投影】&【リズム】も抜群に素晴らしく、作者のこれまでの作品を大きく超える名句である。何より、四六時中、彼女に寄り添って身体の痛みを分かち合われる優しく漢らしい昭和を代表するご立派な紳士である御主人様への想いを【想夫恋】と造語にされたのには心から参りました。️
素晴らしい一句です。後に残る名句です。空いた口が塞がりません。
[ 天高し世界を照らす翔平さん ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は以前に佳子さんが【天高し】で作句されていたが同じ時期に榮子さんも作られていた。
真ん中の七文字が違うのです。【世界を照らす】此処が榮子さんらしいですね。
確かに大谷翔平さんはバッター&ピッチャー二つの実力共に世界一です。が彼にはそれを超える【人間力】が在ります。だから世界中の大勢の方々から愛されるのでしょう。見える表の部分じゃなくてこの結果を出すには見えない裏の部分でのストイックさは普通の人の百億倍ですね。
時々、私は夜中に目が覚めてお腹が空きます。で、直ぐに何かを食べちゃいますが。大谷さんは超ストイックですから全ての欲には「我慢‼️我慢‼️」と仰って人の百億倍の努力をされています。
それと凄い読書力‼️それと人としての謙虚さ‼️ご両親のお育て方が違いますね。
高校の佐々木監督監督、日ハムの栗山監督も超一流の御指導で素晴らしいですね。だからこそ、これだけの実力と共に品性、人間力、知性、全てを兼ね備えておられるのでしようね。
榮子さんが大谷翔平さんのファンで、とても、とても嬉しいです。
まさにこの暗黒の世界の中で【天高し世界を照らす翔平さん】ですね。️
(ちなみに私は時間があれば小さい子供のように大谷翔平さんのYouTubeやTikTokを見て自分自身に元気を付けています。大谷翔平さんのことは殆ど知り尽くしています!昨日は、聖地、岩手、奥州市の詳しい地図も買いました。)
[ こゑ高く鴫舞ひをりぬ印旛沼 ]
[大森理恵先生の御選評]
今回の原句は微妙に何かエッセンスが足りなかったのと説明句ですから優等生の榮子さんを贔屓して下五に地名の【印旛沼】を入れました。
此処では愛鳥家の榮子さんの写真集ではなくて俳句集ですから。
この添削により作品がダイナミックになり鴫の飛躍と共に格調がお見事に高くなりました。多分、この作品は先々週のレッスン時のかも。優等生の榮子さんは沢山の優れた作品をストックされております。地名を入れた添削をして特選句です。
[ 色鳥や木々の緑も色づきぬ ]
[大森理恵先生の御選評]
季語の【色鳥】だけではなく樹々もそろそろ、秋の色を深めてきた様子です。これを作者は見逃さずに一句に仕立てあげられました。
この場合の【色鳥や】の【や】切れは成功してます。リズムも良くて映像の復元もできていますね。(欲を言えば、あとひとつ、突っ込んでの何かが足りないのです。この何かは凄く難しいのです。少しずつ学んでまいりましょう。今夜のレッスンにて、又、ご指導させて頂きます。)型としてはできていますので合格点です。
[ 小鳥来てひととき忘る痛みかな ]
[大森理恵先生の御選評]
急に秋が駆け足で通り過ぎ晩秋になり朝寒や夜寒になりました。作者は持病の身体の痛みを【小鳥来る】の季語で散らしておられるご様子の作品です。
リズムが良いですね!そして【自己投影】もできています。【小鳥来る】でこのような内容の作品は今までにはありませんでした。さすが、愛鳥家さんです。
この作品はレッスンの初見の折から良いと思いました。小鳥さんに充分、癒されてくださいますことをお祈り致します。優しさと感動の一句。
[ 小鳥来る窓に七色光あり ]
[大森理恵先生の御選評]
【小鳥来る】シリーズですね。
この作品の良い着眼点は『七色光あり』です。これを俳句では【実にゐて虚に遊ぶ】と言います!実際には七色の光ではなかったのかも知れません。けれど、小鳥が来た窓には太陽の日差しが七色に輝いていたという作者の心の声なのです。
最近の作者は【自己投影】の作品が多いのですが、季語を通して、こう言う風に、じっくりと自分と深く対峙する【俳句】という文藝には凄い力があります。
