- 原句は[うたた寝の小さき絵本晩夏かな]でした。
- 原句は[明け易しペリカンの居る船着き場]でした。
- 原句は[山鳥の上り下りや滝の音]でした。
- 原句は[風涼し幼きあの日よみがへり]でした。
- 原句は[夕焼けや過ぎ去りし日々赤々と]でした。
- 原句は[秋立つや流れる雲に吹く風に]でした。
- 原句は[樹々のこゑ風のささやき秋隣り]でした。
- 原句は[夕暮れの海辺の香り晩夏かな]でした。
- 原句は[夕暮れの海辺の香り晩夏かな]でした。
- 原句は[恋ふ人を色無なき風に包まれて]でした。
- 原句は【新涼の雨やわらかに鳥のこゑ】でした。
- 原句は[初秋の稲穂の波の風の径]でした。
- 原句は[秋立ちぬ欅の影の色濃くて]でした。
[ 降り注ぐ目白のこゑや朝の詩 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は10句の中でも際立って良かった。まず上五の『降り注ぐ』そして季語の『目白のこゑや』そしてなんと言っても『朝の詩』が素晴らしい。
詩的叙情に溢れた名句である。とても可愛いい。そして明るい。この一句に出会えただけだも、今回の句会は大成功と言える。中でも作者の言葉の発見は【朝の詩】である!この語彙はシンプルなようでなかなか、出てこない。
始めからリズムと流れの良い最高の一句である。
[ 琴の音のとほく近くに夜の秋 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の季語は
【夜の秋】=【秋隣り】です。だんだんと暑さも引いて夜になると涼しい風が吹き秋を感じる頃を言います。来週の七日は【立秋】ですから四日くらいから既に【夜の秋】は使える季語ですが、今年はどうでしょうか?
それはさておき、挙げ句はとても季語の効いた作者らしい品格のある格調の高い一句です。まるで平安時代にタイムトリップしたような摩訶不思議な御作品ですね。
季語の【夜の秋】と【琴の音】の組み合わせが抜群に効いていますね。中七の『とほく近く』も現実の暑さを忘却させてくれる語彙です。暑い日中に涼しい特選句をありがとうございます。
[ 短夜や夢にあらわる想ひ人 ]
[大森理恵先生の御選評]
句会の【短夜】を使われた作品ですね。措辞の『夢にあらわる想ひ人』が例え、【虚】の一句であっても構わない。夏の暑さで眠れない真夜中に、夢の中に、作者の想われている方が、出で来たという省略の効いた素晴らしい引き算の一句である。
此処は【短夜】の季語が、とても、効いている。夢の中に出てくるのは決して、男性とは限らない!!! お亡くなりになられたご両親、そしてご家族のお兄様、お姉様という場合でも確かに【想ひ人】である。作者が最近、少しずつ少しずつ、【実に居て虚に遊ぶ】を理解されて作句されていることが何より嬉しい。
俳句は本当のことばかりではないのだ。それでは、全く日記のようで面白くない!!! 自由な各個人の感性・発想・発見の【文藝】+季語である。この季語を沢山、覚えて自分のモノにして使うことが非常に大切である。【虚】の作品をどんどんと、作句することにより、お身体のご不自由な現実から世界の果てまでを旅してほしいと切に願う!何より作者の頭や心は自由であるから。作者の果敢に【実にゐて虚に遊ぶ】に挑戦されたお見事な一句である。
[ うたた寝の小さき絵本や晩夏光 ]
[大森理恵先生の御選評]
今朝も蝉の合唱、凄いですね。挙げ句の原句も、決して悪くはなくて、むしろ、可愛いい作品である。が、下五に時候の『晩夏かな』と持ってくると上五から中七にかけての可愛いい措辞が少し薄れてしまう。なので時候の『晩夏』を『晩夏光』とした。
これは、とても綺麗な光である。名詞止めにすることで【映像の復元】が更にUPしてとても素晴らしい作品になった。幼女がうたた寝を、している。小さな絵本を、胸に抱えて・・・そこに晩夏の美しい光が差して少女の寝顔を、輝かせている。何とも可愛いくて微笑ましい光景である。具象の、あるキラキラした素晴らしい一句になった。
[ 夕焼けや喜びもあり哀しみも ]
[大森理恵先生の御選評]
昨日の、京都は夕方、凄い雷︎と夕立(夏の季語)があってから夜中は少しだけ涼しくなりクーラー入らずでした。
さてこの作品なのですが季語は夏の大きな季語の【夕焼け】です。最近、作者は【自己投影句】に挑んでおられ、夕焼けの中に来し方の『喜び』『哀しみ』を見つめておられます。この御作品はやはり我々の年齢にならないと作句できません。
