- 原句は【過ぎ去りし日々の深さよ雛かな】でした。
- 原句は【細き雨木の芽草の芽生き生きと】でした。
- 原句は【ガスの火の青白き色春寒し】でした。
- 原句は【麦青む友旅立ちぬ風ともに】でした。
- 原句は【風かなでらららるんるん春の夢】でした。
- 原句は【風を切りふらふこ天に届きたる】でした。
- 原句は【うぐひすやたどたどしき声雨の朝】でした。
- 原句は【春の風足取り軽くらんらんらん】でした。
- 原句は【しやぼん玉夢の色追ふ幼の手】でした。
[ 過ぎ去りし日々の重さよ雛かな ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は上五と下五の語彙は抜群に良い!古いお雛様は、それぞれのお家の歴史をずっと見てきているから…。なので着地の【雛かな】ヒイナカナとされたのは凄く良い!!!中七の『深さよ』は並の俳人であればこれで良しとするが作者には、もう一歩突っ込んで『重さ』とさせて頂いた。何故ならば私の推察では作者の御両家ともに旧家のイメージが強いからだ。これが万が一、違っていても【深さ】と【重さ】ではかなり想いがわかれると思うが、うちの西陣では享保の時代からのお雛様があった。なので、その歴史の深さをより深い、【重さ】とした。これは、それぞれの家により違うかもしれない!ともかく作者の【過ぎ去りし日々の深さよ雛かな】はとても素晴らしい一句であることには違いない。
★追記榮子さん申し訳ございません。あの日2月29日のレッスンは例の件を聞いた直後で私は人生初の、かなりの動揺とショックで、気が動転しておりました。なので私見が入りました。今、原句を,見たら榮子さんであれば【深さ】でも良いように思いました。重ねてお詫び申し上げます️
★追記の追記昨日、ある方からご質問があった。【深さ】と【重さ】の違いについて。【深さ】とは旧家でも因縁の深い、色々な事が複雑にある家、例えば江戸時代から、続くうちの西陣の実家や富山の旧家の角川家など。【重さ】とは同じ旧家でも宮家やお公家さん、貴族などの、品格の重い家系を言います。
[ 森のこゑ風のささやき春の詩 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は添削なし!!!まるで童話のような一句である。リズムも軽くて令和にピッタリの新鮮さがある。
季語の【春の詩】がとてもエッジの効いた作品で驚いた。今朝、皆さんに『俳句は上手く作らないで日常の感性と発見です。』と、ご指導させて頂いたばかり。作者は私より先輩なのだが作品が若い。このリズムは誰も真似出来ない。
レッスンの初見で見た時に驚いた。平仮名が多いのは実にお見事。【言葉は平明に想いは深く】も再度、今朝、話したが、そのまんまの一句。️作者は習われ上手なのでいつも指導の時間が超過する。うちのお弟子さんの皆さんに言えることであるが、二年に満たないのに此処までの作品が出来るのには感心するばかりである。師弟関係はキャッチボール。投げた球を受けて貰わないと指導し甲斐がないが私は幸せである。これも句集に残すべき名句。
[ 涅槃かな木の芽草の芽生き生きと ]
[大森理恵先生の御選評]
作者が書かれておられますように、原句の原句が良かったです。
【涅槃】の季語は以前にも誰かの箇所に書き込みしましたがとても難しいです。今回、推敲されて【風光る】にされましたがやはり二句一章を使われるならば陰と陽のバランスが大切です。
措辞の『木の芽草の芽生き生きと』の語彙のタッチが柔らかいので季語は、やはり【涅槃】が良かったですね。此処はキャプションにて作者が詳しく書いておられますが、今回は失敗とは言いません。これは自選の問題で初心者は、なかなか自選が出来なくて昨日も佳子さんのレッスンにて二句ほど、原句が良かった作品がありました。やはり俳人に、とりまして一番、難しいのは選句です。句会慣れしてると即座に選句もしないといけませんがオンラインでは、その選句が非常に難しいです。
先ずは自選と優れた作品を写俳したり暗記したりして学ぶこと以外に選句眼は養えません。が、この作品は原句が良かったから特選句に頂きます。
[ 風光る雲の向かふに夢の国 ]
[大森理恵先生の御選評]
京都の今日は、余寒の小雨の寒い朝です。この寒さを乗り越えたら直ぐに桜が咲いて待ちに待った春ですね。
『風光る』も春の強い季語です。この作品の良い箇所は中七からの措辞の『雲の向かふに夢の国』です。寒さの残る三月初旬ですがやはり、この句のように本格的な春や『夢の国』という希望を持つことが生きる上で大切ですね。年齢重ねる毎に一日一日の大切さをヒシヒシと感じますが、こうして俳句にして残しておける幸せは、かけがえのない希望です。
俳句は、上手いとか下手とか全く関係ないです。やはりその方、それぞれの【生き方】が作品に出ますね。榮子さんの夢のある前向きな特選句です。
