- 原句は、【青葉雨しずく残して七色に】でした。
- 原句は、【山深きこゑひびきたるホトトギス】でした。
- 原句は、【黒くまた赤き桑の実口を染め】でした。
- 原句は、【ヒッヒッヒッそのこゑ高く雪加飛ぶ】でした。
- 原句は、【長き尾の天女の舞ひや三光鳥】でした。
- 原句は、【むくむくと湧き立つ雲や夏つばめ】でした。
- 原句は、【星涼しアガパンサスの色冴えて】でした。
- 原句は、【雲湧くや遠き峰々夢の中】でした。
- 原句は【文月や霞ケ浦の空広く】でした。
- 原句は【三伏の旅路に聞こゆ波の音】でした。
- 原句は、【花合歓や濃き眉のごと風に揺れ】でした。
- 原句は[白南風や南の島に思ひ馳せ]でした。
- 原句は[三伏の厨仕事は手短に]でした。
- 原句は[梅雨晴れの空広々と雲あそぶ]でした。
- 原句は[外つ国の友のたよりや明け易し]でした。
- 原句は[こゑ涼し夫とふたりの散歩径]でした。
- 原句は[蓮の花はじける朝や香りあり]でした。
- 原句は[広き田にこゑを残して夏つばめ]でした。
- 原句は【長き尾の天女の舞ひや三光鳥】でした。
[ 月日星そのこゑゆかし三光鳥 ]
[大森理恵先生の御選評]
上の季語の【三光鳥】については、先日のレッスンの折に榮子さんから詳しく特訓をして頂きました。️雌雄とも似ているが、雄の尾羽根が著しく長くて特徴がある。「月ツキ日ヒ星ホシ・ホイホイホイ」と囀るからそこから【三光鳥】との名前がある。日本で繁殖して冬には南方へ渡るとのこと。以上が榮子さんから教わりました【三光鳥】に付いての学びです!この教訓をお聞きしてから上の作品を見るとなるほど !!! と感心致しました。
中七の『そのこゑゆかし』が凄く良い語彙ですね。珍重な鳥ゆえに無理ではあるが【三光鳥】の雄の尾羽根も見たいし、『♪ツキ・ヒ・ホシ・ホイホイホイ♪』も心から死ぬまでに聞きたいと思った作品です。さすがは野鳥の大家の一句。恐れ入りました。
追記 画像の御写真もさすがですね。
[ 遠き日の想ひ出浮かべ蓮見舟 ]
[大森理恵先生の御選評]
此処での季語は【蓮見舟】である。
最近はとんと見なくなったが大昔に京都の南部の宇治に近いスポットに『巨椋池』と言う大きな池があり、そこでは蓮見舟が盛んであったと聞いた。上の作品は大昔に作者が『蓮見舟』に乗られた事と過去の想い出を重ねて作られた一句である。とても美しい。️季語自体が、かなり美しいので措辞が難しいが『遠き日の想ひ出浮かべ』には大感動した !!!
句友の真理子さんとも話していたのだか、作者の作品は最近、憑物が取れたようにシンプルなのに『想いが深い』
真理子さんが、その事を八重子ママに言われると毎日、俳句と選評を一生懸命ご覧くださる八重子ママは「そんな事、わかるの?」と問い返されたそうだ。二年も本格的に学ばれていたら、俳句で一番、大切な選句も出来てくる。榮子さん、御本人もレッスンで出される作品には殆ど、没句がない。これは俳句のお勉強の中で最も難しい【自選】が出来るからである。
さて、この作品は何処から見ても美しい。それだけ、季語の【蓮見舟】にインパクトがあり、措辞が難しいのに過去の事を持ってこられて大成功。削ぎ落とされた美しい一句は勿論特選句です。
追記 毎回の事ではあるがパッと開いた蓮の御写真も素敵である !!!
[ 青梅雨やしずく残して七色に ]
[大森理恵先生の御選評]
とても綺麗な一句ですね。
切れ字の【や】を入れることにより原句の【青葉雨】➡️【青梅雨】と濁音も無くなり、語彙が軽くなりました。原句の『しずく残して七色に』が、とても良いですね。ともかく美しいです。
作者の細やかで繊細な気持ちが作品に顕れています。やはり、作品にはその方の【生き方】が出ますね。五・七・五の17文字の中に全てを詰め込むというとは難しい作業なのですが作者は来月で本格的に学ばれて二年目、凄い実力です!
