田んぼが、秋の渡りの終盤戦に近づくころ、一早く姿を見せてくれるのがコガモである。コガモは、沼のほとりや川沿いの散歩道、近隣の公園の池や収穫の済んだ田んぼなどで姿を見ることが多い。コガモは、概して警戒心が強い。水路沿いにコガモの姿を見つけ、カメラを向けるとすぐに飛び立たれてしまう。一番撮影し易いのは、公園の池や沼のほとりの杭にとまっている姿かもしれない。コガモもまた、冬を感じさせてくれる鳥である。
湖面に嘴をしっかりつけて♪ピチュピチュピチュ♪とかすかな音を立てながら熱心に採餌しているのは、ハシビロガモ。毎年、この池に飛来している。ハシビロガモが、輪になってぐるぐる回りながら採餌する姿は、何とも微笑ましくて心和むものである。ハシビロガモの好物は、プランクトンなど水中浮遊物。あの独特の嘴でこしとりながら食べている。ハシビロガモの採餌風景。これもまた、冬の風物詩であろう。
冬枯れの田んぼは、淡い茶系の色合いが、どこまでも続き、心落ち着くものである。その冬の田んぼで出会う機会が、比較的多いのがノスリである。ノスリの顔は、穏やかで、猛禽らしくないような気が私は、している。電柱にとまっている姿を見ることが多いのだが、この日、カーブミラーにとまって、辺りの様子を伺っているようだった。ミラーには、冬枯れの田んぼが写っているが、ノスリの目には、何が写っていたのだろうか。
「エリマキシギ」は、私の好きなシギのひとつである。ふさふさの襟巻きを身に着けた夏羽のエリマキシギに一度出会いと願っているのだが、これは、なかなか難しい。エリマキシギの♂と♀の違いは、大きさで、良く分かる。先日、すっかり収穫の済んだ蓮田で、4羽のエリマキシギに出会った。1羽が明らかに小さく、3羽が♂、1羽が♀であろうと推測した。寒い冬を過ごし、換羽の時期まで、是非、滞在して欲しいものである。
多くの人に知られ、その色合いから熱い視線を浴びる鳥、それはカワセミであろう。良く出掛ける公園で散歩の人に声をかけられることが多々ある。その言葉は、決まって「カワセミがいましたよ。」とか「カワセミの写真を撮るのですか?」というものである。それほどカワセミは、たくさんの人の目を引く鳥ということだろう。この日、湖畔で出会ったカワセミ。鳴きながら飛んできて、すぐ目の前にとまってくれた。「幸福の青い鳥」。何か良いことが起こりそうな予感がした。
「冬の貴婦人」と言われるタゲリ。11月になると、姿を見せ始める。黒っぽい緑と赤紫の金属光沢が美しい鳥である。そして、あの長い冠羽が魅力的である。今季、何回か見かけているが、冬枯れの田んぼに埋没して、金属光沢の美しい色合いを見る機会が、なかなかない。先日、 越冬のシギ・チを求めて蓮田を回っているとき、1羽のタゲリに出会った。朝の光があたって羽が美しく輝いて見えた。
「ミサゴ」は、冬の鳥、とずっと思っていた。ところが昨年、汗をふきふき出掛けた海岸でミサゴを間近に見る機会があった。帰宅後、図鑑を見ると留鳥とある。つまり通年で見られるということらしい。寒い時期にシギ・チを求めて出掛ける蓮田や田んぼでミサゴに良く出会う。九州で間近に見たときも寒い時期だった。沼のほとりで見かけたときも、川原で出会ったときも寒さを我慢しながらの撮影だった。「ミサゴ」は、私の中では、冬の鳥である。
例年、秋の深まりと共に姿を見せてくれるのがツグミである。今季は、沼のほとりを歩いているとき、非常に警戒心の薄い個体に出会ったのが初めてであった。枯れ木にとまって散歩の人が、かなり頻繁に行き来しても動じる様子もなく、レンズを向けても我関せずの姿勢を貫いていた。次に出会ったのは、田んぼの畦道である。木にとまった姿も良いが、田んぼのあぜ道もなかなか良いものだと思う。