私も70歳をとっくに過ぎてから、一つ一つの自然現象がとても愛しく、儚くもあり、若い頃にはじっくりと見つめてない景色も目に焼き付けるようになりました。作者は、その想いを【夕焼け】と言う太陽が沈み、美しいオレンジ色の風景を見せてくれそして明日は晴れという、希望の兆しの大自然に見惚れておられます。
ある程度の年齢でないと作れない格調の高い品格のある一句です。やはり先に『喜び』を持って来られて成功した【映像の復元】及び【自己投影】そして【リズム】の良いダイナミックな特選句ですね。
[ 短夜やペリカンの居る船着き場 ]
[大森理恵先生の御選評]
京都は相変わらず、蒸し暑い寝苦しい熱帯夜でした。皆さまの何処はいかがでしたでしようか?(今日は79年目の【原爆忌】来年は80年目の、戦後となります。)さて原句の季語の【明け易し】も、とても、お勉強された季語の使い方です。最近の作者は句会より一皮剥けたような素晴らしい作品を作られます。これは【実】の風景らしく船着場にペリカンさんが(カンタ君?)が、おられるとのこと!人を怖がらずに懐いて、まるで人間の子供みたいですね。可愛いい素敵な映像の復元のある一句です。
原句の【明け易し】➡【短夜や】にしたのは二句一章として一旦、【や】の切れ字をいれて、切りたかったからです。【二句一章】【一句一章】は非常に難しいです。が、これこそ俳句の基本となります。先ずは文法の助詞を見に沁み込ませてから、次のステップで、この【一句一章】➡【二句一章】を学びます。
★俳句には型があり型を入れて型から出ると言うことがやはり一番大切です
★IQの高い作者はご自分でもわからない間に、それを身に付けておられます
ペリカンさんが晩夏の船着場におられること事態か、凄く、可愛いい一句 !!! 下五の、場所の重たい語彙の【船着場】も大成功 !!! 素晴らしい御写真と共に【映像の復元】の優れた特選句です。
[ 山鳥の往くも帰りも滝の音 ]
[大森理恵先生の御選評]
今日から暦の上では
【立秋】になりますが、風もなくて、朝から、とても暑いですね。昨夜も熱帯夜でした。(この暑さでは甲子園の高校生を案じてしまいます。)
さて挙げ句の季語は【滝】これは作者が実際にご覧になられたとのこと!原句の『上り下り』だと作者にしては少し、大雑把なので【滝】の前を『往くも帰りも』と添削させて頂きました。以前ならば一箇所を詠まれるのみの作品が多かったのですが、今回は【滝の音】とされて、映像の復元 + 音まで出てきました。少しずつパワーがUPされて、とても嬉しい限りです。
作者は最近は頭で考えずに即吟が多いです。昨日も【原爆忌】の御作品を二句も即吟で送って下さいました。今回の【滝の音】の一句も、とても涼しそうな素敵な御作品ですね。
[ 山涼し幼きあの日よみがへり ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の『風涼し』でも、悪くはないのですが、風景をダイナミックにと、【山涼し】と添削させて頂きました。これにより一層、中七からの『幼きあの日よみがへり』の措辞が生き生きとして来て、懐かしい、山々が見えてまいります。
俳句は【虚】も使える文藝ですから、例え、故郷に山がなくても小説のようにフィクションを使えば良いですから凄く有り難い文藝です。【山涼し】とすることにより、作者の大好きな唱歌の【ふるさと】の『♬うさぎ追いしかの山〜♬』も想起されますね。添削して自己投影句としての特選句になりました。
[ 夕焼けや過ぎ去りし日々とぶ如し ]
[大森理恵先生の御選評]
既に二年が過ぎた作者は相変わらずIQが高くて習われ上手な方です。昨夜のレッスンでも10句全て、原句を活かした添削に句が凄く生き生きとして、最高の作品になりました。
上の句ですが原句ですと夕焼け=赤赤とは当たり前の色なのです。それと中七からの素敵な措辞の『過ぎ去りし日々』=赤赤とは少し変?ですね。︎俳句は引き算の文藝ですので、季語を説明してはいけません。なので、『過ぎ去りし日々』➡️『とぶ如し』と原句を活かして添削させて頂きました。これで完成句となりましたが夕焼けを見ながら、過去を振り返るのは良い発想ですね。大好きな夕焼けの一句です。
