- 原句は、【緑なす森に集ひし鳥のこゑ】でした。
- 原句は、【夕まぐれ青田をわたる風模様】でした。
- 原句は、【山翡翠や清き流れを飛んで行く】でした。
- 原句は、【田は緑雨を降らすや赤翡翠】でした。
- 原句は、【十薬の花の白さや朝の陽に】でした。
- 原句は、【青梅雨やとほくに鳥のこゑのして】でした。
- 原句は、【夢の中茅の輪くぐりて父の手と】でした。
- 原句は、【新茶の香居間いっぱいに色染めて】でした。
- 原句は、【色とりどり紫陽花描く未来かな】でした。
[ 新樹かな山あり森あり林あり ]
[大森理恵先生の御選評]
おはようございます。忘れもしません!2024年5月23日木曜日、午後8時私のiPhoneのLINEに榮子さんから多くの作品が書き込みしてあった。持病の、お辛い日々の中で突然の帯状疱疹のお熱、痛み、痒みに酷く悩まされラストのレッスンは4月末であった。私は毎日、毎日、お向かいの晴明神社に人の居ない頃を見計らって日参してお百度詣りをしていた!この一句を見た時、イヤ全体の作品を見た時にボロ泣きしたのは忘れてない。
特に新樹の素敵な頃であった。この作品の素晴らしいのは上五に季語を【かな】の切れ字を入れていったん止めてから中七からのリフレインである。【山】【森】【林】という語彙を使って【言葉は平明に想いは深く】を全て、この一句に込められた。とてもリズムの良い作品である。
彼女の特筆すべき一句の特徴は流れるような、絵本に出てくるような俳句では最も大切な【リズム】である。①リズム②映像の復元③自己投影以上の三つを私は特に基礎の文語体と共に大切にしている。
いつも、あまり没句がないのが作者の特徴である。毎回レッスンの折に私の指導中の言葉をひと言も漏らさずメモされている。実に習われ上手なお弟子さんの一人であるからこそ、逆境の中でもこのような名句が生まれたのだ。
榮子さんありがとうございます。私が貴女から生きることの喜びを頂きましたこの一句を忘れない。【俳句】=【生き方】を見せて下さいました俯瞰的な引き算の特選句。️
[ 胸いつぱい緑の風を深呼吸 ]
[大森理恵先生の御選評]
此処での季語は『緑』と言う夏の季語。この一句より苦しんだ病状も少しずつ、少しずつ回復して思いっきり深呼吸して此の世に生かされている自然に感謝しておられる気持ちが、ひしひしと伝わってくる。難しい言葉は何もない【言葉は平明に想いは深く】である。
ちなみに私はいつも作者には大野林火師のお育てになった大先輩の野沢節子氏を例えに出している。彼女はフェリス女学院に入学して途端に脊椎カリエスを発病して、その後、この病気により人生が大きく変わる事になる。苦しみの最中生涯、慕い続けられた大野林火師との出逢いがあった。彼女は私の大先輩でもある。辛く痛みの続く毎日を俳句と100%対峙され乗り超えられた才女である。
野沢節子氏の句にも【緑さす漬物桶にひざまづく】という厨(クリヤ)俳句がある。私は榮子さんにも病いに負けず野沢節子氏のように嫋やかに芯の強い、俳句をどんどん作ってほしいと心より願っている。俳句を学ぶ事により逆境を乗り超えて身体の痛みは辛くても「生きて来て良かった!」と・・・心から思える日が必ず来ると願って止まない。
榮子さんは、とても純粋でIQも高く、慈愛に溢れた品格の方であり一流俳人としての稀有な才能の持ち主と信じている。誰もが理解できる清々しい清冽な名句。
[ 雲の峰ゆつたり浮かぶ印旛沼 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は帯状疱疹の痛みや痒み、そしてまだまだ痺れなどが残っている折の一句です。が、それをこちらが忘れてしまうようなダイナミックな作品ですね。
季語の『雲の峰』から『ゆつたり浮かぶ』そして下五の地名の着地の『印旛沼』までの流れが実にお見事です。やはり彼女特有の格調の高い、どっしりとした作品です。