冬枯れの田んぼでは、カワラヒワの群れに良く出会う。淡い茶系の色合いが、一面に広がる冬の田んぼ。行けども行けどもベージュ色。その田んぼで、ぱっと飛び立つ群れは、カワラヒワ。飛び立つときに羽が広がり、黄色味が見える。カワラヒワの群れは、多いときには、100羽~200羽はいるようだ。冬枯れの田んぼが、一瞬華やぐ。近隣の公園や沼のほとりでもカワラヒワに出会うが、田んぼの群れは、なかなか壮観だ。しかし、撮影は、まだである。
冬枯れの田んぼは、一見殺風景で、何もいないように見えるけれど、案外、出会いが多い。カワラヒワは、群れで見かけるし、タヒバリも多い。カシラダカ、ホオジロ、オオジュリン。今季は、まだだが、ホオアカ、コホオアカに出会うこともある。チョウゲンボウにもかなり頻繁に出会う。電線にとまった姿を見ることが多いのだが、それは、それで案外楽しいものである。この日は、ちょっと余裕のポーズを披露してくれた。
冬の田んぼは、薄い茶系の色合いが、どこまでも続く。その光景を見ていると、何とも言えず、心が安らぎ新たな力が湧いて来る。越冬のシギ・チを求めて蓮田を回っているとき、タヒバリに出会った。いつもタヒバリを見かけるのは、冬枯れの田んぼである。しかし、車をとめると、すぐに飛ばれてしまう。蓮田にタヒバリは、新鮮な感じがして、レンズを向けたのだが、実にゆったりしている。タヒバリは、蓮田が落ち着くのかもしれない。
キジは、漢字で雉と書き、「矢のように飛ぶ鳥」の意だそうである。田んぼ道を歩いているとき、突然、目の前から飛び立つキジの姿を見ると、いつもドキッとさせられる。キジにすれば、人が近くを通りかかったので、必死に矢のように飛んで行ったのだろう。「雉も鳴かずば撃たれまい」という諺があるが、その場に、じっとしていれば、こちらも気がつくこともないのにと私は、いつも思っている。
♪みどりの森影に 響く歌は 大工のきつつきさん 精出す音♪という手遊び歌がある。この中に出てくる「大工のきつつきさん」とは、多分、コゲラではないだろうか。アカゲラやアオゲラも考えられるが、何と言ってもコゲラは、出会いの機会が多く、誰の目にもとまるような気がする。川沿いの道を歩いても、沼のほとりや近隣の公園を訪れても♪コンコンコン♪と大工仕事をしているコゲラを見かけることが多い。
緑の光沢が美しいカモ。「ヨシガモ」。ナポレオン・ハットと言われる頭部は、光があたると、その美しさを増す。寒い季節を迎えると、沼のほとりや近隣の公園で出会いの機会が待っている。山渓の「野鳥の名前」によれば、「容姿のよい」カモなのでヨシガモなのだそうである。改めてヨシガモの名前の由来を知り、なるほどと思った次第である。
人里近くに住みながら、人が近づくとぱっと飛び立つ鳥。一番馴染みのある鳥。それは、スズメ。我が家のベランダにも、訪ねてくることがある。しかし、ガラス越しに人の動く気配がしただけで、すぐに飛び立ってしまう。何とも警戒心の強い鳥である。鳥に関心を持つようになって間もなく、御岳を訪れたことがある。その時、御岳には、スズメがいないと教えて頂いた。そしてスズメは、必ず人里近くに住むということも。田んぼでは、スズメの群れに良く出会う。人との距離を程良く保ちながら、スズメは、生きているのだろう。
高原や山で見かけることはあるが、平地での出会いは、珍しい。胸元の黒色が、蝶ネクタイのようだ。「ヒガラ」。小さな体に、黒ひげを生やしたようにも見えて何とも愛らしい。今季、ずいぶん近隣の公園で出会った。ちょこまかと、結構忙しく動き回る。山や高原では、遠くに見ていた鳥だが、公園では、近くで見ることが出来る。先日、歩いた林の中では、針葉樹の中を忙しく動き回り、私のすぐ真上にまで来てくれた。何とも可愛い鳥だと思う。
