- 原句は【惜しむかな友発ちしこの秋に】でした。
- 原句は【筑波嶺を遠きにのぞみ秋日和】でした。
- 原句は【みみず鳴く光もとめて闇のこゑ】でした。
- 原句は【とこしへに天の川あり夢もあり】でした。
- 原句は【虚空かな夢かうつつか秋深む】でした。
- 原句は【光差す藪の向かふや竹の春】でした。
- 原句は【そぞろ寒五公五民の令和かな】でした。
- 原句は【肌寒や国の病は認知症】でした。
- 原句は【蚯蚓啼く友の声して深き闇】でした。
- 原句は【啼く鹿のかなしきこゑや伊吹山】でした。
- 原句は【賃上げや年金暮らし冬来たる】でした。
- 原句は【アルバムにセピア色あり七五三】でした。
- 原句は【毎日が夫に勤労感謝の日】でした。
- 原句は【敷き詰めし銀杏落葉の散歩径】でした。
[ ただ一羽かりがね寒き空の青 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は実にお見事。無駄な語彙が一字もない。それと短冊に書いた時の字の流れが実に綺麗である。平仮名と漢字のバランスがかなり良い。【言葉は平明に想いは深く】の一句である。
中七の【かりがね寒き】は実は【晩秋】の季語になる。◯◯寒きというのは冬の季語と間違いやすいが晩秋である。そして【雁】も秋の季語。
この中七の晩秋の季語が絶妙である。それに下五の【空の青】で止めるとは実に美しい一句である。さすが、愛鳥家の重鎮さんの作品。満点の特選句である。
勘違いされたらダメですから言っておきます。【寒】は新年明けての【寒中】の【寒】とは別です。晩秋に、冬が近くなり、寒さを覚える頃のことです。その中に【秋寒し】【肌寒し】【そぞろ寒】【朝寒】【夕寒】【うそ寒】【やや寒】そして今回の【かりがね寒き】があります。
雁が渡る頃の寒さを言いますがこの季語で先人さんの中でも良い例句は一句もないです。なので敢えて、愛鳥家の榮子さんに作句して貰おうと、この季語を教えさせて頂きました。【かりがね寒き】で季語となります。
念のために愛鳥家の皆様方は覚えておいて下さいませね。よろしくお願い申し上げます。榮子さんの【かりがね寒き】は歳時記に掲載されても良い作品です。それくらい歳時記には【かりがね寒き】では昔からの良い例句がございませんでした。
[ 惜しむかな友旅発ちし晩秋に ]
[大森理恵先生の御選評]
原句でも悪くないのですがやはり【惜しむかな】とありますと下五は冬を待つ【この晩秋に】の方が重厚さが出て素敵な一句になります。
上五に【惜しむかな】と詠嘆の切れ字を持ってきて中七から【友発ちし】そして下五に【この晩秋に】の【この】の二文字がスパイスとしてとても効いています。一句として、どの語彙も無駄がなくて想いの深い作品ですね。
作者にしたら珍しく【自己投影句】ですから、初見の折には、とても嬉しかったです。この作品は画像がなくても、いや、ない方が読者の想像が膨らんで、とても良い作品です。友の旅立ちを明るく詠んだ素晴らしい一句です。
[ 筑波嶺を遠く望むや文化の日 ]
[大森理恵先生の御選評]
俳句の中で季語は【命】である。【季語】により、作品の良し悪しが決まると言っても過言ではない。
今回の作品の措辞は良いのだか季語が平凡なので今日の【文学の日】と決めた。私が何故、【筑波嶺】の季語を【文化の日】としたのには深い訳がある。『筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞ積もりて淵となりなる』。百人一首で知られる第五十七代天皇 “陽成院” の有名な筑波嶺の作品である。彼は清和天皇の皇子で母は在原業平との恋愛関係で知られた藤原高子姫である。俳句は元を辿っていけば万葉の時代から来る【文化】である。なので私は季語を【文化の日】とした。