紫陽花の画像を使われているのも七色が引き立ち、とても良いなぁ〜と感心致しました。IQの高い、品格のある作者らしい特選句です。
[ 山深くこゑひびきけり時鳥 ]
[大森理恵先生の御選評]
作者の原句も決して悪くないのですが、なるべく切れ字を入れて一句を締めたかったので【けり】=【過去の断定】を、使いました。このように『俳句は切れ字に始まり切れ字に終わる』と言うように、『けり』『かな』『や』はとても便利です。
いつも言ってることなのですがレッスンの折に作者には没句が殆どございません。これは始めのレッスンからです。珍しいお弟子さんなのです !!! 基礎がしっかりと出来ていて私の指導している話しを一言も漏らさず、書き留めて頭に入れ込んでおられます。なので来月で二年になりますが文法が身体に染み込んでいます。
カタカナ書きは園芸界でも当たり前らしくて鳥の大家さんに、なりますと、なかなか取れない癖だと存じます。(笑)上五からの『山深き』そして中七からの『こゑひびきけり』=『時鳥』は完璧な作品です。教科書や歳時記に掲載したいような一句ですね !!!
並の凡人ならば【型】を身に沿わすのに10年はかかりますが、それをいとも簡単に身につけられた作者には頭が下がります。勿論、この【時鳥】の作品も臨場感溢れていて、何処からか【時鳥】の声が聞こえてくるような特選句です。
追記 いつもながら素晴らしい御写真ですね。このショットを撮すのは余程の腕前の写真家さんと。お見それ致しました。
[ 桑の実や赤く黒くと口を染め ]
[大森理恵先生の御選評]
上の一句は、作者は、とても正直であるから、原句と添削句をそのまんま投稿しておられる(笑)この作品は前々回のレッスンの一句。昨日のレッスンではとても良い俳句があり、相変わらず、少しの添削で、とても良くなった。
さて原句の【桑の実】なのだが、少し、上五から中七にかけの言い過ぎでの箇所があったので添削させて頂いた。俳句はあくまでも【引き算】の文藝である。『黒くまた赤き桑の実口を染め』 此処では特に『また』が言い過ぎなのでスッキリと季語を上五に持ってきて中七から下五にかけて作者の言いたいことを述べた。それと黒くから始まるより『赤く黒く』の方が流れが良い♪これは、語順を変えただけである。
幼い頃、桑の実を、齧ってたら口が黒やら赤やらとても派手になった。凄くノスタルジーのある一句である。添削はしたが幼い頃の思い出を作品にされた【映像の復元】【自己投影】のある特選句。
[ 星鴉こゑどこまでもどこまでも ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は前回のレッスンでの初見でした。始めて知りました。季語の【星鴉】という鳥さんを……。
榮子さんから色々と伺いました。燕雀目の鳥で大きさは鴉くらいで、暗赤褐色の羽色で顔と頚部と背中に、無数の【星のような白班】がありそれで【星鴉】と呼ぶそうだ !!! 尾羽は黒いらしい。日本各地の高山に棲み針葉樹の種や昆虫などを食べる。ガーガーと威嚇するように啼くらしい。
私の持ってる歳時記には例句も【星鴉】に付いてもなんの記載もないので私にとりましては鳥の大家さんから教わる内容が、とても珍しく貴重である。このガーーガーー!と威嚇するような声が中七から下五までの『どこまでもどこまでも』なのだ !!! 素敵な名前なのに、がーーガーー!は似合わないがそのくらい、この鳥の声は特徴があるのであろう !!! 毎回、新しい鳥を覚える事ができてそれが季語となると私には、榮子さんとのレッスンが楽しみでたまらない。
勿論、この句は中七から下五までの『どこまでもどこまでも』のリフレインの効いた覚えやすい、特選句である。
追記 榮子さんは今日の(土曜日)の午前中は病院です。それにも関わりませず寝過ごしてしまい、選評が遅くなり誠に申し訳ございませんでした。【星鴉】の可愛いい画像も、添えて下さいましてとても嬉しいです。ありがとうございました。
[ ヒッヒッヒッそのこゑ高く雪加来る ]
[大森理恵先生の御選評]
この鳥さんも榮子さんから詳しく教わった。ウグイス科に属する小さな小鳥で背中は黄褐色で黒い縦の班があり、下の方は淡色。尾が、やや長く、嘴が細くて可憐な姿であるが鳴き声に特徴があり、縄張りに入ると「ヒッヒッヒッ」と飛びながら鳴き、「チャッチャッチャッ」と舌打ちをするような鳴き声で降りてきて空を、巡っていくらしい。と・・・・・・
詳しくお聞きしてもいざ、見てみるとどれが、どの鳥からサッパリわからないが新しい季語を覚えるのは楽しいことだ。歳時記の水原秋櫻子の作品に【雪加鳴き端居にとおき波聞こゆ】福永耕二の作品に【うつむきて聴くに雪加は母の声】があったので、鳴き声に特徴のある鳥とは理解していた。今回、詳しくお聞きして、とても楽しかった。