作者は俳句を始められて、まだ二年足らずなのにもう、文語の点では治すところが全くございません。早くも基礎が身体に染み付いているご様子です。【映像の復元】がずば抜けて効いている地名の効いていて堂々とした稀にみる風格のある一句です。これこそ、飯田蛇笏風の男性的な特選句です。
[ 万緑を映しひと粒雨のあと ]
[大森理恵先生の御選評]
いよいよ、九州が梅雨入りしたとのこと。それでも例年よりも少し遅れているそうです。
この原句の【新緑】は5月の若葉の頃を言います。なので既に、もう6月の中旬ともなりますと【深緑】=【万緑】とも言います。その為に添削させて頂きました。然しながら原句も、とても発想が細やかで豊かです。雨後の光の粒を見ますと鮮やかに樹々の緑が、キラキラと映ってる様子がとても美しいですね。
作者は、全ての事柄を丁寧にご覧になり基礎として大切な【一句一章】をきちんと学ばれております。【一句一章】とは季語を深く追求して学ぶことです。我々はこのお勉強を3年してから【二句一章】という季語+措辞の違う12文字を使うように学びました。が、うちのお弟子さん達はスピードが早くて既に【二句一章】を作句されております。この【二句一章】は取り合わせが成功すれば良いのですが、ややもすると【三段切れ】と言う大失敗になるおそれがあります。が作者は、私の言うことを忠実に学んで下さっておりますので、その失敗は一切ないです。
繊細な美しいリズムの良い一句で、まるで日本画を見ているようです。添削しての特選句です。︎ちなみに梅雨の樹々の碧さを【青梅雨】と言います。
[ 沙羅の花けふ一日の命かな ]
[大森理恵先生の御選評]
季語は【沙羅の花】素敵な一句ですね。
添削したのは原句の『今日』➡『けふ』のみを古語に直しただけです。習われ上手のIQの高い慈愛に満ち溢れた榮子さんらしい作品 !!! 美しい【沙羅の花】を思い浮かべて、今、この時を一生懸命、生かされてる喜びを感謝して頑張ります。
何か、この作品は今の私の心境にピタリとハマって大好きな特選句です。榮子さんありがとうございます。
[ まどろみし頬にひとひら柿若葉 ]
[大森理恵先生の御選評]
この季語の【柿若葉】がとても効いていて美しい一句ですね。
【俳句】=【作品】=【生き方】が全て出てまいります。榮子さんは、とてもお優しく慈愛に満ち溢れた理想の女性です。この上五の『まどろみし』がなんとも言えず優しい深緑の光に包まれて、ウトウトとされている、ご様子が見えてまいりますね。そこに『頬にひとひら柿若葉』と、一枚の柿若葉が夏の風にそよいで、落ちてきている風景が何とも言えず、美しく【映像の復元】が抜群に効いております。
彼女は八月で丁度二年になります。が、まるで二十年間、ビッチリと俳句を学んでこられたような作品を作られていつも驚くばかりです。然も没句が殆どなくて少し添削すれば必ず、特選句になると言う、習われ上手な、お弟子さんです。私は彼女とのレッスンの時間がいつもいつも楽しみです。
この作品は勿論、完璧な特選句です。 追記 さすが御写真もセンス抜群でバッチリですね。
[ 青葉雨白き花房ゆらゆらと ]
[大森理恵先生の御選評]
なかなか梅雨に入らず京都は曇りの今朝です。
この作品は全く添削の必要なしなのですが時期的に【若葉】=新緑の頃で五月になります。ですから六月に入り【若葉】➡️【青葉】と治しました。【青葉雨】でしたら、三夏(初夏・仲夏・晩夏)全ての夏の雨に使える便利な季語です。が以前にも話しましたが梅雨の場合のみ【青梅雨】と言います。
今回の作者の作品は俳句で最も大切な①【リズム】②【映像の復元】の効いた特選句です。️個人レッスンの折に作者は10句程、提出されますが、どの句も少しの添削で完成句となります。️初回の一年十カ月前からです。やはり優等生のお弟子さんですから、とても御指導する時間が楽しみです。
相変わらず御写真と俳句がマッチしていて素敵ですね。
[ 白さぎの一羽翔ちたる田はみどり ]
[大森理恵先生の御選評]
綺麗な白鷺ですね !!!