この作品もリズム、映像の復元、そして自己投影の三つが揃った特選句。
[ クレパスで描いたやうな鰯雲 ]
[ 秋深む友のケーキの持つ力 ]
[大森理恵先生の御選評]
過日、真理子さんより句友の皆さんへの日頃の応援として【真理子スペシャルケーキ】そして八重子ママより【モンロワールのチョコ】が送られて来た。(八重子ママはいつも、どんな時にも3名の俳句はご覧になってくださってる。)とても有り難い事である。
今回は、始めて皆さんへ『真理子スペシャルケーキ』への挨拶句の宿題を出した。
作者は昨日のレッスンで13句程、出された中ではこの作品が一番、考えて時間がかかったと言われた(笑)何故なら、作者は持病の痛みの為に、殆ど、ご飯が召し上がれない。が、この愛に溢れたスペシャルバウンドケーキは大大好物であるから・・・余計に難しいとのこと。
ちなみに真理子さんは挨拶句が超得意である。だが、今回の作者の作品は季語の【秋深む】&下五の【持つ力】のラストの止めの【力】が、とても良かった。
現にこのケーキの持つパワー【力】のおかげで沢山の秀句が生まれた。
それにしても昨日の佳子さんのお皿の設えといい、今朝の榮子さんの美しいお皿の設えにはビックリする程、美しい!!! 感心。感心。ともかく挨拶句は両方とも合格。
[ ちちろ啼く天井知らずの物価高 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句のままですと季語の『秋の空』と措辞の『天井』が同じ『天』なので重複して喧嘩しちゃいますので添削させて頂きました。
措辞は、まさに、現代の社会諷詠を、お詠みになっていて、お見事ですね。なのでこれは作者の tweet(呟き)としてリズムの良い『ちちろ虫』に啼いて貰いました。『鳴く』→古語では『啼く』と書きます。
作者は今回のレッスンでは日本の政治を憂いた作品を何句か作っておられます。全て、とても良い措辞です。最近の物価高にはほんとに驚くばかりです。(私は一人暮らしですが三食、自炊しております。食事の材料を買いに行っても、何もかも値上がりしてるので身に沁みます。)岸田内閣は外国ばかりにエエカツコしないで日本国民が暮らしやすいように何故、もっと考慮してくれないのかを訴えたいですが日本は、この30年程、経済も政治も生産も何もかも⤵️⤵️⤵️しておりますから余程の政治改革をしないと昭和の良き時代には戻らないでしようね。
作者はその事を言いたくて、より、具象的に最近の目に余る『物価高』を持ってこられました。
何はともあれ、作者の俳句に対する【志】は感心するばかりです。その事に嬉しさと共に私も指導者として恥じぬ『生き方』を目指してゆきたいです。この作品は添削しての特選句に頂きます。
原句は【秋の空天井知らずの物価高】でした。
[ 露草のその日限りの契りかな ]
[大森理恵先生の御選評]
珍しく作者の原句は切れ字の【や】と【かな】が重なっておりました。原句の措辞が凄く良いので勿体ないので添削させて頂きました。
『その日限りの契りかな』儚くて美しいですね。秋の植物を代表する美しい季語の【露草】とピッタリ‼️です。
作者は日毎に、俳句の核心を学ばれて、どんどんとご成長されてゆかれますね。とても楽しみな作家さんです。
【露草のその日限りの契りかな】と添削しての特選句ですね。
原句は【つゆ草やその日限りの契りかな】でした。
[ 鴫集ふ旅の途中のレストラン ]
[大森理恵先生の御選評]
【鴫】は秋の季語の中でも特に有名です。この【鴫】は作者の一番好きな鳥さんです。なので、とても詳しく蓮田での、ご様子をご覧になり、それをオリジナルな用語で一句にされました。
『旅の途中のレストラン』はなかなか出て来ない語彙です。鴫さん達が渡りの途中、集まって栄養補給されてるのを とてもユニークな表現で例えられました。これは大成功です。とても楽しい一句です。まるで絵本を見て読んでるようなオリジナリティな可愛さがあります。
俳句、俳句してる用語をなるべく使わないで誰にもわかる。【言葉は平明に想いは深く】一年三か月学ばれた成果が出てきてとても嬉しいです。
こういった年齢不詳の一句を今後とも、どんどんと挑戦して頂けたらと願った作品です‼️
大成功の特選句。