原句の下五は【雪加飛ぶ】=鳥が飛ぶのは当たり前なので【雪加来る】と添削した。私は、なるべく、原句を触らずに作者の気持ちを尊重して添削することを幼い頃から心掛けている。️この作品は雪加の鳴き声の「ヒッヒッヒッ」を上五から中七に持って来られて、読者に想像を膨らませることに大成功された特選句である。
[ 長き尾の天女のごとく三光鳥 ]
[ むくむくと湧き立つ雲や白日傘 ]
[大森理恵先生の御選評]
昨夜は、暑い暑い、七夕の夜(星祭り)でした。
原句でも悪くはないのですが、夏の有名な季語に、むくむくと湧き立つ雲=【峰雲】【入道雲】がございます。それで下五の季語なのですが、【夏つばめ】では上五から中七への語彙との因果関係がございません。季語は措辞との因果関係ですから【白日傘】に直させて頂きました。IQの高い作者はレッスンの折、直ぐに理解されました。
この、暑さ、異常ですね。猛烈な連日の暑さで頭がカランカランです。京都は早朝から熱中症で救急車が走っています。多分、観光客の方か、シニアの方々と存じます。
上の作品は【上五】〜【中七】が峰雲を想像してとても良い一句と思いました。季語は、とても大切ですね。どうか、猛暑、極暑に耐えて身体は休めても脳を休ませないようによろしくお願い申し上げます。うちに来られるヘルパーさん曰く、この暑さで脳を使わないシニアの方々の中で認知になられる方々が此処、数年以来、増加中らしいです! 私も、こうして選評を書き込むことや俳句指導をさせて頂きます事により頭の中の右脳&左脳を使ってますからまだ、脳は使えそうですが。
上の一句は相変わらずリズムの良い流れるような、添削しての特選句です。
[ 影涼し木々の緑の濃くなりぬ ]
[大森理恵先生の御選評]
今日は戻り梅雨らしく、早朝から蒸し蒸ししている京都です。
「夏の季語に【名詞】+【涼し】で素敵な季語になりますよ。」と御指導させて頂きました。その結果、この前のレッスンで上のような作品がでてまいりました。
『影涼し』とても素敵な季語ですね。️この季語から入り中七の『木々の緑の濃くなりぬ』なんて爽やかなスポットなのでしようか !!! せめて、この都会のビルの蒸し暑さを逃れて真夏は、このような空気の良い所へ行って『森林浴』でリフレッシュしたいですね。
俳句は決して、【実】のことだけではなくて良いので過去の体験や願望を五・七・五の一句にすることのできる便利な短詩系の文藝です。然も、季語が全てを語ってくれます。この一句により現実の蒸し暑さから少しでも逃れていっとき、胸いっぱい深呼吸したくなります。
品格のある作者らしい、季語のバッチリ効いた特選句ですね。
[ 風涼しアガパンサスの華やかに ]
[大森理恵先生の御選評]
京都は今朝は、ここ数日に比べて少し、マシな暑さになったような気がしますが油断大敵です。
前回のレッスンの折には『名詞+涼し』で夏の季語になりますよ。と御指導させて頂きました。原句でも悪くはないですし、確かに字で見た感じが『星涼し』のほうが綺麗で私も良く使います。が、此処では一つの俳句で良くやる穴があります‼️『星』も目で見るもの!『アガパンサス』も目で見るもの。この二つが一緒になりますと喧嘩しちゃいます。此処までは俳句の新人さんなら、良しとしますが、作者は来月で満二年を個人レッスンでビッチリと鍛えられた作家さんですから添削させて頂きました。
非常に難しいのですが下五の『色冴えて』も具象が足りないので思いきって『華やかに』とさせて頂きました。普通の新聞や結社の俳句であれば、原句で充分なのですが、私は基礎に拘ります。やはり、何事も【型】から入って【型】を出ることが大切ですから。
俳句は指導者によって大きく違ってきます。その辺のカルチャーセンターの先生では、あまり詳しくなかったり、作者の感性や発想を見抜かれなかったりしますから、やはりホンモノの俳句のお勉強にはなりません。これは藝術一般に言えることですがやはり始めの基礎が一番、大切です。
作者は素直なご性格でIQも人一倍高くて、ホンモノが一番、理解できる稀有な方ですからなるべく、基礎の段階で一つずつ、階段を登るごと、指導させて頂いています。砂漠に水が染み込むように習い上手な方ですから上達が人一倍、速いです。
上の作品の原句と添削句の違いは、プロでもなかなか分りません!が私は作者の実力に合わせて、あまり使われない【風涼し】を持ってきて【アガバンサスの華やかに】と映像の復元・自己投影を拡げた添削を致しました。(この添削は、まだまだ理解されなくてもあと数年後にはご納得できると願いながら・・・)発想が良いので原句を添削した特選句です。
[ 月涼し我が胸照らす『ひとりの灯』 ]
[大森理恵先生の御選評]
この句に対しての選評はとても書きづらいです。が作者が投稿してくださいましたので俯瞰的に・・・書かせて頂きます。
季語の【月涼し】+【わが胸照らす『ひとりの灯』】との措辞のマッチングが絶妙な取り合わせです。(※『ひとりの灯』は2007年に読売新聞社後援により第一回一行誌大賞を受賞した句集です。)