この作品では色の対比の素晴らしさです !!!
白対緑の惚れ惚れするような一句 !!!
添削したのは一字のみ。平仮名の『たつ』→『翔つ』と大谷翔平さんの飛翔の『翔』これは飛び立つの意味がありますから、美しい白鷺に使いました。
さすが、鳥の重鎮さんの句はダイナミックで最高ですね !!! 気分爽快な一句にため息が出ます。文句なしの特選句ですね。
[ 沙羅双樹ひとつふたつや観音寺 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の季語は
【沙羅双樹】お釈迦様が最期、この樹の下で安らかに入滅されたこと !!! そして日本では平家物語の『祇園精舎の鐘の声諸行無常の響きあり。盛者必滅の理(ことわり)をあらわす。奢れる者、久しからず・・』で有名ですね。
ご聡明な作者はその事を全て踏まえて下五に地名の『観音寺』を持って来られました。これがピタリとハマっております!
俳句は【引き算の文藝】ですから不要なモノは抜き取りましたが。流れるリズムと言い、沙羅双樹を季語に使われた事と言い、着地の『観音寺』と言い少しの添削で大成功の特選句です。
[ 万緑の森に集ひし鳥のこゑ ]
[大森理恵先生の御選評]
京都は昨日とは打って変わって晴れています。どんどん暑くなりそうな予感。
原句の『緑なす』、確かに『緑』は夏の季語です。が次の語彙が、『森に集ひし』になりますとこれは、やはり大きな『万緑』でないと季語が活きてまいりません。
俳句は、とても『奥の深い文藝』です。繊細でありダイナミックであり知識と体験が豊富でありそれでいて対象の【季語】を慈愛溢れた想いで愛でなければいけません。そう、やはりこの『俳句』こそ【人生の生き方】が出るのです。なので、榮子さんのような知的で品格のある方にはピッタリの文藝だと思います。
この句のポイントはやはり下五の『鳥のこゑ』でしょうね。️此処に音が来て一句の拡がりが大きくなります。さすが、鳥の重鎮さん !!! 緑なす→️万緑に変えたのみですが、以降の『森に集ひし鳥のこゑ』が見事に功を果たせます。️これを俳句の世界では【一字違いが大違い】と言います。
榮子さん、私は最近、榮子さんの影響で鳥さんを愛でるようになりました。が、こちらで見られるのは鴨川の鴨くらいなのです。赤翡翠(アカカワセミ)と書いて『アカショウビン』と読むとか、普段、季語としては理解していたつもりなのですが・・学ぶことが沢山あり日々、ドキドキしています !!!