いつも言うが俳句は俳句だけを勉強していてはいけない。ありとあらゆる事にアンテナを向けていなければ。私は六才から俳句の勉強は基礎を身につけただけで、俳句オタクは嫌いである。なので色々な方面に脳内スイッチを飛ばして感激したり感動したりしながら感性を磨き俳句を学んできた。作者にも今後とも色々な方面に好奇心を持って【一生青春一生勉強】を忘れないで、いつまでも心を若く元気でいらして頂きたいと願うばかりです。添削しての特選句です。
[ 蚯蚓啼く光求めて闇の中 ]
[ とこしへに天の川あり夢のあり ]
[大森理恵先生の御選評]
作者がキャプションに書いておられるように、これは10月の中旬のレッスンの一句でした。
【も】から【の】に添削しただけですがやはり、【の】のリフレインを使うことにより、
①リズムが変わり全体の流れが良くなります。
②それと、このような【言葉は平明に想いは深く】に沿った作品ですと
③やはり【一字違いが大違い】が強く作品を変えます。
作者は天の川をご覧になり、永遠に、この天の川のように夢が続くことを願ってる!!という強い【意志】→【志】を詠まれました。作者の深い思いが理解できるだけに、やはり此処は【の】でなくてはならないと添削した次第です。
添削しての特選句になりました。榮子さんいついつまでもお健やかに【俳句】という【志】を強く持たれて、今のように美しい御心で日本が世界に誇る唯一の季語のある【俳句】と言う文藝を残して下さいませね。心よりお願い申し上げます。
[ 虚空かな夢かうつつか月天心 ]
[大森理恵先生の御選評]
【虚空かな夢かうつつか】という措辞があまりにもロマンティックなので季語を変えました。
原句の【秋深む】では一句が流れてしまいます。上五から中七が少しかすんでいるような語彙を使うと下五の季語で締めなければいけません。そこで不意に【月天心】という秋の良夜でもお月様が天のど真ん中に来る季語が降りてきました。
これで一句がきりっと締まって凄い作品になります。添削した私もドキドキした大好きな名句です。
[ 師の教へ心にしみて秋深む ]
[大森理恵先生の御選評]
作者は晩秋の季語の作品にも秀逸句が沢山ある。このような作品を【心象句】と言う。
上五から中七にかけての措辞と季語の【秋深む】はとても良い。しみじみのした秋の夜長に自己を想いなおして深く考えている様子が何より深い。
作者はとても真面目で、指導したことは全て、その通りに学ばれている。だからこそまだ一年と三ヶ月目に入ったとこなのにベテランの俳人のような季語の使い方をされる。素直が一番。
このような句を詠んでくださって、とても嬉しい。また画像も私の絶版になった【ひとりの灯】こういう細やかな師弟愛があるから作者のlevel upも速くて深い。
[ 光さす藪の向かふに月の雁 ]
[大森理恵先生の御選評]
この添削は我ながらとても好きです。言葉を変えるのは一瞬です。一瞬の集中力を信じて降りてくる語彙に添削します。これは六歳から作句して同時に大勢の方々の【選句】をしている頃から添削するようになりました。
今回の原句【竹の春】では中七からの【薮】ですから当たり前です。榮子さんのことを浮かべるとI秒もしないで【月の雁】が浮かんでまいりました。
上五から中七、そして下五にかけての流れるような日本画のように美しい一句には感動しました。添削しての特選句です。
[ 肌寒し五公五民の令和かな ]
[大森理恵先生の御選評]
今日から立冬。794年に平安京が定められたのも今日でした。この年齢になりますと瞬きしている間に一年があっと言う間に過ぎてゆきます。