静かな公園を歩いているとき、あるいは、人気のない林を歩いているとき、決まって聞こえてくるのは、ヒヨドリの声である。スズメもムクドリもいない。しかし、ヒヨドリだけは、いる。そういう経験をした人は、案外多いのではないだろうか。♪ピーヨ♪ピーピッピッピッ♪と良く通る声が、辺りに響き渡るので、その印象が強いのかもしれない。冬の公園で出会ったヒヨドリ。葉っぱを咥えて遊んでいたのだろうか。
冬枯れの田んぼは、何の変哲もないように見えるけれど、案外、鳥たちとの出会いが楽しめるものである。キジは、四季を通して見かけるのだが、殺風景な冬の田んぼで出会うと嬉しさが増すように思う。曇天や雨模様の日には、キジ♂のあの濃い黒緑色の光沢は、出ないが、柔らかな日差しが、その姿を照らす時、キジ♂の光沢は、美しい。
♪チュピィ♪カワラヒワの群れに交じって、飛んできたのは、マヒワ。今季、マヒワに出会う機会は、多い。マヒワは、黄色味の強い鳥で、冬の青空に似会う鳥だと思う。公園の松林の上を空高く飛んでいたが、アキニレやモミジバフウ、サルスベリなど木の実を啄みに降りてくる。以前、マツヨイグサの実を啄んでいる姿も見たことがあるが、また、間近で、その姿を見たいものである。
木々の紅葉が一段落するころ、公園の植え込みの中や草むらなどで、ひっそりと姿を見せる鳥、アオジ。地味だけれど、案外、注目を浴びる鳥だ。今の時期は、♪チッ♪という地鳴きで目立たないけれど、繁殖期には、♪チョッ ピーチョッ ピー チチ♪と美声を披露する。これからは、散歩道でも見かける機会が増えてくることだろう。寒い季節には、是非、会いたい鳥のひとつである。
針葉樹の中を忙しく飛び回るのは、キクイタダキ。今季、東京近郊の公園や雑木林などで、ずいぶん観察されている。全長10cm。体重5g。日本で見られる鳥の中で、一番小さいと言われている。あの可愛らしい顔立ちと頭の天辺に乗せた黄色い冠が、魅力的で人気度の高い鳥である。♪ツィー♪林の中から、小さいけれど、良く通る声が聞こえてきた。
♪ピッピピピ・・・・♪すっかり刈り入れの済んだ蓮田を回っているとき、聞き覚えのあるシギの声が聞こえて来た。甲高いその声は、紛れもなくタカブシギ。すぐ近くの蓮田に降り立った。シギの中で、かなり出会いの機会が、多いはずなのだが、今の時期には、案外少ない。群れで見かけることの方が多いが、このときは、1羽だけで行動していた。地味だが、羽の模様が美しい。
田んぼ巡りの醍醐味は、春の渡り、秋の渡りのシギ・チとの出会いである。秋の渡りが一段落した頃、今度は、越冬のシギ・チとの出会いを期待して蓮田や田んぼを回ってみる。今季は、嬉しいことにオオハシシギ多数、エリマキシギ、アカアシシギ、コアオアシシギなど少数ながら越冬しているようだ。アカアシシギは、今まで出会いの機会が少なく、越冬組の中に、その姿を認めた時、嬉しさが込み上げてきた。飛翔の姿を何とか捉えたいのだが、それは、またの日の課題である。
ヤドリギの実を好んで食べると言うレンジャク。ヒレンジャクとキレンジャクがいるが、初めて出会ったのは、東京近郊の公園にあるヤドリギに飛来したヒレンジャクであった。あの独特の風貌が面白く、寒い季節には、是非、会いたい鳥のひとつとなっている。レンジャクは、連雀と書く。雀は、ひろく小鳥類を現す言葉で、それが連なっているということらしい。「緋連雀」。その言葉自体が美しい。