これからは秋にかけて榮子さんの大好きな鴫にも出逢います。とても楽しみな日々になりました。【鳥のこゑ】から横道に逸れてしまいましたが、榮子さんのような、ご立派な人格者と、俳人として深く繋がることが出来て66年間、俳句を学び、指導して来た喜びに満ち溢れています。今後とも俳句を通して【鳥】のことや人生のことを色々と、ご教示くださいませね。
この作品は一字直しましたが勿論、拡がりのあるダイナミックな特選句です。
[ 葦切のこゑ高らかに印旛沼 ]
[大森理恵先生の御選評]
作者のお得意な鳥の一句である。この作品の一番のGOOD POINTはやはり下五の地名の『印旛沼』である。
私の祖父の師であった有名な俳人の山口青邨師の作品に【葦切の鳴き迫りくる沼の宿】という名句があるが、まさに、この一句は、その句に匹敵するくらいに、素晴らしい !!! 作者の撮影された御写真も素敵。お近くに『印旛沼』がおありで何よりの場所にお住まいである。
葦切は湖沼や河畔の葦の茂る間に群生して巣を作り、行行子の異名がある通りギョ・ギョシ、ギョ・ギョシと鳴きたてるそうだ。御写真にあるように良く葦の穂先に止まって囀っている。
作者の句は勿論のことだか、御写真はまるで、鳥の図鑑を見せて頂いているようだ。この場を借りて私に鳥に興味を持たせてくださいました作者には心より感謝申し上げたい !!! 何も文句のつけようのない歳時記の例句を見ているような特選句である。榮子さんいつも有難うございます。
[ 夕まぐれ青田をわたる風のあり ]
[大森理恵先生の御選評]
原句でも良いのですが、下五の『風模様』が少し、気になって、スッキリと『風のあり』と添削させて頂いた。
作者は、本格的に学ばれて二年に満たないが着実に実力を上げていって下さる。いつも言うがレッスンの折に没句が殆どなくて少し直すと、とても良くなる。原句の発想が良いからだ。彼女の御写真もそうだが、俳句も日本画のように爽やかな一陣の風が吹いてくるようで、スッキリしている。昨日の10句も、とても良かった。原句が良いのが何よりである。
上の句も上五の『夕まぐれ』が何とも良いし、季語を中七に持ってくる高等技術を使われている。『夕まぐれ』➡『青田を渡る』ここまでが素晴らしく、リズムが良い。そして下五の『風』である。全体のバランスがよくてシンプルであるがスッキリしていて実に令和の『上村敦之』の俳句版である。
私は彼女の作品のファンであると共に彼女の物事の核心・真理を見る目には今回、全て、当たっていて、おそれいった !!! ある事を始めに直感で言われたことが全て当たっていたのだ !!! 何事も直感が大切である。特に俳人は直感の感性が大切。️子供の頃は何も曇りがなくてピュアーに世の中の真理が見えるのに何故か大人になるほど、雲がかかってしまう。榮子さんの作品のようにシンプルに物事をストーレートに、見れば真実はわかるのだ。
挙げ句は色と対比と時間の経過が出ている特選句である。
[ 山翡翠の清き流れを飛んで行く ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の上五の助詞の【や】の切れ字を使うと二句一章と言って、中七から季語の『山翡翠』のこととは 全く違う事を言って句を広げていかねばならない。せっかくの『山翡翠』のことを詳しく述べておられるので『一句一章』にさせて頂き名句が勿体ないので上五の切れ字を【の】に変えた!