[ 恋ふ人を数へつつ待つ夜の秋 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は何と言おうが季語の【夜の秋】が効いていて思わず特選句に頂きました。作者は、やっぱり【虚にゐて実に遊ぶ】という俳句の一つの方法を学んでくださっている。(『恋ふ人を数へつつ待つ』に直して下さいますか。私の初見のミスです。『数える』の文語体は『数へる』でした。この場を借りまして作者に心よりお詫び申し上げます。)
上五のドキドキするような胸のうちを、さらりと詠みあげてラストの季語の【夜の秋】で止めておられる。この【夜の秋】事態の季語が、毎日の残暑の中で少し、夜になると、秋を感じる空気や風が吹いてきたからなのかしら? と思う季語である。かなりロマンティックな御作品である。私には、こういう体験も経験も何もなくて、いくら、お弟子さんに「実にゐて虚に遊んでくださいね。」と偉そうなことを言っていても、こういった、ロマンティックな句を詠むことは苦手である。これは、六歳から、この年齢になるまで、お恥ずかしいが、恋の体験のみがないから、例え、【虚】であろうと何となく避けてきたジャンルである。なので私の第一句集【ひとりの灯】には一句も恋の句がない。それを、いとも簡単に二年でやり遂げられた作者は凄いと思う。
私も、お弟子さん二人もお酒が全く飲めない。お酒を呑めば、出来るのかなぁ〜〜とか、ずっと幼稚なことを考えている。然しながら★青春とは心の若さである★作者は今、俳句にどっぷりと【恋】をされて、青春されている。体験のない私が言うのもおこがましいが、ドキドキ感や達成感、そして不安な気持ち、恋をすると夢中になる。⇧の作品はかなり高度な品格のある【二句一章】の特選句である。
[ 絵扇や流れる雲に吹く風に ]
[大森理恵先生の御選評]
原句でも凄く良いのです。が作者は個人レッスン二年過ぎました。なので、ここで自分と、空との対比として、立体感というのが俳句では大切なことであるとを学んで頂きたくて季語を【絵扇】としました。
これは句歴50年の方でも難しいです‼️勿論、【秋立つや】でも普通の句会であれば特選句になります。けれど、作者には、私がいつ死んでも良いように焦ってしまい(ここ、最近の京都の暑さでバテバテで熱中症にかかってしまい、頭痛が治まりません。一人暮らしの私は体力に自信が無くなってしまったのです。)今回は俳句の立体感を指導してしまいました。(此処は少し焦り過ぎを後悔しておりますが・・・)
【絵扇】としたのは自己と、大空との遠近感の対比です‼️それと季語を沢山覚えてほしい欲が出てしまいました。真理子さんの今日の作品でも、書き込みましたが、上の句は、元々は秀逸作品なのです。が、色を付けたいのと遠近感が俳句では重要と学んで頂きたくて難しい【絵扇】の季語を使いました。真理子さんと同じように超真面目な、榮子さんです。なので、愛弟子には私の元気なうちにあれもこれもとつい指導欲が出てしまいました。【絵扇】とすることにより自分が扇で風を仰いで、お空を見上げたら【流れる雲に吹く風に】初秋を感じたと言う作品になります。
かなり高度な指導を、してしまい、今、少し後悔しております。榮子さん申し訳ございませんでした。勿論、原句でも普通の句会であれば特選句です。
[ 新涼の風に誘われ友の逝く ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は前回のレッスン時の中の一句でした。「これは実ですか?」と聞くと作者は「はい!」と仰ったので、原句のまんまでと言った一句である。
季語の『新涼の風に誘われ』が何とも切ない。お親しい方との、お別れは一番、心が落ち込む。こういった作品を『挨拶句』と言う。新涼と言えば暦の上では丁度今頃。お盆の真っ盛りである。昔はお盆というと、色々な行事があった。が最近では、御先祖のお墓参りくらいである。(今日は、たまたま関西はお盆の『迎え火』の日です関西では関東と一ヶ月遅れの『盂蘭盆』と言い殆どのお盆の行事は今日から『送り火』の大文字までです。︎)
ともかく、この挨拶句は季語の新涼から中七の措辞が素晴らしい。なので添削なしでOKした一句である。
[ 樹々のこゑ風のささやき鳴子かな ]
[大森理恵先生の御選評]
これは、この前のレッスンの折の作品なのですが原句の『秋隣り』ではやはり少し平凡で説明句になります。なので優等生の作者と共に生活の季語を考えました。出てきたのは音のする『鳴子』でした!