先ず季語の『月涼し』は最近の梅雨では、見られませんが、夏の大きな季語です。お月さま自体は秋の大きな季語になりますが、前回も申しましたように名詞+『涼し』で夏の季語になります。この『月涼し』の季語に対して、作者の心の中を照らしてるのは『ひとりの灯』という一冊の句集。この遠近感のある対象が凄く良いです。
①リズム ②映像の復元 ③自己投影 と俳句で必要な三原則が詰まっています。また、夏の『月光の灯』とともに、句集のタイトルの『ひとりの灯』が上手く組み合わされていて感心致しました。これ以上は照れ臭くて選評は出来ません。師弟冥利に尽きる一句です。初見で、文句なしの特選句です。
[ 峰雲や遠き山々夢の中 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句は惜しいことに季語がなかったので作者の一句から【峰雲】としました。
【峰雲】は、確かに雲湧く状況を言います。それと季語を【峰雲】にしたので中七の措辞の『遠き峰々』を『山々』と添削させて頂きました。
作者は本当に教え甲斐のある、お弟子さんです。句友の真理子さんと言い、このお二人は私に、とりまして最も貴重な方々です。基礎の段階では一つずつ、指導したことを聞いてもらわないと型がしっかりと入りません。【型】に入って【型】から抜けるのはどの道も、同じです。
これはお弟子さん方の御性格の問題もあり謙虚で全てに感謝の気持ちを持ち、お育ちの良い方々は伸びてゆかれて生き方も変わります。三万人以上の生徒さんを指導してきて、やはり一番に才能よりも御性格の良い方々はどんどんと変わられます。榮子さんや真理子さんはその典型的な方々です。元々、謙虚で感受性も豊かでIQも高くてお育ちが良いので上達も早く、没句が全くございません。
上の句もおおらかな一句で変なテクニックを使われてないとこが素晴らしいです。そのまんまの【自己投影】が句に出ています。私も大怪我をしてから遠くへ行く事や諸外国でのお仕事は諦めましたが、俳句は【虚】で遊べることが出来ますから何処へでも飛んで行けます。
この一句は添削はしましたが原句は御本人の想いが滲み出た感動の作品です。
[ 短夜や霞ケ浦の空拡く ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は地名の効いた秀逸句ですが残念なことに原句の『文月』では少し、大雑把になります。この原句の措辞を活かして季語を『短夜』に添削致しました。『短夜』とは『明易し』とも言う夏には良く使う、とても好きな季語です。措辞の地名の『霞ヶ浦』&『空拡く』を活かそうとすれば、やはり、此処は一晩のみの【短夜】の季語がワンポイント的に集中します。
作者の原句があってこその添削です。作者は性格が謙虚でとても素直な優しい方です。それがレッスン時にも出て、私にとりましてもとても指導しやすい、優秀なお弟子さんですから没句が殆どありません。少し直すと、とても良くなります。これは作者の性格の問題です。『習われ上手』ですと私も集中して良い季語の添削や細かい点を治すことが出来ます。
『広げ』➡️此処も大きく広がる場合には『拡げ』と言う拡大の字を使います。季語と漢字を一字変えたのみでとてもダイナミックな素晴らしい一句になりました。️添削は致しましたが原句の地名と発想の良い特選句です。
[ 青葦の旅路に聞こゆ波の音 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の『三伏の旅路』なのですが、三伏とは簡単に述べますと夏の暑い盛りのことを言います。なので、これではかなりアバウトな季語になり、この季語ではと中七からの措辞が活かされてまいりません。
なので具象のある『青葦』を持ってまいりました。これにより、池や湖などの情景描写がくっきりと描かれます。作者の大好きな鳥さんまでもが出てまいります。俳句は少しの語彙で大きな拡がりや意味の深さが出る、神聖な文藝です。
この添削も作者一人ずつのLevelに合わせて、私は書かせて頂いております。いきなり、凄い添削をすると作者の個性が潰れるからです。『青葦の旅路』とすることで作者の愛する鳥さんも現れてきて、とても好印象な一句となります。
句柄が一段と大きくなり【映像の復元】及び【自己投影】までもが鮮明に表現されます。添削しての特選句に頂きます。️作者のご性格の現れた細やかで繊細な優しい一句になり、とても嬉しいです。
[ 花合歓やねんねんころり風に揺れ ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は前回のレッスンの折に出て来た、一句です。
原句の『濃き眉のごと』では私が???と申し上げたら速攻で『ねんねんころり』と榮子さんからドンピシャの語彙を仰って下さいました。