朝夕の寒さが気になる頃になると出会いを期待する鳥がいる。♪フィッフィッ♪フィッフィッと鳴くベニマシコである。川沿いの道や沼のほとりで、今まで何度か出会っている。今季は、まだ一度しか出会いの機会がない。枯れ草の中で見え隠れする赤い鳥は、心惹かれるものである。身近なフィールドで待っていてくれるかもしれない。「紅猿子」。是非、会いたいものである。
忘れられない思い出の赤い鳥。そのひとつがギンザンマシコ。雲ひとつない青空が広がる旭岳。カッコウが鳴き、ノゴマも間近で見られた日、嬉しい出会いが待っていた。第4展望台の近くで遠くのハイマツにいるギンザンマシコの姿が見えたのだが、そのギンザンマシコが思いがけず近くに飛んできた。エゾノツガザクラが咲き乱れる場所である。あまりに近くて撮影に窮するほどであった。あの日の出会いは、鮮烈であった。今度は、雪の中で出会いたいものである。
初めてイスカに出会ったのは、5月の高原。松林の上空を群れで飛ぶ鳥がいた。それがイスカとの初めての出会いである。嘴が交叉して上下が合わない。その嘴で上手にマツボックリを食べている。もっと近くでじっくり見たいものだと思っていたら、冬の北海道で、その夢が実現した。かなり近かったのだが、夢中でマツボックリを食べていて、こちらには、見向きもしない。嬉しく心に残る出会いであった。
寒い季節を迎えると思い出す鳥がいる。吹雪の中で出会ったベニヒワである。頭上に赤いベレーを乗せて、その姿の何とも可愛らしいこと。ベニヒワに会いたくて訪れた高原であったが、あいにく吹雪いてきた。その吹雪の中、ベニヒワは、群れで姿を見せてくれた。しかし、レンズを雪が覆って、ベニヒワが見えない。悪戦苦闘の撮影であった。その後、なかなか機会がなかったが、2月の道東で、嬉しい出会いが待っていた。「ベニヒワ」また、いつか会いたいものである。
鳥との出会いの中で、インパクトの強いのは、「赤い鳥」「青い鳥」「黄色い鳥」ではないだろうか。その中で、特に赤い鳥には、心惹かれるものがある。中でもオオマシコとの出会いは、印象深い。萩の実を好んで食べるオオマシコ。初めて出会ったのは、人がほとんど通らない林道であった。バラ色のお腹と白いレースの胸飾り。何ともお洒落で可愛らしい。また、いつかこのお洒落な鳥に会いたいものである。
初夢とは、「その年、最初に見る夢」あるいは、「元日の夜に見る夢」または、「正月二日の夜に見る夢」と言われているが、どうも「正月二日に見る夢」というのが、私の中では、しっくりする。そして、縁起の良い初夢として「一富士、二鷹、三茄子」が良く知られている。今宵の夢は、何だろうか。今年も鷲・鷹との素敵な出会いを願っている。
新しい年を迎え、静かに2012年を振り返ってみますと、色々な鳥たちとの出会いが思い出されます。特に初めて訪れた舳倉島では、ずいぶんたくさんの初見の鳥たちとの出会いがありました。チャバラアカゲラ、キバラムシクイ、シマノジコ、シマゴマ、チフチャフ、タイワンハクセキレイなどなど。大好きな田んぼでは、9月末の台風を境にずいぶんたくさんのシギたちとの出会いを楽しむことが出来ました。コアオアシシギ、エリマキシギ、ツルシギ、オグロシギ、アカアシシギ、コキアシシギなど心に残るものです。秋には、冬鳥に期待出来そうとの声があちこちから聞こえて来ました。その噂通り、近隣の公園でたくさんの冬鳥たちに出会うことが出来ました。マヒワ、ヒガラ、ウソ、キクイタダキ、ヤマガラ、ジョウビタキ、ルリビタキなどです。
今年も思い出に残る鳥たちとの出会いを願っております。皆様方のお力添えを頂きながら、ほのぼのとした雰囲気のHP「九羽の白鳥」の更新が続けられるよう努力してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。