思い出の鳥たち

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[初夏の北海道 その2]

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6月になると思いだす光景がある。アヤメが一面に咲き、緑で埋め尽くされたような広々とした大地。友人と二人で出掛けた初夏の北海道。あれは、どこだったのだろう?遠い遠い日のことで、記憶があやふやであるが、あのアヤメの紫色だけは、今でも色あせることはない。

鳥に関心を持つようになり、初夏の北海道への憧れが強くなってきた。コバイケイソウにとまるツメナガセキレイ。シシウドの上で歌うノゴマ。灌木でさえずるシマアオジ。夏羽のオオジュリン。緑の林のクマゲラ。エゾフクロウやコアカゲラ。シマエナガなどなど。会いたい鳥は、たくさんいるが、今回、初夏の北海道を訪れるにあたり、一番の目的は、天売島であった。 ウトウの帰巣風景。夕日の中、ウトウが群れとなって帰ってくる。夕日とウトウのシルエット。その光景が、どんなものであるか、自分の目でしっかり見ておきたかった。

6月21日、サロベツ原生花園でマキノセンニュウやオオジシギとの出会いを楽しんだ後、羽幌港へと向かった。羽幌港から天売港まで、羽幌沿海フェリーで約1時間30分。甲板で大海原を眺め、何か海鳥がいないかと目を凝らしていると、時間はあっという間に過ぎていく。いよいよ天売島に到着。

夕食後、観光バスで赤岩展望台に向かう。この日、夕日がなかったので、ウトウの帰巣が早くなるという。到着と同時にオオイタドリを目がけて時速60キロのスピードで飛んでくるウトウの姿が目に入った。それにしても、すごい!オオイタドリにぶつかっていくという感じである。巣穴にいる雛たちへ一生懸命運んできた魚をウミネコなどに横取りされないよう必死なのである。次から次に帰ってくるウトウ。空が真っ黒になるほどの数である。あっという間に陽が落ちて真っ暗になった。そのころ、帰ってくるウトウもいる。ウミネコなどに魚を横取りされる危険がないからである。

翌早朝5時に観光船は、出港した。最初にウミスズメの群れに出会う。ウトウは、あちらこちらに姿を見せ、岩場で休息している姿も見ることが出来た。昨日の航路で遠くに見たケイマフリが、近くで群れとなって、ゆったり浮かんでいる。赤い足が印象的だ。次はいよいよウミガラス。と思ったけれど、霧のため岬まで行けないという。♪オロローン♪波間にかすかに聞こえたように思ったけれど、あれは、夢だったのかもしれない。

今回の一番の目的であった天売島。夕日とウトウのシルエットは、残念ながら写真に収めることは出来なかった。しかし、オオイタドリを目がけて時速60キロのスピードで飛んでくるウトウの姿に心奪われ、ウトウを愛しいと思えるようになったことは、今回の旅の大きな収穫であった。「鳥との出会いに感謝。」「人との出会いに感謝。」の初夏の北海道であった。

九羽の白鳥