我々、昭和真っ盛りの人間にとりまして季語の『花合歓』は美智子上皇后様が作詞されました【ねむの木の子守り歌】がパッと浮かびます。なので作者も私が中七を???と言った折に咄嗟に優しい語彙の『ねんねんころり』が出たのでしよう。️この中七がとても素晴らしいので下五の『風に揺れ』もとても効いていてリズムの流れが良くなりました。
画像の御写真も素敵ですが、少しアドバイスしたら速攻でご自分でご推敲された中七がスペシャルに素晴らしい特選句です。
[ 白南風やギリシアの海に思ひ馳せ ]
[大森理恵先生の御選評]
今回の夏の季語の【白南風】シロハエは梅雨が明けてからの南から吹く風を言う。ちなみに梅雨前の風は【黒南風】クロハエと呼ぶ。
原句でも素敵なのですが、此処は具体的に固有名刺を出せばより、一層、句が引き立つと思い添削した。固有名刺は非常に難しいが、やはり作者レベルの方には今後、どんどんと使ってほしい。これまでは近くの鳥さんが見られる『印旛沼』などが多かったのですが今の作者は心の中の俳句への想いが深くて世界を駆け巡る力量がおありになる。それで私は大いなる冒険として白南風=ギリシャの海と添削させて頂きました。
俳句は『虚』の文藝ですからやりたい放題にやれば良い。作者の実力ならこの位の事は冒険して欲しいと思い私が日頃から夢に見ている白南風=ギリシャの海とした。ギリシャのエーゲ海にあるクレタ島は、とても気持ちの良い白南風が吹く。南の島を具象化した添削をした!
俳句は、それこそ自由に頭や心の中で世界中を飛び回れる便利な文藝であることを少しずつ、理解されてる作者には、今後も世界を自由に羽搏く鳥のように好きなスポットに焦点を当てて、心を柔軟にされて夢を持ち、あちこち、駆け巡ってほしいという祈りを込めて添削させて頂いた。(これは今、心臓の持病を持ち、両膝骨折して後ろの肋骨を5本骨折している私にも言えることなのだ!)俳句と言う、お薬があれば、世界地図を片手に、やりたい放題である。これが俳句の何よりの醍醐味ですから作者のレベルに合わせながらの御指導をさせて頂きました。ダイナミックな夢のある季語と地名の効いた特選句。
[ 白さぎの群れて集ひて田はみどり ]
[大森理恵先生の御選評]
今朝も蝉の大合唱とともに極暑の朝を迎えました。
この作品の良いところはリズムと色の対比です。先ず、夏の季語の『白さぎ』の群れて集ひて⬅此処の【て】の重なりのリフレインが、とても良いです。この【て】を二度重ねることによって素晴らしい、リズムが生まれます。そして、下五の『田はみどり』と使い、上五の季語の『白さぎ』との白対緑の色の対比が鮮明に出て素敵です。
この一句はとてもシンプルに作句されていますが、細やかな配慮が作者らしく【言葉は平明に想いは深く】そのまんまの一句です。俳句は決して難しい言葉を使ってはいけません。如何に、優しい言葉で幼い子供にもわかる絵本に出てくるような語彙を使うことが大切です !!!
年齢を重ねば重ねる程、難解な語彙が頭を駆け巡りますが、此処を如何にシンプルに如何に引き算を、上手く使うかにより一句の価値がUPします。この作品は誰もが見ていて、なかなか、作品にしていない、【映像の復元】のよく効いた特選句です。
相変わらず榮子さんの【白鷺】三羽の御写真も飛翔している一羽もあり素晴らしいですね。
[ 滴りのひとつひとつにうれひあり ]
[大森理恵先生の御選評]
今日は暦の上でも【大暑】一年で一番厳しい暑さの日。(全国的な猛暑ですね。昨日、京都では、地上では38度を示しました。皆さま、熱中症にはくれぐれも、お気をつけてくださいませね。)
何とナイーブで優しい一句であろうか !!! 此処での季語は夏の【滴り】である。この【滴り】のなかに『憂ひあり』とは作者らしい細やかな観察力でもある。叙情がありそれでいて言葉が平明で、とても好きな一句である。
榮子さん絶好調の二年目を迎えられ、嬉しい限り。このように ①リズム ②映像の復元 ③自己投影 と三つ揃った作品は、作句ではとても難解であるが、作者はいとも簡単に作られたのには驚いた。️リフレインの効いた文句なしの特選句の一句である。
[ 夏つばめ空広々とひろびろと ]
[大森理恵先生の御選評]
俳句は一番に【言葉は平明に】⬅ 難しい言葉を使わずに誰にでもわかる語彙を使うことが大切です。
この作品は季語の【夏つばめ】を詠んでいますが、この季語の夏つばめの動きにより、お空が広々として大きくなった様子を一句に仕立てあげています。この一句の中での中七から下五までの『空広々とひろびろと』は漢字と平仮名で二度、同じ言葉を繰り返しています。これをリフレインと言って、俳句では一番大切なリズムを、整える為に♪リフレインを使います。この作品はリフレインが成功した例句です。
この一句はとてもシンプルなようで実は難しいのです。俳句は引き算の文藝です !!! 頭の中で引き算にしようとすればするほど、足し算になり説明句になりやすいからです。然し、この句は引き算が成功しています。無心で作句されたとても素直な特選句ですね.