田舎の田んぼに大昔あった、鴉などを避ける板と板との組み合わせの難しい季語です。これで立体感がパーフェクト。ですが多分『鳴子』は古い農耕用の季語ですから画像がなかったのかも?ともかく、作者の実力からすれば平面的な俳句からは⤴️して立体感を出すことが大切な時期になりました。私も実は『鳴子』は大昔、吟行で一度見ただけです。措辞が上五から『樹々のこゑ風のささやき』ですから余計に具体的な音が必要でした。それで難しい『鳴子』が思い浮かびました。作者のIQに合ったスペシャルな一句に、なりました。
[ 夕暮れの海辺の匂ひ籠枕 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句は、やはり夕暮れの時候と晩夏の季語の時候が重なります。すると句が小さくなります。作者の実力であればそろそろ、生活の季語を覚えて頂きたくて三段階アップした【籠枕】を使いました。
この季語は榮子さんや私の世代に、ありました、海辺の近くの民宿や旅館にある籠で編んだ枕のことです。海の匂いのする場所でお昼寝をしながら、海での泳ぎ疲れた身体や、ひとときの安らぎを覚えた時、【籠枕】に頭を付けて横になります。(海辺の近くの民宿や旅館じゃなくても昭和の時代は一般の家庭にもありました。)この季語を使うことで、海と自分との位置との大切な『遠近感』がでて、一句の拡がりが大きくなります‼️
生活の季語は始めは難しいですが一つずつ、使いこなすと慣れていきます。作者は毎週一度の個人レッスンを二年続けられて、いよいよ次のステップアップの段階におられます。なので前回は【鳴子】そして今回は【籠枕】の季語を覚えて頂きました。俳句は上手とか下手ではなくて一生、お勉強し続ける【継続】が最も大切です。️★一生勉強、一生青春ですから★
俳句により、リズムで左脳を使い、季語の、感性で右脳を使います。なので頭がボケることは一生ないと確信しております。但し、学ぶことを忘れて、しまうと認知度は高まります。私は十羽ヒトカラげの御指導はしたくないです。それぞれが違って良いのでその方のその時に合わせた臨機応変の御指導に徹しています。上の添削句により遠近感の作品の拡がりが大きくでて優れた一句となることを学んで頂ければ有り難いです。勿論、原句が良いので添削した特選句です。
[ 色鳥の見え隠れする旅の宿 ]
[大森理恵先生の御選評]
季語の『色鳥』は三秋の季語である。三秋とは初秋、仲秋、晩秋を言う。
本来であれば、八月七日から初秋に入り、昔なら京都は、大文字の送り火が済むと「そろそろ、すっかり秋やなぁ〜〜」と言いながら、ゾロゾロとお外を歩いていたものだ。ところが今日も京都市より『熱中症警戒アラート』が出ていて秋どころか、残暑が厳しくて私も含めて夏バテで倒れている方々が多い。兎も角、雨が降らなくて気持ち悪い高い湿度なのだ。クーラーの部屋の中でも、京都はじとじとと汗がでて来る。それと三ヶ月かけっぱなしのクーラの部屋に居ると体調も崩れる。早く秋が来ないかなぁ〜とばかり願う。
さて挙げ句であるが何と可愛いい季語の使い方であろうか?だいたい秋の旅の宿は何もない、山であったり閑かな景のスポットである。そこに、色鳥さんがちらちらと来たりするのは何とも言えず抒情があって【映像の復元】がバッチリである。【リズム】もとても良い。句に透明感のある抒情に溢れた特選句である。
[ 夫とゐて色なき風に包まれて ]
[大森理恵先生の御選評]
原句でもよいのですがやはり作者には、素晴らしい御主人様がおられるので、【夫】と添削した。原句の【恋ふ人】であれば明らかに【虚】の句になるので【自己投影句】に治させて頂いた。
この一句も品格のある作品で流れるようなリズムである。然も、まだまだ暑さが残ってるが、秋の代表的な季語の【色なき風に包まれて】だと素晴らしい御主人様との深い年月の、お二人の ご苦労が滲み出て、より一層、作品に深みと味が出てくる。
それと句友の真理子さんの【虚】の句とは明らかに違うと断定できるのは、性格上、榮子さんの、作品で【恋ふ人】はやはり初見で、しっくりと来なかった。(笑)