作者は、多分、まだまだ晩秋の作品をお持ちなのだがそれは構わないのでどんどん投稿されてくださいね。原句の【そぞろ寒】→【肌寒し】は単にリズムの関係と、【肌寒し】の方が体感的に感じる寒さが違うからである。それとなるべく流れの良いように。短冊に縦書きした折に漢字が詰まるより上五から中七までを平仮名と漢字にした方が綺麗だからである。
ここにある【五公五民】とは江戸時代の吉宗の折に享保の改革で、それまで【四公六民】だったのを政府への年貢を増やされたから言われて来た歴史上の言葉である。作者はそれを上手く使われてこの物価高の令和、消費税や又、全ての税金を政府がボッタクリしてゆくのを日常、嘆いておられて作句された。
作者オリジナルの【時事俳句】【社会諷詠】の句の一環である中七から下五迄の流れがとても良い一句。
[ うそ寒や国の憂ひは政府なり ]
[ 手鏡に映る姿や後の月 ]
[ 亡き友のこゑの何処から蚯蚓啼く ]
[大森理恵先生の御選評]
原句では、この友が存命中なのか天国へ逝かれたのかがはっきり解りませんので【亡き友】を入れました。それと【蚯蚓啼く】=【深き闇】からです。原句は説明しておりますので作者にヒアリングしてからの添削をさせて頂きました。添削後のポイントは【こゑの何処から】です。
作者は、とても真剣に俳句と対峙されております。一年と三ヶ月ですが一度、生徒の皆さまに教えた季語は必ず挑戦されます。この【蚯蚓啼く】は秋の季語です。俳人でも、なかなか使わない【二句一章】の季語ですが作者のチヤレンンジ精神に乾杯です。今後とも、このように、完全にわからない季語でも立ち向かっていかれることをお勧めさせて頂きます。
人生と俳句は同じです。スマホは無理と仰ってた作者なのに、今では俳句のおかげで私との通話は全てパソコンではなくスマホです。この作者の若々しいチヤレンンジ精神がとても好きです。
[ 啼く鹿の万葉覚ゆ古志の山 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の原句の『啼く鹿のかなしきこゑ』では少し当たり前である。然も地名の伊吹山が全く効いていない。なので今回は少し、作者にも難しい添削をした。
鹿は古代の日本の万葉集や百人一首にも出てくる日本人には愛されている哀愁のある動物である。なので先ず中七を『万葉覚ゆ』とした。『覚ゆ』、古語で感じるとか思うと言う意味。そして地名の伊吹山→『古志の山』とした。この『古志』は万葉や短歌の盛んな富山のことを言っている。古代の地名で『古志』とは富山から越後にかけてをこのように言った。特に富山は防人などで万葉や短歌の盛んな地方である。この事も含んでの地名を『古志の山』と添削した。
実は私は授業の際にダメな作品は没句にする。が作者は、とても真面目で真剣に俳句と対峙しておられるのでどうしても、季語の本質を知って欲しかった。なので『鹿』についての由来を語った。
この作品は一年と半年を過ぎたばかりの作者には難しかったかもしれない。が作者の気持ちに沿っての添削である。普段なら原句を活かして一字を変えるくらいであるが、作者には色々な方面にかけて、これからも古典を学んで欲しいという期待の気持ちを含めて今回は中七〜下五迄の添削をした。
皆さまのコメントを読んでいたら、全ての意味が、わからないというご意見が多かったのも当然である。この選評で少しは、理解してくださったであろうか。
作者は日本が世界に誇る唯一、季語という言葉のある短詩系の文藝の【俳句】をかなり愛されている。なので特別に贔屓の添削である。この作品は作者の【志】に100点!