[ 富士山を見上げるやうに星鴉 ]
[大森理恵先生の御選評]
榮子さんの今日の一句の季語は真夏の【星鴉】である!綺麗な名前の燕雀目の鳥さんで大きさは鳩くらい。別名を【岳鴉】とも言う。暗赤褐色の羽の色をしていて顔と頭部と背部とには無数の星のような白斑がある。尾羽は黒い。日本各地の高山に棲み針葉樹の種子や昆虫を餌にしている。ガーッガーッと威嚇するような鳴き声は、まるで綺麗な名前の【星鴉】とは程遠い。⬅ 此処までは前回のレッスンで榮子さんから詳しく教えて頂きました。今年の夏は作者のおかげで沢山の鳥を教わった !!!
この作品が良いのは日本一の山の【富士山】を見上げるようにの措辞である。高山に棲むので当然、富士山の近くには大勢の星鴉が住んでいることであろう。
この【星鴉】の季語ではなかなか、良い例句が見つからない。是非とも今度の歳時記では、榮子さんの『富士山を見上げるやうに』というダイナミックな大きな一句を掲載してほしいものだ。️あの世に行くまでに是非とも【星鴉】にお目にかかりたい !!! 季語の小さな【星鴉】に対して措辞の【富士山】を持って来られたのは、さすが鳥の大家の特選句である。
[ 三伏や厨仕事を手際よく ]
[大森理恵先生の御選評]
京都は祇園祭りの巡行も過ぎていよいよ、本格的な夏、真っ盛りです。
【三伏】とは中国の陰陽五行説から生まれた語彙であり、夏至の後、第三庚の日を【初伏】、第四の庚の日を【中伏】そして、立秋後の第一庚の日を【末伏】と言う。それを含めて【三伏】と言う言葉には『真夏日』『極暑』と言う意味がある!!!
上の作品はこの極暑の中で主婦は暑いキッチンに佇ち、お台所をしなくてはいけない。これが又、ガスを使うお料理であれば至難の仕事である。作者は、その事をふまえて原句の『手短かに』とされた。が、この原句では季語の【三伏】の猛暑と、『手短かに』が少し付きすぎになるので御本人の意図を、しっかりと捉えて『手際よく』と添削させて頂いた。
難しい季語に挑戦された作者には拍手をお送りしたい。この季語は、プロでもなかなか難しくて作りにくい。説明句になりやすいからだ。長谷川かな女の句に【末伏の琴きんきんと鳴らしけり】と言う一句があるが、これは見事に残暑の末伏の暑さを語っている。まだ二年にも満たない作者が難解な【三伏】の季語に挑まれて、然も中七から【厨】を持ってこられたのには感心した。️
一応、添削はしたが難しい極暑の季語を厨とマッチングさせて難なく使われたこの一句は勿論、特選句である。
[ 岩ひばり空広々と雲遊ぶ ]
[大森理恵先生の御選評]
さて挙げ句なのですが、原句の『梅雨晴れ』では説明句になってしまいます。先日、真理子さんのとこで書き込みしましたが俳句では、報告・説明・理屈の三大御法度がございます。如何に、季語と措辞を離して(此処が難しいのですが、離し過ぎますと、これはダメになっちゃいます。)何故かと言えば梅雨晴れ間も天文、雲も天文だからです。寝過ごした私が偉そうに言える身分ではございませんが。
此処は、作者のお得意な【岩ひばり】を持ってきて句の奥行きをを拡げました。これにより下五にある、【遊ぶ】が季語の【岩ひばり】にもかかってまいります。そして句が一度に大きく拡がります。でもね、これも訓練なんです。私のように66年も俳句の研鑽をしていると出来て当たり前!!!(昨夜は榮子さんのお励ましによりヨガ教室に行ってまいりましたが、楽しかったですが散々でした。基礎の腹式呼吸は出来ませんし、猫のポーズのやり方も若くて美しく知的な先生を見惚れてましたから全くダメでした。)
俳句は、ゆるゆると楽しく進めてくださいませね。榮子さんのような人格者はLevel upも早くてお見事な作品をこれまでも作り続けてこられましたので・・・上の原句の作品も普通の俳人ならば、良しとしますが何しろエースの榮子さんなので【岩ひばり】と添削させて頂きました。これで、お見事な特選句ですね。
[ 星涼し旅の想ひ出よみがへる ]
[大森理恵先生の御選評]
(京都は昨夜、宵山今日は鉾の巡行です。蒸し暑いですが何とか雨にならず無事に本番の鉾の巡行が廻るようです。遠くからお囃子の音が聞こえてまいります。)
名詞+涼し=夏の季語と指導させて頂きました。作者は、この季語はバッチリと把握してくださいまして、とても嬉しいです。天文の【星】を持ってきて中七からの措辞を『旅の想ひ出よみがへる』と自己投影のお気持ちを使われたのは大成功です。️この天文の季語を持ってくることで日本各地へ、鳥見であちこち、行かれたご様子や、世界へもご教育のお勉強で色々な国へ行かれたご様子が、蘇ってまいります。素晴らしい一句だと思いました!
