- 原句は【淑気満つ弧を描きたる鳥一羽】でした。
- 原句は【淑気とぶ天災人災神いづこ】でした。
- 原句は【冬将軍日本消えゆく世界地図】でした。
- 原句は【淑気かな空ひろびろと鳥一羽】でした。
- 原句は【広島の牡蠣を選びし夕餉かな】でした。
- 原句は【風花や窓辺を飾る恋模様】でした。
- 原句は【縄跳びの風切る音や春隣り】でした。
- 原句は【冬木の芽燃ゆる芽もあり枯るる芽も】でした。
- 原句は【凍鶴や透きとほるまで凍ててをり】でした。
- 原句は【月白し寒雁の影黒々と】でした。
- 原句は【人恋しおお寒こ寒今日大寒】でした。
- 原句は【寒すばる真つ只中に佇ち尽くす】でした。
- 原句は【被災地へ届かぬ祈り冬ふかむ】でした。
- 原句は【踏み締めて参道に佇つ淑気かな】でした。
- 原句は【被災地にわずかな明かり冬銀河】でした。
[ すごろくの世界一周二日かな ]
[大森理恵先生の御選評]
早や二日である。(昨日は一晩中、能登半島の珠洲の方との連絡が取れなくて徹夜した。) 今年は元旦から大きな地震があり思いやられる。
さて、この作品の【双六】と【二日かな】が季語になるが今回は、その季重なりも気にならない程、ユニークな作品である。語彙の『世界一周』が何より面白い。作者にしては珍しく俳諧句としてはスペシャルな一句となった。然も『二日かな』の季語が抜群に効いている。私はこう言った個性のある発想の作品が好きだ。
【実にゐて虚に遊ぶ】の典型的な作品である。
[ 膳揃へ厨の奥の初明かり ]
[大森理恵先生の御選評]
早や三日!!!今年は元旦から能登の大地震、二日の飛行機事故と何やら、お正月気分のない不思議な三が日の年始めである。
挙げ句の季語は【初明かり】年の始めの燈りや太陽の光を言うが京都は雨だったが作者の住む千葉はどうであったのか?
作者はお正月の祝い膳をご夫婦二人の分を作られた。そして元朝にご夫婦二人で差し向かいの祝い膳大晦日には体調完全でないのに頑張って厨(キッチン)に佇たれて、おせちを作られて夜にはヘロヘロと仰ってた。その祝い膳を御主人様と二人で囲まれているご様子が具象的に表現されている。中七から下五にかけての『厨の奥の初明かり』が何とも言えず叙情的で古い日本のお正月の風景を想い出させた。作者のお得意の品格のある一句である。
この俳人は本格的に俳句を学ばれて一年と五ヶ月!新人さんなのにまるでベテランのような作品を作られる。特に文語体はお勉強をされているせいか、基礎が既に身体に染みついて来たようだ。【好きこそものの上手なれ】という言葉があるが、好き=楽しむこと‼️熱中すること‼️大谷翔平さんと同じく俳句を楽しんでおられる。この作者は本当に俳句が大好きだ。それが何より!!!それだからこそ上達も速い。最も、真理子さん佳子さんも同じくであるが・・・うちのお弟子さん達が真摯に敬虔に俳句と対峙されているのが何より嬉しい!!!
日本が誇る唯一の季語のある短詩系の文藝を残して欲しいと切に願う一句である。
[ 青空へ吸ひ込まれゆく四日かな ]
[大森理恵先生の御選評]
悲惨な日本の三が日が明けて、今日は京都も少し太陽が出てきた。人生は晴れる日、雨の日、台風の日、暑い日、寒い日!そして今回のような突然の大地震。自然の流れのように良い時と悪い時とが交互にやってくる。能登や被災者の方々のことを想うと胸が痛い。けれど人間は天災には勝てないのに地球温暖化にしたのも人間である。
この作品は前もって作者が去年のレッスン時に作られていた。まさか、この作品を作られた時には日本が、元旦からこのような悲惨なことになるなんて誰も思いもしなかった。この作品が元旦,二日、三日でなくて良かった。生きてる限り、自然と仲良くして辛いことがあっても太陽の光に吸い込まれてゆけるような気持ちになりたい。この一句の措辞『青空へ吸い込まれゆく』の気分に早くなりたいものだ。勿論、季語の【四日かな】の抜群に効いた特選句。
[ 踏み締めて玄関に佇つ淑気かな ]
[大森理恵先生の御選評]
難しい季語の【淑気】を使われた一句である。お正月の三が日の張り詰めた空気のことをいうが、『踏み締めて玄関に佇つ』の措辞が抜群に良い!