[ 水鏡ゆらゆらゆらと鴫の羽 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は一度目の原句が少し気になったので推敲して頂いた。二度目の【ゆらゆらゆら】のゆら×3がなんとも言えずリフレインが効いている、とても良い作品になった。
作者はまだ一年と三ヶ月であるがベテランのように基礎も出来ていて少し直せば、作品がとても良くなる優等生である。うちのお弟子さん達は全員、俳句に対しては熱心であるが中でも作者は全て、他の方々の作品も暗記しておられるお勉強家さんでもある。見習うべきことが沢山ある。
作者の一番好きな秋の季語の【鴫】+大好きな【水鏡】を詠んだ作品。️リフレインのリズムと共に映像の復元が、お見事である。
彼女は政治、歴史、文藝と、どの世界にも造詣が深くてレッスン中にも話しが尽きない。★俳句は俳句だけ学んでいたら良いのではないという私の指導理念を深くキャッチされているから指導しやすい優等生でもある。
この作品も作者を代表するお見事な特選句である。
[ 秋風やエンゲル係数急上昇 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句は切れ字の【や】が入ってないので季語と措辞との対比が何故?とわかりにくいです。季語は、措辞とセットにならなくてはいけません。
その為に切れ字の【や】を使って【二句一章】にしたりして季語の重要性を述べます。これは短詩系の文藝の中ても俳句だけです。
【秋風】と措辞の【エンゲル係数急上昇】はとても良い対比ですね。なので今回は切れ字の【や】を入れてハッキリとした一句にしました。
最近、作者は社会諷詠句をうまく詠っておられます。風刺句ではなくて諷詠句と言います。リズムもとても良いです。確かに買物行くたびにため息出てくるほど、全てが物価高。庶民の味方の玉子も半年で当たり前に100円以上値上がりして、お野菜なんて言わずもがな💢💢💢 この憤懣を作者は上手く俳句にしてくださいました。添削しましたが特選句です。
原句は、【秋の風エンゲル係数急上昇】でした。
[ 露草や儚く消ゆる過去の恋 ]
[大森理恵先生の御選評]
作者は大好きな【露草】で一句、詠まれました。原句でも悪くはないのですが少し具象が足りないので下五を【過去の恋】と止めました!季語から中七までは問題なく素晴らしいです。『露草の儚く消ゆる』の例えはサイコーなのですがそこに二文字変えて【過去の恋】としました。これで具象が出てきますし意味もハッキリとわかります。
いつも言いますが原句が良いと没句にはならず添削するととても良い作品になります。作者の作品は殆どがそのようですから毎回、レッスン時にも没句の作品が少ないです。
季語の【露草】はとても儚い花です。これを【や】を使って【二句一章】にされたのは、成功ですが止めが少し、動きますから【恋】を足しました。添削して素晴らしい特選句。
原句は、【つゆ草やはかなく消ゆる恋のごと】でした。
[ 蚯蚓啼く光求めて闇の中 ]
[ 宿題に四苦八苦する良夜かな ]
[ 鴨の群れ旅路の果ての五千キロ ]
[ 遠き日の想ひ出載せて雁の風 ]
[ 色鳥の色映りたる水鏡 ]
[ 不揃ひの蓮根並ぶ政府かな ]
[大森理恵先生の御選評]
この原句の季語が【不揃ひの蓮根並ぶ】でなければ私は下五を直してはいない。
蓮根が揃っているならば明るい未来でも良い。が、どう考えても今の政府には多くを望めない。諸外国にはお金をバラ撒き、アメリカの言う事はハイハイと何でも聞き、日本国としての誇りが全くない。要するに国としての【矜持】や【志】が消えてしまったのだ。いつの間にか、このままでは、これからの子供達に夢も希望もない国になってしまった。我々の幼い頃はこんな世の中ではなかった。申し訳ない。
話しが俳句から逸れてしまったが、この季語の【不揃いの蓮根】から想像するのはあまり良い事ではないのでレッスン時に作者と話している今、現在の日本の政治のことを当て嵌めた。このような俳句を『社会諷詠句』と言う。作者のお得意のジャンルである。こう言った庶民の声を代表してもっと俳句で詠んで頂きたい。
これは季語の原句が良いから添削して特選句である