来月で二年ですが、このようにLevel upされましたら嬉しい限りです。やはり御本人の素直で謙虚な御性格や習われ上手な感謝の気持ちの多い方。そして気品の高い御性格などの全て、作者の良いとこが私の指導とマッチングした事を想いますと万感の思いで胸がいっぱいです。普通は此処までの基礎や型を身に付けるのには最低、三年以上は、かかります。やはり何もかもその方の御心や品格が功を奏して何よりと嬉しいです。
勿論、上の一句は①リズム②自己投影③映像の復元の私の唱えている俳句の三大要素が込められていて特選句です。
[ 外つ国の友のたよりやソーダ水 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句でも悪くはないのですが、季語の『明け易し』=『短夜』では少し、説明句になり易いです。外つ国=トツクニは外国の文語体なのですが、この語彙を使われますとやはり季語も、それなりの【二句一章】にしなければやはり、説明句となります。
俳句で一番、難しいのは季語です。措辞を説明しないように、それでいて、ギリギリのところで措辞に合わせる事です。(けれど、これは直ぐに出来ることではなくて、体験、及び、経験により学びます。)
句会と言う形であれば、他の句にも触れて学べばるのですが個人レッスンだと、自分の句のみのお勉強ですので、此処が私も指導に苦しむ箇所です。俳句=句座の文藝であり、謙虚な姿勢と感謝の気持ちが俳句では一番、大切です。そこは、作者は人としてNo.1です。
原句も悪くはないのですが夏の季語の【ソーダ水】で外国からのお友達の手紙を尚、一層、引き立てました。挙げ句は勿論、特選句です。
[ 月涼し夫とふたりの散歩径 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句が良いから素敵な添削ができました。夏の季語は『名詞+涼し』でとても良い拡がりのある季語になります。原句でも良いのですが、俳句は五・七・五の中でいかに、大きく景を拡げるかにかかっています。なので立体化する為に【月涼し】を使いました。
原句の『夫とふたりの散歩径』が素晴らしいですね!羨ましい限りです。作者はお上品で、嫋やか!御主人様は、風格と厳格さがお有りで素敵なご夫婦です。措辞が良いから季語の『月涼し』と言う私の好きな綺麗な季語が、ふと湧いてきました。映像の、復元のある完成した作者らしい品格のある二句一章の特選句です。
美しい日本画のような一枚の絵になりました!