[ 竹の春さやさやさやと子守歌 ]
[ リハビリや銀杏落葉をふみしめて ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品でのポイントは上五の【リハビリや】です。作者は愛鳥家の重鎮さんです。以前は日本のあちこち、イヤ、世界のあちこちを
鳥を愛でて写真を撮り、生態を研究しに行かれてました。が現在は、とある病気のお薬の副作用で以前に比べて足腰がスタスタとは行かず、とてもご苦労されております。が、それも全て俳句に気持ちを込めて作句しておられます。
中七から下五にかけての季語の流れも抜群に良いです。こう言った作品を【自己投影句】と言います。先程、お弟子さん達に幕末の高杉晋作の話しを、していました。【面白きなき世も面白く】 ここでの面白いは、ゲラゲラと笑うおもしろいではなくて、インタレスティングの方です。
何事にも興味を持ち好奇心を持つことです。つまらない!つまらない!とボヤいてないで少しのことでも好奇心を持って眺めていると、とても楽しい一日が過ごせます。お金では得られない楽しみです‼️それが【俳句】=【生き方】です。俳句は上手いとか下手ではなくて人生の【生き方】です。
作者は大好きな鳥さんをwatchingすることが以前に比べて余りできなくなり、今度は俳句に興味を持たれて日々を豊かに過ごされています。これからの高齢化社会では一日を如何に自分の思い方や考え方で興味深く過ごすかで楽しさも倍増するのではないでしようか?【自己投影】の効いた素敵な特選句ですね。
[ 小さき鳥小さきこゑして小春空 ]
[ 大吉や小春日和の籤を引く ]
[ 狛犬の紅の剥がれて神迎ふ ]
[ 散歩径ふたりで語る小春かな ]
[ 賃上げや年金暮らし冬に入る ]
[大森理恵先生の御選評]
作者のお得意の【社会諷詠句】ですね。世の中は賃上げ、賃上げと騒いでいても我々、年金暮らしの世代は全く関係なく引かれて行く一方である。作者は、その事を、かなり憂いておられて一句にされた。
賃上げも良い。が、何事も知らぬ間に値上がっているスーパーでの日常の食品や生活必需品などの消費税を下げて欲しいと節に願う。
日本の国は今後、高齢者ばかりになり年金生活者は増えるのみ。少子高齢化や地球温暖化は昔から騒がれてきたのに政府は何の手段も何一つ、これと言う成果の上がる手は打たれては来なかった。その時、ばったりの政治活動は、良い加減に辞めて頂きたい。
我々は昔に比べれば食べるモノにも質を落として何とかその日、その日を賄っている。温暖化の影響でお魚が獲れないのもあるが今年は、昔は必ず秋の食卓にあったふくよかな秋刀魚が無かった。あっても痩せ細ったのが高い値段で売られていた。将来、我々は美味しいお寿司にも恵まれない様子である。冬野菜も驚くような高価なお値段。
賃上げも良いが年金暮らしの為に、国外へ撒く、お金があれば消費税を何とかしてくれないか?減税とは何の減税なのか?ワクチンを再度、買うなんて持っての他。世界でも7回目のワクチンなどは日本だけらしい。
まあ政府には何の期待もしてはいないが、今後は未来の子供たちの為にも経済的に豊かとは行かなくてもほどほどの生活ができるような熱い【志】を持った政治家が出て来て欲しいと願うばかりである。
作者は、その憤懣を季語の【冬に入る】に託された。立派な【社会諷詠句】である。
[ 枯野風またまた増ゆる物価高 ]
[ 冬青空地上は赤字物価高 ]
[大森理恵先生の御選評]
この前のレッスンでは10句の中で1句が大特選で8句が特選句!没句が1句のみという、素晴らしい結果でした。
この作品も当日、出した季語の【冬青空】で作られたのだが空と地上の対比!青と赤の対比!が実に鮮やかである。作者のお得意な【社会諷詠句】であるが、そのままの今の日本経済を詠んでおられるが♬リズムがかなり良い。漢字が多いのにそれを感じさせないユニークなユーモアたっぷりの作品である。
これは私の選評がなくても読者の皆さまには理解できると思いますが日本経済は今、下降線⤵️⤵️⤵️底が見えない。いくら総理大臣が変わろうとも、此処までくれば庶民がhappyに暮らすのは実に難しい世の中になってきた。庶民の味方である玉子も値上がりしたまま。ガソリンの値上げも頂点に達しているので宅急便も驚きの高さ‼️夢も希望もない令和の時代を作者は上手く詠まれている。