★翡翠カワセミ ★山翡翠ヤマセミ ★赤翡翠アカショウビン と、いずれも、漢字は同じであるが読み方が違ってくるし、どれもそれぞれに美しい鳥であり実に興味深い !!! 榮子さん曰く山翡翠は山間の渓流付近に棲む。山女・岩魚・ハヤのお魚を狙って食べるそうだ。鹿子模様の美しい鳥であるが最近は殆ど見れなくなったそうだ。
作者との鳥談義は非常に新鮮で作者が詳しく説明してくださいますので、とても豊かである。この一句は凄いシャッターチャンスの御写真と共に山翡翠の実態を詳しく見せて下さいました特選句。特に中七から下五の『清き流れを飛んで行く』が絶妙な役割を果たしていますね。
[ あぢさゐや濃きも淡きも恋の色 ]
[大森理恵先生の御選評]
このような『あぢさゐ』の作品は66年間、俳句を学んできて、まだ見たことがない。『あぢさゐ』= 恋というのは沢山あるが、あぢさゐの花の色を分解されて『濃きも淡きも』➡『恋の色』とは実にお見事な一句である。
真理子さんが「最近、榮子さんの作品が憑きものが取れたようにシンプルでスッキリしていますね。」と仰っていたが実に良く句友の作品をご覧になっていて、まさにその通りである。要するに心が晴れているから無駄な語彙が一つもないのだ!シンプル且つ深い。️そしてリズムがとても良い。まさに【言葉は平明に想いは深く】私の俳句哲学そのものを榮子さんは実作しておられる。
この【一句一章】が実は非常に難しいのだ。【二句一章】は訳のわかってない人が宝くじのように当たれば大ヒットになるが【一句一章】は季語を余程、深く学んでないと簡単には出来ない。我々の幼い頃は10年間、季語に付いて、必死で学んだものだ! 今みたいにiPhoneもなくてGoogle検索出来ないし、細かい事を指導してくださる師もおられず、自分で一つの季語をトコトン研究して、身につけた !!! 榮子さんは、まさにそのお勉強を今、されている。心からリスペクトするお弟子さんである。
人間が出来ていないと全ての藝術は作品にでる。俳句は、まさにその最たるもの。日々、季語を愛でて感謝の気持ちと謙虚な心をお持ちでない方々の藝術は必ず、表に出てくる。榮子さんは将来、有望な作家さんである。上の一句はなかなか出来ない !!! 言葉は平明ではあるが奥の深い特選句である。
[ 赤翡翠雨を降らすや田は緑 ]
[大森理恵先生の御選評]
此の作品の良いところは【色の対比】です。赤翡翠の『赤』&『田んぼの緑』この原句を何故に直したかと申しますと始めに季語の『赤翡翠』が上五にある方がインパクトが強いからです !!!
それと雨を降らすという現象は『赤翡翠』にかかります。『赤翡翠』は別名、『深山翡翠』『水恋鳥』『雨乞鳥』『南蛮鳥』『きょうろろ』と俳句では言います。渓流付近を好んで棲み、蛙、昆虫などを捕食することを作者から学びました! 梅雨どきに良く鳴きますから、その鳴き声に特徴があり『きょうろろ』とも呼ばれています。また、雨の降る前に鳴くので『水恋鳥』とも『雨乞鳥』とも俳句では使います。
作者の素晴らしい原句のおかげで随分、『赤翡翠』の復習ができました。心より感謝申し上げます。(☆俳句では語順を変更することにより品格が高くなる事があります☆)原句の語順を変更しましたが、素晴らしい特選句ですね。
[ 小判草夕べの風にゆらゆらと ]
[大森理恵先生の御選評]
素晴らしい情景の一句ですね。
季語の『小判草』は別名『俵麦』とも呼ばれています。これは穂が麦の形に似ているからとも言われております。がやはり、我々は『小判草』がシツクリきますね。中七からの措辞の『夕べの風にゆらゆらと』が実に無駄のないシンプルな語彙なのですが、それでいて情景描写が抜群です。
御写真も素敵ですがなくても一句だけのイメージの膨らみが大きくてまるで日本画の大家の作品のようです。藝術作品と言うのは一見してシンプルなのですが奥が深いです。
作者も最近の俳句は要らないモノが削がれてはいますが奥が深いです。まだ、二年に満たないのに凄い作家さんですね。リズムも良くて覚えてやすい作品。お見事な特選句ですね。
[ きよろろろろ雨乞鳥のこゑひびく ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は前回のレッスンの折に出てきて作者より、私が季語の【赤翡翠】について詳しくご指導して頂いた!