全ては玄関から始まる。その玄関を対象に持ってこられたのは褒めたいところ。然しながら少し、大人しいので私の句にあるような【青空へのぼる淑気のエレベーター】のような冒険心を持った作品にも挑んで頂きたい。難しいかもしれないが、慣れである。【俳句は実を超えた虚の文藝であるから・・・】然し、作者らしい格調のある一句である。
[ 若水をたつぷり含み筆洗ふ ]
[大森理恵先生の御選評]
早や六日ですね。今年は元旦から大地震があり二日目は飛行機事故などとあまり,おめでたくない年頭でした。季語の【若水】の抜群に効いた一句です。時々、作者が俳句を始められてまだ一年半と言うことを忘れてしまいます。季語の【若水】が抜群に効いておりますね。
榮子さん昨夜は遅くまでレッスンおつかれさまでした。(殆ど真理子さんのお話しばかりしてましたけど…笑)今日はお気をつけて病院へいらっしゃってくださいませね。私は筋肉痛と睡眠不足で昨夜のレッスンでは申し訳ない限りでした。夜中に榮子さんのLINEに纏めておきました。お時間のございます折にスマホ、お読みくださいませね。
この作品は季語の効いた素晴らしい特選句です。
[ 松明けや弧を描きたる鳥一羽 ]
[大森理恵先生の御選評]
今日は、成人の日ですね。
こう言った作品を【二句一章】と言って季語の付け方が非常に難しいです。
原句では自由に大空に弧を描いてる鳥に対して『淑気』では伸び伸びとした鳥の様子が少し消えてしまいます。但し、新聞やNHK俳句などでは、これを選句されるかもしれません。けれど、それでは、大空を自由に廻る鳥の映像の復元が少し弱いのです。なので【松明け】と添削させて頂きました。
既に人日も過ぎて普段の生活に戻りつつありますし、今年は元旦から能登の大震災、二日目から支援物資を運ぶ小松空港からの自衛隊の二機目が羽田の民間飛行機の滑走路で衝突してしまい、自衛隊員の方々は1人を除いてお亡くなりになりました。それと悲しいのは日本航空機の下部に乗せられたいたペット達が助からなかったことです。
天災、人災と続いた、お正月です!せめて大空を飛翔する鳥さん達には自由に飛び回って欲しいとの願いを込めて季語を【松明けや】とさせて頂きました。俳句は型も大切ですが、その上に『今を、生きる』という時間も大切です。なるべくなら何年経過しても普遍性のある作品を作ること!!!
昨日から北海道や北陸、能登は大雪です。被災地では、まだ見つかってない方々の発見で大変な状況ですね。地震大国の日本では、いつ、何処で地震や津波が発生するか誰にもわかりません。榮子さんの、お優しい綺麗な御心もさぞかし、お苦しいと存じます。ましてや、この寒さは我々、骨折した身には響きますよね?どうか、呉々も温かくされて、ご自愛くださいませね。
俳句=『今を精一杯生きる』ことです。榮子さんのおかげでアウトドアでお転婆でお勉強の嫌いな私も最近では又、毎晩、本を読んでいます。ありがとうございます。
添削しての特選句に頂きます。
追記:
数少ない成人の方々が今後の日本の政治に少しでも良くされる方向へと関心を持って頂けますこと心より祈るばかりです。そして昔のように平和な時代に日本が世界を圧巻した芸術、文化を継承して頂きたいです。日本の浮世絵、特に葛飾北斎から印象派のゴッホやモネは、色々と学びました。それほど、日本の文藝や文化は世界に誇る一番の宝物ですのに…。今の日本の政治家のみが
私には残念無念です。
[ 小寒や天災人災神いづこ ]
[大森理恵先生の御選評]
措辞の『天災人災神いずこ』はとてもユニークである。本当に、今年は神も仏もあったものではない。作者のリズム、リフレインが凄く良い。原句のの季語『淑気』は、飛ぶとは言わないので【小寒や】と添削したらお見事な名句となった。これも歳時記レベルの作品である。やはり句歴、一年半とは到底、思えない。措辞の豊かなリフレインの効いた名句である。
追記:画像のシマフクロウはアイヌの神様とのこと!とても素敵な神様である。大好き。
[ 被災地の野辺に一輪福寿草 ]
[ 冬帝や日本消えゆく世界地図 ]
[大森理恵先生の御選評]
凄いダイナミックな作品である。作者は日々の細やかな日常も、そして、こう言った大きな作品も詠まれる。実に心の柔らかい方である。