俳句の選句も直感である。いつも、お弟子さん達に指導してるのは「俳句において一番、大切なのは、作句ではなくて選句ですよ !!! 」と。【選句】は【自選】=【推敲】も含まれる。【推敲】は難しいが大切なのだ。
先ずは沢山の作品に触れて学ぶ以外はない !!! 此処は口を酸っぱくするまで話している。が、他の俳人の方々と違ってリアル句会に参加しないと。どうしても選句眼が出来ぬままであるので、なるべく、句会は月に一度と考えている。
作者には、誰よりも愛されて、誰よりも立派な御主人様がおられる。羨ましい限りである。作者も「夫がいなくなれば生きていけないです」とまで仰ってる。ご馳走さまである。★まさに橋本多佳子の【夫恋へば我に死ねよと青葉木菟】の作品通りである★ 原句が良いので、添削しての特選句。
[ 残りたる暑さ今日まで明日まで ]
[大森理恵先生の御選評]
昨夜のレッスンでの作者の作品は少し添削した句は数句あったが殆どが、ひと皮、剥けたような句ばかりあった。なかでもラストに見たこの作品はこれまでにはなかった作風である。残暑を解きほぐして『残りたる暑さ』と表現し、何より良いのは中七から下五の『今日まで明日まで』の現し方である。これば日本国民が全員、思うことである。然も京都は、実に今年の残暑は非常に厳しい !!! 雨も全く降らない。昨日の『送り火』で、終わった筈のお盆、少しは秋めく気配があっても良いのに。
作者はこの句を「一番最後に、ふと湧いて出ました」と言われた。何より俳句で一番、大切なリズムが、とても良いのだ!『まで』のリフレインが非常に良く効いてる。こういった句は考えると出て来ない。やはりふと湧いて来たとのお答えであった。【無】の境地に入られたのだ。我々はそれを【ゾーンに入る】と言う !!! 実は前回のレッスンでは指導で大きな賭けをした。俳句では上手いとか下手はない!自分自身の【型】から抜けだして欲しかったのだ。そして、レベルは、UPして頂きと切に願って少し、難しい季語を使ってみたり、これまでにない、ムチのレッスンを試してみた !! 私にとって個人レッスンとは、そのように大切でコロナ禍より始めて導入した俳句教育の一環の方法である。
それまでは句会指導のみであった。余計に、重積がのしかかっていた。が、今回のお弟子さん達は習われ上手で何より性格が純粋で大丈夫‼ という直感はあった。俳句は子供の方が教えやすいのだ !!! 頭の固くなった大人には固定観念があり知能や心が大切な【無】にはならない。この作品は作者の、これまでの代表句のような一句である。まさに私の俳句哲学である【言葉は平明に想いは深く】実にお見事な大特選である。
[ 夕焼けや山の向かふも染まりけり ]
[ 葉のそよぎ風の音にも秋のこゑ ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は前回のレッスンで特選句に頂きました。中七からの『風の音にも』の【も】の助詞は俳句では説明句になりやすいから殆ど使いません。が上の句は凄く♬リズム♬が良いので全く気になりません。私が作句の上で重要視しているのは何より♬リズム♬です。
この作品は軽快なタッチで上五〜下五まで爽やかな秋の到来をイメージさせてくれます。言葉は平明なのですが何より覚えやすい、とてもナチュラルな一句です。難しい言葉は一つもなくて【葉のそよぎ】+【風の音にも】=【秋のこゑ】までが完全に一筋の光のような流れです。これは、作ろうとしても、なかなか、出来る句ではないのです。
いつのまにか、作者は二年を超えて、かなりの実力をつけてこられました。非常に嬉しいです。本当に、このような秋が早く訪れてくれるのを心より祈ります。文句ない特選句。
[ 新涼の雨に誘われ鳥のこゑ]
[大森理恵先生の御選評]
原句の『新涼の雨やわらかに鳥のこえゑ』も決して悪くはない。が、やわらかな雨は季節で言うと『春の雨』なのである。新涼の雨は我々もこの、暑い残暑を逃れて、やっと心待ちにしていた