我々は【雨乞鳥】【水恋鳥】【きようろろ】言うと習った。作者からは【赤翡翠】は渓流近くを好んで棲み、蛙、昆虫を餌にすると伺った。【山翡翠】=ヤマセミと読むのに【赤翡翠】=アカショウビンと読むとも…。
上の作品はとてもリズムが良くて【赤翡翠】の声帯をよく掴まれて一句に仕立てあげられている。上五に【きようろろろ】と特徴のある鳴き声を持って来られて次に【雨乞鳥のこゑひびく】である !!! これがやはり、【雨乞鳥】でないと季語がシツクリしないのが不思議であるがとても、惹かれた一句である。さすがである。️梅雨季によく鳴くそうだ。やはり、鳥の大家は違う !!! 充分に、鳥を愛でられた上で一句に仕立てあげられている。とても感心した。
榮子さんは何に対してもとても熱心にお勉強されて奥が深い。私は学ぶことが沢山ある。大好きな習われ上手なお弟子さんである。28歳より44年間、これまで、三万人以上指導させて頂いてきたが作者ほど、謙虚且つ丁寧に日々を生きて来られてるお弟子さんは、数少ない。(勿論、句友の真理子さん共に私の指導を良く理解されて同じようなタイプである。)
特に個人レッスンでは事細かく指導できるので普段の句会のように特選句・佳作のみの選評に終わらず、一句、一句に付いてご指導できる為に伸び代が格段に早い !!! 八月で二年なのに既に何も直さなくても万が一直しても一字のみ !!! あとは語順という、程度であるので基礎は知らぬ間に身に付いているという優秀なお弟子さんである。️作者らしい品格のあるリズムの良い特選句。
★プライベートな話しで申し訳ないですが今日は57歳で急逝した父の33回忌である !!! 私は【赤翡翠】のキヨウロロという鳴き声を父の突然の死に、鳴いてくれてると思い、京都の北の方の『清滝』という赤翡翠の声が聞こえるスポットへ昔は良く行ったものだ !!! 榮子さんありがとうございます。
[ 十薬の花の白さや朝の陽に ]
[大森理恵先生の御選評]
原句よりインスピレーションを頂き添削いたしました。
レッスンの折に、お話ししたのですが、大好きな榮子さんに深く理解して貰いたいので再度、書き込みさせて頂きます。『十薬の花の白さ』対『朝の陽に』では色の対比が about になります。要するに白対白になるのです。俳句は、たった17文字の文藝ですから、そこの中に全てを詰め込まなければなりません。(ここのバランスが非常に難しく詰め込み過ぎると、説明句になります。)なので今回は色の対比から下五を『夕べかな』と添削しました。これにより十薬の白さと夕べの太陽のオレンジの対比が鮮明に表現できます。
他の結社や普通の指導者ならば原句でも○とされますが私は榮子さんは普通の俳人とは思っておりません。彼女は謙虚で生きとし生きるものに対しての日々の感謝が半端なく慈愛に溢れた人格者です。IQも高くて品格がおありで一流俳人の要素を沢山、お持ちです。作者の鳥の御写真を拝見した時から、ずっと感じて、いた事です。対象の鳥を愛し、その対象物に感謝しながらシャッターを押されています。まるで日本画のように繊細な美しさのある素敵な御写真です。
藝術一般におきまして、言えます事は先ずは表現者は人格者でなければ、作品に全てが現れます。私の師の角川源義先生はいつも仰ってました。「詩歌を学ぶ人は【喜怒哀楽】がハッキリしていないと良い作品が出来ないです!!」と ・・・。作者は、お見事に【喜怒哀楽】がハッキリとされています。間違った事が大嫌いな方で、とても感受性が豊かな魅力的な方です。なので私は二年足らずの作者には俳句の高度な教えを理解して頂けると思い、添削しております。要するに表現者=人格者でなければなりません。作者は、此処の部分が非常に優れた唯一の方です。
上の作品は十薬の微妙な白さにポイントを置かれて、その時間の経過を詠まれた原句が良いので添削させて頂きました。今後、句友の真理子さんと共に一番期待している女流俳人です。️原句の発想がよいので添削しての特選句です。