このままではある意味、日本が経済的にも自然災害でも消えゆく恐れは多々ある。それを一句にされた。季語の【冬将軍】が弱いので、この場合には【冬帝や】として二句一章の作品にした。こう言った句柄の大きな作品も素晴らしい。
[ 松明けて空ひろびろと鳥一羽 ]
[大森理恵先生の御選評]
この中の措辞の『鳥一羽』は先日も『弧を描く』と作句されておりました。作者は愛鳥家の重鎮さんですから余程、我々と違って鳥さんの事が気にかかるご様子で今回は『空ひろびろと』とお使いになられておりました。がやはり、前回と同じ季語の原句の『淑気』では鳥さんが(此処では鳥一羽』とありますから大鷲だと存じます。
この原句が『鷲一羽』だと『淑気』が使えますしこのくらいの季重なりはかまいませんが・・・自由に大空を飛べない感じがします。やはり原句を活かせば淑気よりも広々とした大空を飛ぶ措辞を活かしたいので【松明け】の季語を使いました。
今年は年頭からまだまだ本震、余震と続いている日本列島です。せめて大空を自由に飛翔する鳥さんには元気で精一杯、羽を拡げて飛んで欲しいと願うばかりです。作者の鳥さんへの豊かな愛情たっぷり素敵な一句ですね。
[ 恋の歌お手つきばかりの歌留多かな ]
[大森理恵先生の御選評]
榮子さんにしてはとてもユニークな作品ですね。
上五の『恋の歌』が絶妙百人一首かしら?私も子供の頃はなんとなくこれは『恋の歌』???と思いながら訳、分からずに歌留多とりしてました。大人になってから殆どが恋の歌と知り、驚きました。昔の方が、あっけらかんとして日本の文藝は良かったですね。
上五から中七そして下五にかけてのリズムの流れの良い素敵な作品ですね。季語の【歌留多とり】が抜群に効いてます。『お手つきばかり』は軽妙な語彙で思わず笑ってしまいました。素晴らしい特選句ですね。
[ 独楽まわし振り出しにもどる七日かな ]
[大森理恵先生の御選評]
早や今日は【七日】=【人日】ジンジツである。七草粥を食べる日!然も昨日が【寒の入り】=【小寒】であったので今年は忙しい。
作者の作品は『独楽まわし振り出しにもどる』とあるが、これは関東では六日迄が門松を立てておくので松の内。今日からが松が明けるのでお正月気分は捨てて平常の毎日に戻ることを直喩している。(ヤヤコシイのは関西は十四日迄なのだ。)なので我々は松の内だが作者の住む千葉では今日から松過ぎぬとなる。
今年は念頭から大地震があり、まだ、余震も続いてるので「おめでとうございます」なんて言えなかったし被災地のことや二日に飛行機事故で亡くなられた海保の方々の事を思うとお正月気分は吹っ飛んでいる。然も明日から北陸は大雪らしいので、堪らなく悲しいお正月であった。
彼女の措辞は実に見事である。独楽まわしに例えて振り出しに戻るという措辞を使われ、松が明けた事を言われている。実にお見事である。
レッスン時に感心した特選句。
[ 寒雀ひと声あげて窓の外 ]
[大森理恵先生の御選評]
さて、この季語なのだが
【寒雀】の【寒】が凄く効いている。その【寒雀】が【ひと声あげて窓の外】の措辞にも全く無駄な語彙がない。
作者のお得意な鳥の作品ではあるが最近の作者の俳句もレベルが一番高い。俳句=引き算がわかって来られたのだ。まだ一年半なのに末畏ろしい作家さんである。レッスン時にも殆どの作品に没句がない。なので少し添削すると作品も良くなるしかなりの優等生である。時折、彼女がまだ三年にも満たない俳人である事を忘れてしまう。
人としても優しくて愛情たっぷりで品格のあるIQの高い方なので、私としても指導しやすい。この句も多分、一番に投稿されてたに違いない。がLINEをあまり使われないので私には申告されなかった。スルーして本当に申し訳ないことをしてしまった。季語の【寒雀】+【ひと声あげて】+【窓の外】と映像の復元やリズムもとても良い。️
この作品はレッスンでも文句なしの特選句でした。
[ 広島の牡蠣を選びし誕生日 ]
[大森理恵先生の御選評]
榮子さん
お誕生日おめでとうございます。
以前に榮子さんより御主人様のお仕事の関係で少し広島に滞在されていたと聞いていた。
そして榮子さんは牡蠣が大好物とか? なので原句の下五を【誕生日】とした。原句のままだと説明句になるからだ。 私は牡蠣が大好きなので朝や昼、お構いなしに食べるが普通は夕餉ですから。