[ 行く鴨や沼に一艘渡し舟 ]
[ 鳥雲や手に歳時記を拡げつつ ]
[大森理恵先生の御選評]
この【鳥雲に】の季語の使い方は非常に難しい。私が六歳の頃に大野林火先生から「理恵ちゃんは、どんな俳句が好きなの?」って聞かれて思わず中村草田男氏の【少年の見遣るは少女鳥雲に】とお答えした。この作品は六歳の私にでも映像の復元が想像できて始めて難しい【見遣る】=見守るという意味を理解した。(以来、少年は少女を見守るのが当たり前と思っていたが、超のつくお転婆の私は、いつもイジメられている少年を守って来たので現実は厳しい)その思い出があるので、この【鳥雲に】の季語は六歳の頃に一番に覚えた。
春、北方へ帰る渡り鳥の群れが雲間はるかに見えなくなる事を【鳥雲に入る】➡️省略して【鳥雲に】とした。作者の作品は完全な【二句一章】である。【二句一章】とは季語と措辞が全く違うモノの取り合わせのことを言う。これは非常に難しい。当たれば、GOODなのだか、外れば、超BAD。
我々は10年は季語をみっちり、学ぶ【一句一章】を身体に入れてから【二句一章】へと言われた。が、私は大好きな作品が【二句一章】の中村草田男氏の作品であった為に【二句一章】の作品がとても好きであった。今回は【鳥雲に】と【歳時記】これは多分、作者が愛鳥家さんであると共に私の六歳から大好きであった作品からのイマジネーションであると思うが…。ともかくこの難しい作品は作者も自句自解できないかも知れないが間違いなく名句であり、特選句である。
[ 春寒やガスの火種の青白く ]
[大森理恵先生の御選評]
これは原句の感性がとても良い。【感覚句】と言う。️原句のままでも良かったのであるが、季語の【春寒】を、どうしても上五に持って来てリズムを整えたかった。なので【春寒や】と切れ字を入れた。これは、かなり高度な添削でも指導でもある。作者が、まだ一年と八ヶ月に突入したばかりなのに、此処まで求めるのは非常に難解な問題であるが・・・頭の良い作者なら理解して下さると思って、語彙の順番を変えた。この語彙の順番を変えるのは非常に難しい作業である。
私も六歳から俳句を学んでいるが、始めは、出来なかった。私の場合、六歳で生まれて始めて作った作品が席題の【復活祭】であったから【名をつけてひよこ生まるる復活祭】そして次の席題が【巴里祭パリーサイ】なので【ビー玉に海の色ある巴里祭】こう言う作り方だと順番を変えることが出来なかった!けれど色々と学んでいく過程で語順の大切さを身に沁みて理解して行った。
今回の作品は素晴らしい感性の感覚作品。この日常の感性と発見に対して特選句である感覚句は私の得意とするジャンルです。【ひとりの灯】は殆ど感覚句なので難解です。あとは橋本多佳子を合本歳時記から探してお読みくださいませ。真理子さんが【春雷】の中で橋本多佳子の【春雷のあとの奈落へ寝返りす】が一番好きと仰っていました。彼女は大森理恵・橋本多佳子の感性句が大好きなので、好きな俳人らしいです。今日は雨ですが若狭の【お水取り】奈良、東大寺の【修二会】です。これが済んでお彼岸が済まないと京都には本格的な春は来ません。どうかお身体冷えないように暖かくされて、ご自愛下さいませね。
[ うたた寝や春はあけぼの夢のなか ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品も前回のレッスンの初見で特選句に頂きました。【春の詩】と同じようにリズムが軽いのです。季語の【春はあけぼの】は清少納言の【枕草子】よりですが、これを、俳句に使うのはかなり難易度の高い俳人です。
作者が身体の痛みを少しでも俳句を学ぶことにより解消されることは私には良く理解できます。私も俳句指導したり選評、選句、作句によりこれまで、随分、現実の下世話な世界から逃げてこられたし、又、怪我の痛みもすっ飛ばしてきました。それを【陰】を【陽】に変える俳句での大切な二極化のバランス!!大森理恵の俳句哲学です!!俳句により人生の危機をどれだけ救われて来たか…このような特にリズムの軽い作品は他の類想がないので、とても新鮮ですね。特に『うたた寝や』の上五もユニークで良いです。軽いタッチの無駄な語彙のない特選句です。
[ 青麦や友旅立ちぬ風の中 ]
[大森理恵先生の御選評]
【青麦】は【麦青む】とも言って丁度、今頃の田園風景を言う。
青麦の伸びた中に雲雀が巣を作り雛を育み、揚雲雀として空高く舞い上がり囀りの如何にも長閑な 春の景色である。が作者はこの【麦青む】と言う結構、難しい春の季語を使って【友旅立ちぬ風とともに】という措辞を使われて一句にされた。
が原句では、少し字余りになりリズムが良くないので、添削した。【青麦や友旅立ちぬ風の中】としたことで映像の復元がハッキリと見えるし自己投影もでる。そして何より、【青麦】の季語が活かされる!
