[ とんぼうの体いつぱい陽を浴びて ]
[大森理恵先生の御選評]
いよいよ11月!
あと一週間で初冬ですね。秋の季語の【蜻蛉】ほど別名の多い季語はない。【やんま】【のしめ】【秋茜】【あきつ】【えんば】【えんま】【とんぼう】それ以外に上に地名も付く色々な呼び方がある。それほど、日本古来、『神武紀』にも出てくる日本人が長い間、親しんで来たのであろう【蜻蛉】(我が角川源義師の亡くなられた忌日には師の大好きであった唄!必ず全員で♪夕焼け小焼けの赤とんぼ♪と『赤蜻蛉の唄』を合掌するのが恒例である)
挙げ句はとんぼうが秋の日を身体中に浴びている様子を詠んでいるがとても斬新な、一句である。蜻蛉と言うと、何か寂しい例句が多いが今回の作者の一句は、とてもおおらかに明るく【蜻蛉】を詠まれている。類想のない珍しい作品である。このような前向きな一句も大好きである。言葉もシンプルで誰にもわかる佳句。特選句に頂きました。
[ ひとすじの光残して神還る ]
[大森理恵先生の御選評]
(数日前より
私の目がiPhoneの使い過ぎで殆ど弱視状態になり、字が打てずになりました。真理子さん、榮子さんには、大変ご心配をおかけして誠に申し訳ございませんでした。これからはドクターの仰ることをお聞きして数日間は一日おきに選評を書かせて頂きますのでよろしくお願い致します。
上の句は昨日のレッスンで一番、驚いた作品である。特に今の私には一筋の光が何より貴重である!!!
今日は早くも立冬。全国の八百万の神様が出雲大社より各地に還られる。この【神還る】の季語は非常に難解である。我々も10年位、季語をびっしりと学んでから、やっと使い慣れた。但し【神の留守】は結構、俳人が沢山、使っているが、【神還る】の季語は難しくて、殆ど良い例句がない。
作者がキャプションで書いておられるがアイヌの方々にとってシマフクロウは、大昔から神と崇められて来た。昨日は作者の句には特選句が多かったので選句したり添削したりでお聞きしてなかったが、もしかして、作者の心の中にはアイヌの立場になられてシマフクロウ=コタンコロカムイ=カムイチカブを意識されて【神還る】を詠まれたのであろうか???素晴らしく神々しい作品に初見で一番に大特選に頂いた。
貴重な画像を拝見して、今、直感が当たって非常に嬉しい。『ひとすじの光残して』と言う素敵な措辞がシマフクロウの鋭い立派な眼光とmatchingした。凄い作品である。️正直言って、作者のこれまでの多くの特選句の作品の中でこの句がNo.1かもしれない。
『竜田姫』『刀鍛冶』そして、今回はそれを凌ぐ透明感のある崇高な一句である。
★歳時記の【神還る】の例句に掲載して全国の皆様に見て頂きたい★
[ かすかなる着信音や冬に入る ]
[大森理恵先生の御選評]
京都は急に寒さが厳しくなりすっかり冬です。上五から中七までの『かすかなる着信音や』の措辞が季語の『冬に入る』と何とも言えず、【付かず離れず】でたまらなく、素晴らしい。
この季語の【付かず離れず】というのが非常に難しい。付き過ぎると説明句になる。付かな過ぎだと破茶滅茶な一句になってしまう。初冬に、大きな音のスマホの着信音は合わない。かと言って、仲冬、晩冬でも、無理がある。この繊細な感性や発想は作者らしい細やかな機微がありとても品格がある。この作者の特徴としてどの作品も上品で且つナイーブである。
上の挙げ句は【言葉は平明に想いは深く】という私の俳句哲学そのものの一句である。が、細やかで微妙なこの発想に季語の『冬に入る』の着地がピタリとハマって素晴らしい‼️
昨夜から嬉しい事があり一睡も出来ずにみちのくの俳句のお友達と長い時間、電話で話しをしていた。彼女は俳句を学ばれて40年以上。然も二つの結社の同人さんである。彼女の選句はかなり良い。一昨日の【神還る】の作者の事も二年でこれだけの作品を作られるとは!!! と、大絶賛されていた。私も自分のお弟子さんながら、作者の上達ぶりには唖然である。
【ひとすじの光残して神還る】も大特選句であるが私は、こういった繊細な句も大好きである。勿論、初冬の特選句である。