作者の作品は少し添削すると、とても良い作品に変化してしまう。それは原句が良いからだ。句材が良いと添削もしやすい。
これは勿論、特選句です。
[ 風花の窓辺の外や過去の恋 ]
[ 縄跳びの風切る音や春を待つ ]
[大森理恵先生の御選評]
明るい作品である。
元旦早々、日本は大きな天災に遭遇したが、この一句により未来の子供たちへの『希望』と『夢』を見せて頂いた。
原句でも悪くはないのだがこう言う具象的な措辞の作品の場合にはキッパリと『春を待つ』と言葉は平明にした方が尚、作品が活きる。
始めの『縄跳び』から始まり中七の『風切る音や』も実に素晴らしい。こう言った作品は沈んだ心が慰められる。俳句の持つ大きなパワーである。作者は私よりも自由にあちこちには出かけられない。が、その日常の陰を陽に転換されて作品に描かれている【生き方】は素晴らしい。とても一年半とは思えない作風である。人生の先輩として見習わねばならない【生き方】である。
それに加えて最近、『古今和歌集』も読まれているそうなので文語体の間違いが殆どない。実は俳句は基礎を身につけるのにかなりの時間がかかる。慣れぬ文語体は身体で覚えるしかないのだ。
作者は相変わらず、格調の高い発句(立て句)=連句の一番目に来る作品のことであるが、これが御本人は理解されてはいないが出来ている。
早くも『待春』の季語が出てきた。時の流れを感じる『風切る音や』で将来の子供たちへの未来を夢みる素敵な特選句である。
[ 冬木の芽燃ゆる芽もあり朽ちる芽も ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の方が発想的には良いのですが【冬木の芽】と【枯るる芽】が両方とも強い季語なので季語を覚えて頂きたくて【朽ちる芽】としました。
俳句はバランスの文藝です。陰と陽のバランスが大切なのです。なので【燃ゆる芽】に対しての【朽ちる芽】と直させて頂きました。
【枯れる】=冬の大きな季語になります。これが俳句を学ばれて10年経ってればわかって作句されてると思い、良しとするのですがまだ作者は一年半なので直させて頂きました。
京都は朝から冬の雨☔です。こんな日は大事故に遭遇して背中の骨5本骨折、両膝骨折した私には痛みや頭痛が激しく、とても辛いです。なので作者の事を考えますと、もっとお辛いのではないかと思いを馳せてしまいます。作者は超お上品で格調の高い品格のある方ですから私が良く使う「ググって下さい」「パチって下さい」と言う意味を理解されずに言葉を指導する身なのに非常に悩みました。悪い言葉はなるべく使わないようにしてるのですが、いつの間にか若者用語が身に付いてしまい品格のある作者にガラ悪い言葉を教えてしまいました。
けれど真剣に俳句と対峙されて学ばれるお姿は何より私自身の励みなので作者には基礎だけはしっかりと身に付けて欲しいと願うばかりです。作者からは【生き方】に於いて、いつも凛とされていて、ブレない生き方、そして、ご夫婦が仲良しで一人身の私は見習う事ばかりです。
榮子さん句会の10句投句お疲れさまでした。それにも増してや今夜のレッスンに10句の作句は大変だと存じますが、ご無理なきようによろしくお願い申し上げます。
挙句は一応作者の発想が良いので秀逸作品とさせていただきます。
[ 凍鶴の祈りのごときシルエット]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は前回のレッスンにて一番に特選句に頂きました。愛鳥家さんの作者らしい、とても素晴らしい作品ですね。
私も凍鶴は吟行でわざわざ見に行きました。凛として優雅で美しく惚れ惚れしました。
この作品の中七からの措辞『祈りのごときシルエット』まさに気品があり凍鶴を象徴した凄い格調の高い一句です。
凍鶴の『祈りのごとき』と言う比喩ですね。この世の汚れを全て跳ね除けるように凍鶴の美しい佇ち姿が画像がなくても想像の膨らむ最高の一句です。
引き算の効いた素晴らしい特選句ですね。
[ 冬あたたかアンデルセンに思ひ馳せ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品も第4回句会の【人】に選びました。季語の【冬あたたか】が効いてますね。【あたたか】春の季語。それに【冬】を付けて季語としました。