まだ、青い田園風景の中で友が旅立つ、一種のストーリーが、まるで映画のワンシーンのようだ。
添削しての特選句で句集に入れる名句でもある。
[ 雉啼くや遠き峰々ゆらゆらと ]
[大森理恵先生の御選評]
此処での季語は【雉】キジ、ともキザスとも読む。鳥の重鎮らしい一句である。
近くの雉が啼いているのと遠方の峰々の遠近感が素敵な一句。
原句の下五の【かすみたる】の霞=春の強い季語。なので、レッスンの折にご本人に推敲してもらった。
とても良い語彙を使って来られた。遠くの山々の景色が朧に霞んで見えるのが【ゆらゆらと】でより一層、具象化した。ちなみに【朧】【霞】も春の強い季語である。
ご自分で推敲された雉の声と遠くの景色の見える映像の復元化した特選句。
[ 風吹くやるんるんらんらん春の夢 ]
[ 風切るやふらここ天に駆け登る ]
[ まなざしの麗し人よ春ゆふべ ]
[ うぐひすや声まだ若き雨の朝 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の中七の『たどたどしき』はあまりにもナマの語彙でした。作者にお聞きしたら「ケキョーケキョー」とまだまだ幼い鶯の声でした。濁音とリズムの点で『若き声』と添削致しました。けれど、下五の『雨の朝』の鶯の声が、いつもと違うのは流石、鳥の重鎮さんの微妙な発見ですね。
深い愛には感動します。ありがとうございます。うちは、まだまだ鳥さんの啼き声が聞こえないです。鶯への愛情溢れる一句には大感動しました。
[ ペリカンの足取り軽く春とどく ]
[大森理恵先生の御選評]
【ペリカンの足取り軽く春とどく】
京都は昨夜の真夜中の2時頃に春の雪が降って今朝も寒い一日です。
鳥の重鎮さんらしい作品ですね。これは添削なしの原句のまんまです。
この一句で良いのは下五の【春とどく】です。此処は【春うごく】でも良いのですが作者は敢えて【春とどく】にされています。これにより、リズムが良くなり、句が軽やかになりますね。
作者らしい素敵な特選句です。
[ 小さき鳥小さき声して四温かな ]
[ 冴え返る風のささやき朝の歌 ]
[ 木漏れ日の光あつめて雪割草 ]
[ 風光る足取り軽くらんらんらん ]
[大森理恵先生の御選評]
作者の措辞は見事に軽やかなリズムで、とても良い!が季語の【春風】だと中七からの措辞が活きて来ない。なのでここでは少し難しい季語の【風光る】を持ってきた。
この季語は天文の季語であるが風が本当に光っているのではなくて光っているような心境になる春の穏やかな風をいう。春の日差しを浴びて物の芽がキラキラと光る…そういうような風を想像して頂きたい。
佳子さんの投稿でも書きましたが、季語は難しい。俳句の殆どを占めるのは季語であるから…。皆さまは、まだまだ二年にも満たない新人さんですから季語から先に、しっかりと沢山の季語を学んで行きましようね。
頭の中に多くの季語を入れたら、俳句は作り易いと思いますよ。今は基礎の時代!一番、大変な、時です。焦らず、ゆっくりと時期を待ちましようね。
いつも言うが原句が良いから添削できる。原句が良くないと没句になる。作者は優等生なので殆どの作品に、そんなに強いミスがない!それが何より指導し易い。
添削により、措辞の軽やかな【足取り軽くらんらんらん】の擬態語のリフレインも活かされて特選句。
[ しゃぼん玉夢の色追ふ手のありて ]
[大森理恵先生の御選評]
春の季語の【しやぼん玉】に対して原句は【幼の手】であったが、これは、少し説明句になるので【しやぼん玉夢の色追ふ手のありて】と添削した。
しやぼん玉の一つ一つはキラキラと光りとても綺麗だ。まるで一つ一つに夢を持って飛んで行くように!!!
作者らしい、とても優しい小さな発見のある、新鮮で素敵な一句である。添削した作品を特選句にする。