爽やかな雨である。なのでシンプルに『新涼の雨に誘われ鳥のこゑ』と添削した。
作者は、何度も言うが既に二年を超えている。実力は、少しずつ、少しずつ、UPされないと、俳句と人生は同じであるから。少し厳しい指導をさせて頂いた。褒めるばかりの指導はとても簡単である。が、それでは自分の世界から抜け出せないので、少しずつ、少しずつ、奥深い俳句の世界を理解して貰いたくて、『誘われて』という言葉を使った。
何故かと言えば、『雨やわらかに』は先程はも述べたように俯瞰的ではないからである。俳句は頭で考えてはいけない。唯一、作者がこの秀逸作品の中で頭で考えられなのが『やわらかに』の語彙であったから。此処は非常に難しいと思うがIQの高い作者なら理解されると思う。我々、人間も、この残暑から抜けて新涼の涼しさを感じる雨が降ってくれば、やはり心が躍り、声を出すであろう。
鳥も人間も、同じなのだ!ここを理解して貰いたくて添削した。いつも言うが原句が良いから添削できる。添削しての特選句である。
[ 夕立去り樹々生き生きと濡れてをり ]
[ 夫の持つ団扇の風や夜の更けて ]
[ 月涼し絵本をめくる小さき手 ]
[大森理恵先生の御選評]
実は『〇〇涼し』と言うのは夏の季語である。これは長年、俳句に携わっている方々でもウッカリすることがある。然しながら添削した『月』も大きな秋の季語である!こういう場合は臨機応変に措辞を読む。
中七からの『絵本をめくる小さき手』がとても可愛い。すると、此処で何の季語を持ってくれば良いかなどと・・・ 俳句では『立体感』や『遠近感』そして『色彩』も必要である。作者の原句の文字をなるべく、活かして添削した。【秋】➡【月】にすることで作品に拡がりと詩的ポエムがより一層、UPする。此処も俳句の醍醐味である。【一字違いが大違い】とも言うが【二字違いが大違い】になる。
それには先ず、出来た作品を一度、季語は、これで良いかと見直す必要がある。これを俳句用語で【推敲】と言う。コネクリ廻した句はダメであるが【推敲】はかなり重要である。この推敲によって「季語が動く!」とか「季語がバッチリ!」に変身するのだ。俳句の基礎をしっかり学ぶこと !!! これを継続してると不思議な事に自然に身に付いてくる。作者はまだ二年生。なのでゆっくりと【推敲】という事も覚えて頂きたい。然しながらいつも言ってるが原句が良いと少し直すだけで速攻、凄く良い作品になる。この作者は以前から没句が殆どない。なので凄く添削しやすい優等生である。立体感と色彩感、遠近感の溢れる品格のある、とても可愛いい特選句である。
[ ぐんぐんぐん夕焼雲の濃くなりぬ ]
[ 新涼の月照らしたる「ひとりの灯」]
[ はつ秋の稲穂の波や風の径 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句は作者がキャプションに書いておられるように【の】が三つある。こうすると説明句になりやすいので、一旦、切れ字の【や】を使って切った。俳句に於いての切れ字は実に便利である。【や】【かな】【けり】を上手く使いこなせるようになるには、やはり歳月がかかる。然し、作者はレッスンの折に「この句なんだか変ですよね?」とご自身でわかっていらした。そう言う方には添削がしやすい。
【俳句は一字違いが、大違い】という言葉がある。️一字を変えるだけで景のはっきり見える大きな作品となった。原句が良いと添削しやすい。この作者はいつもそのように、こねくり回さず素直な作品を作って来られるから指導もしやすい。要するにあたまが柔らかいのだ。頭が柔らかいIQが高い!!!そして認知にはなりにくい。一字を変えただけで大きなダイナミックな特選句になった。
[ 月あかり夫とふたりの万葉集 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は、無駄な語彙が一つもありません。全てが名詞&助詞のみです。『月あかり』『夫とふたりの』そして下五の着地が『万葉集』⬅ここが作者らしくて非常に良いです。