アンデルセン童話には『みにくいあひるの子』『人魚姫』『親指姫』『はだかの王様』『マッチ売りの少女』など、懐かしい、お話しが沢山、集録されて小学生時代にタイムトリップ致しました。
この作品は二句一章といって、一旦季語と措辞が離れています‼️少し難しい技法です。『凍鶴』『寒雁』だけではなくて、こう言った作品も作られる作者の幅の広さに魅力を感じます。大好きな特選句です。
[ 凍鶴の透きとほるまで凍ててをり ]
[大森理恵先生の御選評]
こう言った作品を感覚句と言う。季語が二つ!【凍鶴】&【凍ててをり】これは普通の素人俳人では真似できない。作者の感性で作句されているからである。【鶴】自体が冬の貴重な季語。気高くて優雅で気品がある。日本でも【鶴】は長寿のシンボルとか折り鶴とかして古来の日本の象徴とされてきた。貴重な貴重な鳥である。その【凍鶴】を素晴らしい措辞『透きとほるまで』と比喩して下五に再度『凍ててをり』と止められた。
この作品は、読者の感性により色々な読み方をして頂きたい。それを【俳句の一人歩き】と言う。作者の作品は凄く哲学的な要素も含まれているから常人の俳人では、なかなか理解し難い。が私はこの作品が大好きである。何より、このような【凍鶴】の作品を見たことがないから・・・類想がないのが何よりだ。この作品を句会に出して特選に選ばらない選者はアホである。ピュアーで透明感のある、それこそ、透き通った超特選句。
[ 寒雁のこゑこぼるるや遠き峰]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は明らかに作者と分かる作品。これを【立て句】と言って連歌の発句になる一句だ。
始めの『寒雁のこゑ』そして上手なのが『こぼるるや』である。(雁の声はお芝居やTVでしか聞いたことなくて…)下五の着地の『遠き峰』までストーリーがある流れるような作品。
先日、作者に【寂寥感】の話しをしたのだか、この作品もも寂寥感溢れるダイナミックな一句。寂寥感の中での恋とは【孤】+【悲】こひのことである。【人】の特選句である。
[ 啼けるだけ啼けよ寒雁空広し ]
[大森理恵先生の御選評]
句会は無記名なので作者分からずですが、この作品の作者は直ぐにわかりました。実はこの作品を【天】にするか、どうか、最後まで悩んだ作品でした。あまりにも格調が高い【立て句】だからです。これは素人さんのレベルでは、なかなか作句できません。
先ず上五からの問いかけの『啼けるだけ啼けよ』という能登の被災地にかけた大胆な愛に溢れた大きな器の語彙に惹かれました。季語の【寒雁】がとても効いています。
今回の句会では大きく【寒】が席題でした。始めは⑧文字から始まり中七からは⑨文字で終わります。これを破調のリズムといって五・七・五ではないですが巧みな高等技術です。こういった細かな技術は相当な腕前です。勿論、引き算の文藝を心得ておられて全く言葉に無駄がありません。
大空を啼いて羽ばたく【雁】を見て、羨ましくも高貴さを感じた作品です。作者独特の気品のある格調高いダイナミックな特選句です。
[ 月淡く寒雁の影黒々と ]
[大森理恵先生の御選評]
キャプションで作者が書いてくださってる通りである。
【月】が秋の強い季語。なので原句の【月白し】は微妙ではあるが【月】の季語を色で使いたい。白ではなくて黄色で…‼️
措辞の『寒雁の影黒々と』はどうしても使いたい措辞であるし私は措辞の真っ黒に対して色の黄色で対峙させた。 黄色vs黒の組み合わせと月vs雁である。
此処まで、早く作者がLevel upして来られるとは一年半前には思いもしなかった。 そして此処まで俳句にのめり込まれたことも。嬉しい限りである‼️ ハッキリした素晴らしい作家の特選句である。
[ こうこうと白鳥のこゑ本埜村 ]
[ 冬の梅一輪咲きてまた一輪 ]
[ 人恋しおお寒こ寒くず湯かな ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の下五の【今日大寒】では中七の措辞の【おお寒小寒】が活かされてきません。
とても良い始めの【人恋し】に対しての措辞なんです。下五でそれを具象的に【くず湯かな】として止めました。