この作者は器用である。写生句、自己投影句、社会諷詠句、感覚句と全てのジャンルに挑戦されて、とても熱心にそして、真摯に俳句と対峙されている。その姿勢には、いつも,感激させられてレッスンの日が楽しみである。
心が綺麗で優しくて思いやりのある素晴らしい人徳のある作者の【生き方】=私の指導する【俳句】と,ピッタリとマッチングして嬉しい限り。到底、まだ一年と四ヶ月目とは思えない作家さんである。勿論素敵な、特選句。
[ 冬木瓜の思ひ思ひの赤さかな ]
[大森理恵先生の御選評]
昨日のレッスンでは10句のうち一句のみ没句で殆どが特選句の優等生の作品でした。この作品は句友の真理子さんとご一緒にお誕生日の前日に六甲山のの布引ハーブ園に行った折に見つけた可愛いい冬木瓜です。その写真をお送りして今回、いくつかの席題を出しました。
【冬木瓜】は可哀想な名前ですがとても可憐で可愛いい、お花です。作者はその事を踏まえて人間と同じく【冬木瓜】にもそれぞれ、違う思いがあるというイメージを膨らませられました。
【言葉は平明に想いは深く】の一句一章ですが作者の優しい御心に触れたような安らぎのある作品です。『思ひ』のリフレインが効いていてリズム🎵もよい素直で可愛いい特選句ですね。
[ 冬木瓜の日に日に赤さ色深む ]
[大森理恵先生の御選評]
この【冬木瓜】の季語は私が11月14日に神戸の布引ハーブ園に吟行し、この冬木瓜を見つけて宿題にした。冬青空に可愛く映えた、この花は珍しく冬に赤く咲く逞しい花である。
この作品の良い箇所は先ず、中七から下五にかけての『日に日に赤さ色深む』という現在進行形の箇所である。こういった、現在進行形ingの作品により植物を愛でる様子がなんとも良い。言い切りの多い俳句の中でこのような【冬木瓜】を詠んだ数少ない可憐な写生句の一句である。
欲を言えば、此処に何かのストーリー性を含んだ内容の語彙を入れれば、特選句になるのだか・・・
[ 人恋し手の温もりや帰り花 ]
[ 喜びも哀しみもあり帰り花 ]
[ 冬青空背伸びいつぱい深呼吸 ]
[ 冬青空どこまで青し虚空まで ]
[ アルバムに昭和の色や七五三 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は作者がキャプションに書いておられるように基本、一句の中に余程でない限りカタカナは一つという、お約束があるから【昭和の色】と添削した。この語彙がふと湧いてきた時には我ながら実に、ピタリと言い得て妙だと感心した。
添削して、凄く良くなった一句である。何故か優等生の榮子さんの添削は、とても、やりやすい。これは彼女が一番、基礎がしっかり出来ているからだ。
以前は添削して良くなれば特選句にしていたが、今回からは皆さんに飴だけではなく鞭も入れての選評をさせて頂く。原句では並選句だが添削して特選句。
[ 手をつなぐ夫に勤労感謝の日 ]
[ 毎日の夫に感謝よ花八手 ]
[ 冴え返る月の高さに手を伸ばす ]
[ 敷き詰めし銀杏落葉や夫と行く ]
[ 月冴ゆる無人の駅を煌々と ]
[大森理恵先生の御選評]
この作者は、いつも格調の高い作品を作られる。
今回の兼題【冴ゆる】は〇〇冴ゆるとか冴ゆる〇〇とか例句を色々出して、徹底的に指導した。冬の季語でもこの季語はどうしても熟知して欲しかったからである。この作品での良い箇所は『月冴ゆる無人の駅』という措辞である。但し、欲を言えば、下五の『煌々と』が【月冴ゆる】の説明句になりかねない。ギリギリの処にある。
俳句は引き算の文藝であるから。然し、この作品は一句として、際立っていた。所謂、去年から作者に言ってた【立て句】でと言う作り方である。本来ならば愛鳥家の重鎮さんなので鷲、梟などの冬の鳥での特選句なら分かるが、今回は難しい【冴ゆる】での特選句。 見事な一句である。
[ 時をかけ天空かけて冬来たる ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は時間の『駆け』と場所の『駆け』とが重なりリフレインが効いていてリズムの良いダイナミックな一句である。そして上五から中七にかけての季語がいともシンプルな季語の【冬来たる】⬅️この季語で成功した作品とも言える。
格調の高い作品で後になれば、なるほど飽きない一句である。
【言葉は平明に想いは深く】ではあるが、平明だからこそ読み手には色々と想像が膨らむ。
これも【立て句】と言ってかなり高度な作り方である。文句なしの特選句。