[ 青梅雨やとほくとほくに鳥のこゑ ]
[大森理恵先生の御選評]
京都は久々に夜中から大雨、気温22度の朝を向かえました。
上の作品ですが原句も悪くはないのですが、ともかく、榮子さんには、令和の超一流な女流俳人になってもらたいのでリズム♪を整えました。『とほくとほくに』で鳥の声が尚、一層、鮮明に描かれます。
不思議な事に贔屓かもしれませんが彼女の作品は、没句が少しもなくて原句の発想のまま、少し添削すると見違えるように素敵な作品になります。俳句と言う文藝は机上で、いくらお勉強していても上達は、致しません。六歳から私は『魂のLevel up』という難解な人生の宿題を教わりました。昨夜の榮子さんのレッスンでも一句も没句がなくてビックリ致しました。原句に沿って少し添削しますと見違えるように素晴らしい一句になるのです。作者は生まれ持って、品格があり知性と教養に溢れた大切な人生の先輩です。彼女は、言うまでもなく『魂のLevel up』を深く理解しておられます。
この作品は季語の『青梅雨』が抜群に効いていて、下五の『鳥のこゑ』を引き立てています。添削しての特選句に頂きます。
追記
昨夜、二人で話してたのは年齢を重ねていくと外見が衰えるのは男女とも仕方のない事ですがやはり【品性】は人格の中から滲み出るもの。これが一番、大切という結論に至りました。
【品性】は、とって引っ付けたモノではなくて日頃の感謝と謙虚な気持ちが出てまいります。それが全ての藝術に於いては何より貴重ですね。行動や振る舞いに洗練された美しさや上品さを感じることが男女共に大切な『品格』であると二人で話し合った意義のあるレッスンの一夜でした。
[ 青々とただあをあをと夏の蝶 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は、まさに【言葉は平明に想いは深く】という理恵の俳句哲学を忠実に守られている名句である。
まるで爽やかな一陣の風が吹き去った後のような気分である。リズム♪が良いので直ぐに覚えた。榮子俳句は鳥の御写真でもそうだが、俳句も、まるで『上村淳之』の日本画を見てるみたいだ !!! 私は始めから彼女の御写真を見て指導方針を立てた。文法を知らぬ間に身体に染み込ませてあとは、それぞれやりたい放題に個性を引き出すこと !!!
【みんな違って良いのだ。】それを個性と言い、俳句には上手い下手と言う言葉はタブーである !!! この一句は歳時記にあってもまるで大家の作品のよう。リズム♪、及び、流れの良い 覚えやすい一句である !!! この作品は、とても奥が深い。色、風、空気感全てがシンプルな語彙に含まれている !!!
ここ最近でも超優れた特選句である。
[ 父の掌と茅の輪くぐりし夢の中 ]
[大森理恵先生の御選評]
今日は、いよいよ6月30日【夏越しの祓】【茅の輪潜り】【形代流す】という日本古来の伝統行事の日です。茅の輪は、藁で出来ています。その、藁の締め縄をネジネジして作られています。その大きな、まるい、輪の中を潜るときに残る半年間も災難を避け、無病息災を願いながら潜ります。
原句の発想は、とても良いです。可愛いい榮子さんが幼い頃にお父様に手を引かれて茅の輪潜りをした遠い日の懐かしい想い出です。【手】と【掌】の違いは少し違って今回は、お父様の温かい慈愛溢れた抱擁力のある力強い【掌】の場合だと、この漢字を使います。力強い逞しい手だからです。
原句でも充分なのですが、流れやリズムを整えて語順を変えて下五に【夢の中】と直しました。ノスタルジーのある昭和の風景をみているような一句ですね。作者は、色々な季語に挑戦されて、今、鳥見が出来ない日々を俳句を人生の糧とされて日々豊かに暮らしておられます。️その事が私には何より嬉しいです。添削はしましたが原句に沿っての特選句です。