【寒】も【くず湯】も両方とも冬の季語になりますが季重なりを使って良い季語の強弱と言います。 ですが習われ上手な作者ですからレッスンに とても緊張感が走り、実際の句会で指導しているピリピリした空気感があり、いつも心地よく指導させて頂いております。なのでこちらも、やる気スイッチが ONになり良い語彙がふと、湧いてまいります。全てのお稽古ごとには【習われ上手】というのが一番、大切ですね。
添削した句は特選句です。
[ 寒の月真つ只中に佇ち尽くす ]
[ 被災地へ届かぬ祈り月冴ゆる ]
[大森理恵先生の御選評]
原句も悪くはないのですが上五から下五にかけて少し暗いので(笑)凛とした冬の月の元気カラーの黄色を入れてアクセントにしました。
作者は昨日も【凍鶴の祈りのごときシルエット】そして今日も【被災地へ届かぬ祈り】と、ずっとずっと被災者の多く出た最悪の地震を風化させないように〜。そして能登地方の方々のことを思いやっての作品を連続して作られています。
その【生き方】こそ大切です。【俳句】です。
我々は被災者に対して何もできませんが、やはり今は祈ることだけです。今日もあちらは大雪とのこと・・・心配でなりません。自衛隊員の方々必死の救助生活の一日のお給料の低さにも驚きました。
名古屋工業大学は以前の東北地震からの研究を重ねて能登地震が起きて直ぐに雪の中でも耐える、仮設住宅の空気入れて膨らむテントのお家そして避難所の中では個人のプライベートを守る紙のお家を110万個ずつ瞬時に、お送りされたそうです。
にも関わりませず日本の政治は、今やらなければいけない事をしないで、派閥がどうのこうのとか???違うでしよ!今は一致団結して被災者でしよ!!! かなり世界からも遅れています。腹が立ちます!!! お優しくて御心の深い作者の想いが少しでも被災地に届きますように。お月さまなら世界中、何処からでも見えますから【月冴ゆる】と冬の季語を、いれて特選句です。
[ 踏み締めて玄関に佇つ淑気かな ]
[大森理恵先生の御選評]
難しい季語の【淑気】を使われた一句である。お正月の三が日の張り詰めた空気のことをいうが、『踏み締めて玄関に佇つ』の措辞が抜群に良い!全ては玄関から始まる。その玄関を対象に持ってこられたのは褒めたいところ。
然しながら少し、大人しいので私の句にあるような【青空へのぼる淑気のエレベーター】のような冒険心を持った作品にも挑んで頂きたい。難しいかもしれないが、慣れである。【俳句は実を超えた虚の文藝であるから】然し、作者らしい格調のある一句である。
[ 恩師より長き文あり冬あたたか]
[大森理恵先生の御選評]
京都は今朝は昨日に比べて
とても暖かくて晴れています。
【冬あたたか】及び
【冬青空】は私が
作った季語です。
元々あったようなのですが
表には、あまり出て来なかったのです。なので歳時記に無理矢理、入れました。私の作品には【冬青空】&【冬あたたか】が沢山あります。
作者のこの作品も下五の六文字の【冬あたたか】を使っておられます。レッスンの時にヒアリングしたら、お世話になった先生から長文のお手紙を頂かれたそうです。なので【実】の作品【冬あたたか】の季語の効いた佳句ですね。
[ 師の心学びし朝や小正月 ]
[大森理恵先生の御選評]
今日は【薮入り】の日です。【薮入り】なんて言葉は昭和ですから・・・俳人か昭和の方々しかわかりませんよね。
挙句は作者の昨日のお誕生日の即吟即興挨拶句である。
この素敵な豪華なアレンジメントは句友の萩原真理子さんの、お嬢様のフラワーデザイナーの萩原紫野先生に去年から、お願いしておいた。一昨年も同じように、お願いしたが、ギリギリでは、活きたお花が、なかなか揃わなかったらしくて…困らせてしまった。が榮子さんは大喜びして下さいましたから今年も、同じく紫野先生にお願いした。
榮子さんのイメージは上品で格調の高い紫でしたからこの色メインでお願いしました。 榮子さんのお誕生日は昨日の【小正月】【女正月】【花正月】の1月15日。 私は、お弟子さんの皆さま方から教わることが多くて、こんな挨拶句は恐縮するばかり・・・ が作者は珍しく即吟挨拶句を作って下さいました。その事が何より嬉しい。
俳句も映えますがいざ、自分の事となると選評が全く書けない(笑)が即吟挨拶句としては特選句である。
追記 榮子さん&句友の皆さまへ 年齢は重ねていても、かなり、幼稚な私ですが今後とも、末永く、よろしくお願い申し上げます。