原句は、【不揃ひの蓮根語る未来かな】でした。
[ 蚯蚓啼く眠れぬ夜のひとりごと ]
[大森理恵先生の御選評]
今回の季語【蚯蚓啼く】は俳人が好んで使う秋の季語です。蚯蚓が啼くかどうかは不確かなのですが秋の夜長の深々とした闇の中での物音を古代から【蚯蚓啼く】と使ってきました。
秋の【蚯蚓啼く】に対して、春には【亀啼く】を使います。これは、二つとも俳諧でのユニークな季語です。この季語は、殆どの俳人が初期に使います。私は六歳で覚えて直ぐに【亀啼く】&【蚯蚓啼く】はエラソウに使いました。古代より俳人、歌人が好む季語とも言われます。
今回の作者の作品のミソは『眠れぬ夜』にあります。この語彙により深々とした夜長の秋の闇の中で一人、何やらモゾモゾとしてる中で、独り言を呟いている様子を一句に仕立てあげておられます。これは、句歴一年三ヶ月の俳人とは思えない上手い作品です。
又、私が【鳴く】を【啼く】と直しているのは、なるべく古語を使いたかったからです。【鳴く】でも間違いではございませんが。
何はともあれこの作品はリズムと言い自己投影、それに映像の復元の良くできた晩秋の一句です。
[ はるばると日本の空へ渡り鳥 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の【鳥渡る】では動詞で止めちゃいます。〆として流れてしまうので【渡り鳥】として名詞止めの添削させて頂きました。
この辺りのレベルまでくると、そんなに変わらないと思われますが作者は、かなり高度な俳句を目指しておられますから添削しました。これにより、言葉は平明ですが想いが深くなりより、一層、季語の【鳥渡る】が明確になりました。
俳句は【一字違いが大違い】と言う短詩系の日本の古来からの文藝です。この添削により、この一句を色紙に書けば分かりますが止めがしっかりとした名句になります。
原句は[ はるばると日本の空へ鳥渡る ]でした。
[ 肌寒し世界の果ての日本かな ]
[大森理恵先生の御選評]
今回、作者はレッスンでの作句の三句を掲載されております。
俳句されてない方はわかりにくいかと思いますが、俳句ではお約束があります。それは切れ字を二つ使ってはいけないと言うことです。切れ字は【かな】【けり】【や】です。一句目は【や】【かな】と二つありますから一つにしました。
二句目は助詞の使い方と一句にカタカナは一つと決まっています。なのでカタカナの【マスコミ】➡️【世俗】と添削しました。あとは助詞の【秋深し】➡️【秋深む】です。
三句目は上五の切れ字と季語を少し添削しました。【増税や】➡️【増税に】【冬隣り】➡️【冬近し】です。
俳句は【一字違いが大違い】という日本古来の伝統文藝です。これは慣れるしかなくてリズムが身に染みるまで覚えていきます。それには沢山詠んで添削されて沢山の先人さん達の俳句、短歌、古文を読み解くしか基礎を身に付ける方法はありません。
私も句歴66年近くになりますから直ぐに添削できますがやはりサボっていますと語学はすぐに忘れてしまいます。英語も然り。最近は大怪我の為に海外での通訳のお仕事をしていませんから忘れる一方です。なので四六時中、洋画のDVDを流して忘れない努力をしています。
私も大怪我で背骨五本骨折、両膝骨折しています。なので作者の身体の痛みは充分、理解しているつもりですが、それでもそれぞれの痛み度は違いますから全てわかってはいません。なので作者の苦しみを俳句により少しでも和らげたら、俳句により 少しでも助けられたらと願っておりますが行き届かずに作者に一人暮らしの私の方が心配をかけるばかりです。然し、作者の俳句に対する想いは今までのお弟子さんの中でも群を抜いて真面目で素直で真剣です。
俳句はその【志】です。村越化石さん 野沢節子さんも有名な俳人ですがお二人とも生まれながらの大病により不自由なお身体になられましたが凄い名句を沢山残されました。私も作者には生きる支えが、俳句で在ることを心より望んでいます。
今回は、たまたま三句とも作者のお得意の【社会諷詠句】を詠んでおられてます。
原句は【肌寒や世界の果ての日本かな】【秋深しマスコミあおるデマゴーグ】【増税や政治底抜け冬近し】でした。