[ 蓮の花はじける朝や米をとぐ ]
[大森理恵先生の御選評]
此処での季語は【蓮の花】であるが原句は少し、蓮の花の説明をしている。これを我々は足し算していると言う。俳句は引き算の文藝なので『香りあり』は勿体ない。なので、全く、『蓮の花はじける』から離れた措辞を、持って来なくてはいけない。それで下五には自己投影(自分の行動や想いetc)述べた。
【蓮の花はじけたる朝や米をとぐ】とすると①リズム②映像の復元③自己投影と三つの三代要素が揃った!此処が一番難しい箇所であるが、作者は来月で満二年を迎える俳人さんなので、少し難しい添削をした。この措辞は非常に難しい。付かず、離れず離れず付かずの語彙でないといけないから。
作者は作品の中で【朝】と言う語彙を使われている。朝に主婦がする事、朝ごはんを作る=『米をとぐ』と添削させて頂いた。此処は作者にもまだまだ理解しがたい箇所かもしれない。勿論、読者の皆さんにも・・・けれど俳句はなるべく、五・七・五の、中に色々な行動、情景を入れて句柄を拡げていく技が必要である。まだまだ理解されなくても構わないので、この作品は是非とも残して頂きたい。一年後、二年後に添削句の良さをわかってもらえれば良い。添削しての特選句。
[ 広き田のみどり豊かに夏つばめ ]
[大森理恵先生の御選評]
原句でも悪くはないのですが、少し、キレがなくて、、、俳句で、一番大切なのは沢山ありますが(笑)キレです。これは助詞の使い方で変わってきます。作者は殆ど、この助詞に於いては完璧に力があるのですが、今回の原句、【広き田にこゑを残して】のラストの【て】はどうしても説明句になりやすい助詞になります。なので【こゑを残して】➡️【広き田のみどり豊かに】と今回は田のみどりをメインテーマにして添削しました。こうすることによりより一層、【映像の復元】が冴えて、情景が鮮やかに映しだされます。
俳句は、まず、【型】を身に着けること !!! これは、やはり良い作品を、どんどんお勉強して、自分のモノに吸収する意外に方法はないのです。私は幼い頃の師匠に【真似る】=【学ぶ】と習いました。作者は、とても謙虚で素直で感受性の豊かな作家さんですから今後もユルユルと焦らずに、この【真似る】から入って、、そこにご自分の感性をプラスして頂きますと品格のある素敵な女流俳人になるのは間違いないでしよう。️素晴らしい御写真に映える一句ですね。
[ 夕焼けや明日佳きことありさうな ]
[大森理恵先生の御選評]
あと一週間で暦の上では【立秋】なのに。とてもとても熱帯夜で夜もクーラーなしでは眠れず身体がダルいですね。
ここでの季語は【夕焼け】になります。【夕焼け】は明日晴れると言い【朝焼け】は午後から曇るという予報です。作者は【夕焼け】の季語を使って【明日佳きことありさうな】と中七から呼びかけられています。前向きな明るい作品ですね。
真夏の季語ですが【夕焼け】を嫌いな方はおられないでしようね。西の彼方へオレンジの燃えるような日の沈む時に、作者は、きっと明日は良いことがあると願いを込めて見つめておられるご様子が見えてきます。こう言う作風を【自己投影句】と言います。リズムも良くてとても明るい想いの伝わるする美しい特選句ですね。
[ 風に乗り雪加のこゑの高らかに ]
[大森理恵先生の御選評]
昨日は8時〜10時迄句会でした。句会では作者は的確なご意見を述べられて非常に頼もしく俳句二年生の、これまでの上達の数々が見れて、とても嬉しかったです。
さて挙げ句は季語の【雪加】の鳴き声を詠んでおられます。上五の『風に乗り』の表現が明るくて素敵ですね。また中七からの『雪加のこゑの高らかに』も上五に合わせた明るい措辞でこの暑さも吹っ飛びそうな一句です。やはり、鳥さんへの愛は感心するばかりで鳥の大家としての素敵な一句です。
[ あぢさゐの藍に染められ虚空かな ]
[大森理恵先生の御選評]
上の作品での特筆すべき語彙は下五の【虚空かな】です。とても難しい一句に挑戦されましたね。
あぢさゐの藍の中に包まれていると何も考えられずに無心になります。それ程、あぢさゐの青には魅力がありみんなが惹かれます。作者は、その事を一句に詠まれました。全てのことに夢中なると『一心不乱』になり、他のことが身につきません。【虚空】は仏教用語では何もない、無の世界と幼い頃に学びました。が此処での【虚空】はポジティブな意味と私は解釈致しました。何も考えられない程の魅力ある世界に紛れ込んだという意味です。こんなに、あぢさゐを評価している一句があるでしようか?
作者は来月で満二年の俳句生活をお迎えになられますが、このように難解且つ哲学的な一句に挑戦されたことに私は、とても嬉しく、作者の上達ぶりに驚きました。熱心に私の一言、一言に耳を傾けて全て、ノートに書き込みされています。その謙虚な姿勢が今回の、素晴らしい作品になったのでしよう!!! 初見で唖然とした特選句です。
追記︎やはり御写真も句に負けない位に素晴らしいですね。
[ 滴りの描く水の輪ひいふうみ ]
[大森理恵先生の御選評]
季語の『滴り』を詠まれた【言葉は平明に想いは深く】の名句。先ず、俳句で、一番、大切なリズムの流れがとても良い一句である!
誰でもが見ていて、なかなか、作品に出来ない事柄を榮子俳句として格調高く、作りあげておられる。この作者は個人レッスンの折には全く没句がなくて少し直すと、とても良くなる珍しい作家さんである。俳句との対峙の仕方が実に真摯で、こちらが佇まいを制しないといけない、孤高のお弟子さんである。この調子で、ゆるゆると少しずつ、【俳句】を心身の全ての糧になさってほしい。
言葉は地味で、決して派手ではないが、言葉の底に流れている【魂】の情熱は熱い。全ての語彙を引き算にして答えてを掛け算にしている、繊細な特選句である。