この作者の特質としては先ず、品格があり格調の高い作句をされます。それが功を奏した此処、最近では一番の特選句です。️『リズム』『映像の復元』『自己投影』そして『言葉は平明に想いは深く』と私が毎回、唱えている俳句の四代要素が備わっている一句です。
約二年で此処までの実力が付いた事は非常に嬉しいです。が、作句だけではなくて、私の作品の鑑賞も、そろそろお勉強されて下さいましたら尚、見聞が拡がり、ステップアップされることと思います。って言うのも私の作品は感覚的なのが多いですから、その感性を学んで頂きたいです。学ぶ→真似るから来ている語彙ですから始めは、分からなくても真似てみるように一句ずつの【写俳】を継続なさってくださいませ。すると自然に心身共に身に付いてまいります。私は六歳から師を始め、色々な先人の方々の作品を【写俳】してまいりました。ともかくこの作品は文句なしの大特選句です。
[ 夜明けかな色なき風のこゑをきく ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の素晴らしい、ところは中七から下五にかけての『色なき風のこゑを聞く』➡ この表現の仕方は珍しい。秋の季語の『色なき風』+『こゑを聞く』がとても効果が出ている。初見では驚いた一句である。
作者は徐々に徐々に実力を⤴️UPされている。上五に『〜〜かな』を持ってくるのもなかなか、難しい。一句、一句はそれほど目立ちはしない、繊細な作品であるが、このトーンで10句となると、やはりインパクトが強い。今は、あまり、お勧めできる賞もないが昔であれば必ず纏めての50句は受賞に値いする価値があったであろう!
何より【言葉は平明で想いが深い】この一句は先ず、句会では特選句の作品である。
追加、句会で、大切なのは作句より【選句】である。今回の作者の選句は私の21句も含めて、かなり良かったのでそれも非常に嬉しい事であった。
[ 秋暑かな欅の影の色濃くて ]
[大森理恵先生の御選評]
俳句は【季語】が全てである。季語により中七〜下五の語彙を引き立てる。原句の【秋立ちぬ】ならばもう少し、措辞が爽やかでないといけない。これもバランスなのだ!!!なので今回は、三文字のみ変更した。
【秋暑かな】と、することで【欅の色の影の色濃くて】が、余計に際立って見える。添削は原句が、良いから直せるが、原句が、どうしようも、ないと一から私の、発想を、使わずには、ならないといけないから作者の個性を潰してしまう。これが一番ダメになるので、先ず、原句に沿った添削を心がけている。作者の作品は素直でシンプルなのでとても添削しやすい。それが何よりの長所でもある。
今回も少しの添削で【映像の復元】の明確にはっきりしたリズムの良い一句になったのは、非常に嬉しい。季語を、三文字のみ変えることに、よって意味がより一層深くなり季語の活かされた良い作品になった。
[ 月天心世界を照らす人のあり ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の先ず、目につく箇所は【月天心】の季語。我々、俳人はどうしても幼い頃から蕪村の【月天心貧しき町を通りけり】を浮かべてしまう。【月天心】=月が天の真ん中にあり、とても明るい月の光のことを言う。
作者の句会での一句は席題が【月】も入っていた。なので思いきって、このようなダイナミックな作品を出された。中七からの『世界を照らす人のあり』は我々の心からの願望である。あの悲惨な第二次世界大戦後、まだ80年程なのに既に人間の、支配欲で戦争している国がある。許されざることである。(話しが飛ぶが、この前原子爆弾を開発したアメリカの『オッペン・ハイマー』の苦悩に満ちた生涯のドキュメンタリーの画を観た。)
この句とは真逆である。これは我々、世界中の願望を一つにした作品である。️特に作者は普段からこう言う形式の一句はお作りにならないので、やはり句会となると気合いが入ったと心より感心した一句である。️このような人が現れるのを待つ希望に満ちた夢のある特選句である。